なんでも裏目に出ちゃう男っていますよね
翌朝――。
(終わったわ……。もう何もかもが終わりよ……)
以下、回想。
――シャッ!
『うっ……。まぶしい!』
『やあ、エルミリー君。おはよう! 今日もいい汗をかこうじゃないか! ははは!』
『ほえ!? ルベルガー将軍!? ここはどこですか!?』
『僕の部屋だよ。ああ、覚えていないのかい? 昨晩、酔いつぶれちゃった君をマルコ君がこの部屋まで運んできてくれてね』
『へ? マルコが私のことを?』
『そうだよ。このまま君の部屋に置いていったら、朝になっても起きないんじゃないかって心配してくれてね』
『そうでしたか……』
『ふふ。僕も一応男なんだけどねぇ。でも僕の部屋なら安全だろうって。あ、それから、君はマルコ君にかなりの粗相をしてしまったようだから、しっかり謝っておいた方がいいと思うよ』
『私は何をしてしまったのでしょう?』
『説明するのも気が引けるんだけどね。…………というわけさ』
『うそ……』
『じゃあ、自分の部屋に戻ってシャワーでも浴びて、汗を流してきたまえ。僕は女子の汗には興味がないんだ』
回想、終わり。
(まさか『酔った勢いで間違いが起こっちゃった作戦』で、自分が間違いを起こしてしまうなんて、ありえないわ。
はぁ……。
どんな顔してマルコに会えばいいのよ。
ところで喉がカラカラね。村の井戸で冷たい水を飲みに行くとするわ)
――とぼとぼ……。
「お、エルミリーじゃねえか。おはよう」
(げっ! マルコ! あわわわわ……! ど、ど、どうしよう!? とりあえず落ち着くのよ、私! 普段どおりにあいさつすればいいじゃない!)
「お、お、おは……ごめんなさい!!」
うわっ! いきなり謝ってきやがった。
たぶんルベルガー将軍から全部聞かされたんだろうな。
こういう時は女の子に気を使わせたらダメだって、確かアリエッタが教えてくれたよな。
「だ、大丈夫だって。気にするな。そうだ! お腹の中のものを全部出したんだ。腹減ってるだろ? 焼き立てのパンがあるんだが食べるかい?」
「……全部出しちゃったのね、私……」
――しょぼーん……。
しまった! 気にさせちまったじゃねえか!
いや、まだだ。まだ挽回のチャンスはある!
武器づくりでも軌道修正すればすぐに元通りにできるじゃねえか。
よし。次こそは!
「だから気にするなってば! 誰でもワインボトル3本も飲めばそうなるのは当たり前なんだから! なっ、だから気にするんじゃねえぞ!」
「……そんなに飲んだのね、私……」
――しょぼぼーん……。
げげげっ!!
余計に落ち込んでしまったじゃねえか!
くっ! こうなったら話題を変えるしかねえ!
何かないのか?
……そうだ!
「そ、そういえば町のみんなは元気にやってるかなぁ!? イロハのヤツは腕はいいんだが、頑固なところがあるからよぉ。大事なお客さんと喧嘩になってねえか心配だよな!?」
「……そうよね。こんな私なんかより、イロハさんのことの方が気になるわよね。ふふ、ふふふ……」
――しょぼぼぼぼーん……。
「だああああ! もう、いい! いつものエルミリーに戻ってくれよ! 俺はいつも元気なおまえさんが好きなんだからよ! よろしく頼むぜ!」
「ほえっ!?」
(今『好き』って言った? え、え、ええええええ!!
好き!
すき!
SUKI!
間違いないわ「スキ」だわ! 逆から読めば「キス」じゃない! きゃあああ!!
きゅ、急に言うもんだから心の準備ができてなかったじゃない!
どうしてくれるのよ!
待って! 落ち着くのよ、私!
そうだ!
落ち着くには「人」という字をてのひらに書いて3回飲めばいいって、おばあちゃんが言ってたわね。
『人』、ゴクッ。
『人』、ゴクッ。
『人』、ゴクッ。
よ、よし……。
全然落ち着かないけど、きっと何かが変わったのよ。大丈夫、大丈夫。
とにかく次が大事なんだから。告白されたからには、しっかり返事をしなきゃダメ。心には心で返しなさいって、おばあちゃんも言ってたじゃない。よぉし!)
「こ、こ、こ、こちらこそふつつかものではございますが……」
「お、そこにいるのは花屋の娘さんのシャローラじゃねえか」
――タタタッ。
「ああ……」
(行っちゃった……)
「おはよう! シャローラ!」
「あ、おはようございます……」
「どうした? 暗い顔して。昨日はあんな可愛らしい笑顔だったのに」
(……ふふふ、でもまあいいわ。これでマルコの気持ちを知ることができたし。
ピンチをチャンスに変えたってことね!
さすが、私!
でもこんなとろこで立ち止まってはダメよ。これから一気に仲良くなるんだから!
がんばれ、私! あの背中が私だけのものになる日はもう目の前よ!!)




