完全無欠な私にふさわしい、完全無欠な作戦をたててみた!
◇◇
翌日――。
(ふふふ、今日こそは完全無欠な私にふさわしい、完全無欠な作戦を立ててきたから、もう完璧よ! 名付けて『やられたらやり返す作戦』! 見てなさい! 今日という今日は、絶対に『お友達』になってもらうんだから!)
「あ、おかみさん! 注文いいかしら!」
………
……
けっきょく今日もエルミリーは店にこなかったな。
あの女……。やっぱり俺をからかっていただけだったのか?
――カラン、カラン。
「おや、マルコ。いらっしゃい」
「やあ、おかみさん。いつものやつをお願い」
「ふふ、それがもう用意できてるんだよぉ」
「へ? どういうことだ?」
「ほら、あそこの席に『肉野菜炒め』を置いておいたからね」
「はぁ? なんで?」
「ふふ、今日はあの方のおごり、なんですって」
「げっ! あいつはエルミリー。しかもいきなりドヤ顔でこっちを見てやがる」
「実は彼女。大金持ちだったのよぉ。昨日はごちそうになったからってね。ワインまでごちそうしてあげるんだそうよ。ささ、早く座って彼女にお礼の一つでも言いなさいな」
「はあ……」
――ドスン。
(ふふふ。完璧。完璧すぎる! そして、この後はこうなるに決まってるわ!)
『ありがとう、君のおかげで今日も美味しい肉野菜炒めが食べられるよ。しかもこんな素敵なワインまでいただいて……。俺は君のプレゼントにどう報いたらいいんだろうか……』
『お礼なんていいんです。ただ一つだけ私の願いを叶えてくれないかしら?』
『願い? こんな俺が、町の英雄である君の願いなんて叶えられるかな……』
『ふふ、お友達になって欲しいの』
『お友達に?』
『そうよ! お友達! そして私に毎日、背中を見せて欲しいのよ!』
『俺の背中を……』
『ダメ……かしら?』
『そんなめっそうもない! 俺なんかの背中でよければ、いつでも見せてあげるさ!』
『ありがとう、マルコ!』
『ところで……。君は俺の背中をただ眺めるだけでいいのかい?』
『え? どういうこと?』
『触ったり……。なめてくれてもいいんだよ……』
『え……。うそ……』
『なんならこれから二人きりで、どこかいかないか』
(なぁんて、きゃーーーー!! もう爆発しちゃうわ! 私リア充だから爆発しちゃうわ!!)
「ありがとな。でも年下のお嬢ちゃんにおごってもらうほど、落ちぶれちゃいねえんだ。んで、いくらだ?」
「へ?」
「このワイン、いくらしたんだ?」
「30ゴルだけど……」
「くっ、高けえな。肉野菜炒めは10ゴルなんだぜ。その3倍もするワインを頼みやがって……。おかげで明日は昼抜きになっちまったじゃねえか」
「ほえ?」
「おかみさん、ここに80ゴルおいておくから。二人分の肉野菜炒めとワイン代ね」
――カラン、カラン
「ああ……」
(行っちゃった……)
「ごめんねぇ、エルミリーちゃん。彼ああ見えて、けっこうプライド高いのよぉ。じゃあ、最後まで食べていってね!」
(な、なによ! それでかっこつけたつもり!? ぜ、ぜ、全然そんなの無意味だから! 無駄金だから! 私を落とそうったってそうはいかないんだから!)
「おかみさん! おかわりっ! それとワインボトルで!!」