酔った勢いで間違いが起こっちゃった作戦
遠征初日の夜――。
今日はこの小さな村にお世話になるらしいな。
村に入るなり花屋の娘さんのシャローラという少女からでっかい花束で迎えられたもんだからビックリしちまったぜ。
やはり王国軍の第一騎士団というのは、かなり有名のようだな。
さてと……。
今日はたいした魔物とも遭遇してないから、武器のメンテナンスを頼んでくる騎士もいねえ。
よし、今夜はバーにいって、ちびちびと酒でもすするか。
――カラン。カラン。
「いらっしゃい。お一人さんかい?」
「ああ、一人だ。カウンターでいいか?」
「ええ、どうぞこちらへ。何をめしあがりましょう?」
「ああ、とりあえずおすすめの酒を頼むわ」
「かしこまりました」
――コトッ。
――グビッ。
「けっこう強いが、うまい酒だ」
「ありがとうございます。ではごゆっくりと……」
物静かでダンディなマスターじゃねえか。
このところ周囲が賑やかだったから、落ち着いていいな。
――カラン。カラン。
「いらっしゃいませ。おひさしぶりでございます。いつものでよろしいでしょうか?」
常連がきたらしいな。
まあ、こういう洒落た店には何度も訪れたくなる気持ちは分かる気がするぜ。
うちの武器屋も少しはおしゃれな感じを出すかな。
装飾も何もないからな。
――スッ。
「ん? なんだ? この肉野菜炒めは」
「あちらのお客様からです」
「あちら? え、エルミリー!?」
おいおい! 常連ってあいつだったのか!?
若いのになんて古臭い真似しやがる。
しかもひたいに二本の指をあてた後にちょっとだけ離して「気にするな」なんて、いつの時代のポーズだっつーの。
まあ、ひとまず礼だけでも言っておくか。
「ありがとな」
「いいのよ。ところで隣いい?」
「ああ、まあいいが……」
(むふふふ!! 作戦成功!! 名付けて『コード・イロハ』! イロハさんのようにマルコの様子を影で覗きながら、チャンスをうかがう作戦よ! おかげでこうして二人きりになれたのだから、大成功ね! 敵からも技を盗むのが、一流のたしなみってものだもん!
さあ、ここからよ!! 次は『酔った勢いで間違いが起こっちゃった作戦』! 成功すればきっとこうなるはずだわ……。
以下、妄想。
『……もう朝か。すっかり飲みすぎちまったぜ』
――シャッ!
『うっ! まぶしい!』
『おはよう、マルコ。よく眠れた?』
『え……。エルミリー? どうしておまえが俺の部屋に?』
『あら、ここは私の部屋よ。覚えてないの? 昨晩のこと』
『昨晩? なにがあったんだ?』
『……それを私の口から言わせるつもり?』
『もしかして俺は……。そうか……。すまなかったな』
『あやまらないでよ。マルコは後悔してるの? 昨晩のこと』
『……いや、後悔なんてしてねえよ。いつかはこうなりたいって、ずっと思ってたから。酒の力を借りたとしても、夢がかなって嬉しいよ』
『え……。マルコ。それはどういう……』
『次は酒抜きでおまえと朝を迎えたいってことだ。いや次だけじゃない。これからもずっと』
『マルコ!』
『エルミリー!!』
妄想、終わり。
にゃふふふふふ!! これで決まりね! まさしくゴールだわ!!
……でも、せっかくマルコとふたりっきりでバーのカウンターにいるんだから、ちょっとくらい飲んでもばちは当たらないわよね。ふふふ)
………
……
二時間後――。
「だぁかぁらぁ! マルコはもっとビシっとしなきゃだめよぉ! びしっとね!」
「おいおい、エルミリー。ちょっと飲みすぎなんじゃ……」
「ういっ。ひっく。しょんなことないですよぉだ! たかだかワインボトル3本くらいで、国の英雄であるあたしが酔っぱらうなんて、ありえるはずないでしょぉ。ういっ。ひっく」
「……とりあえずもう酒はやめとけって」
「なんでよぉぉぉ!! なんでダメなのよぉぉ! びえええええん!!」
「分かった! 分かったから泣くな!」
「分かってないもん! マルコはちっとも分かってなぁい!!」
「な、なんだよ急に」
「イロハさんとキスするのがいけないんでしょぉ! もっと私の気持ちを分かってよぉ」
「私の気持ち?」
「そうよぉ! 私の気持ち知らないでしょ!」
「あ、うん。そりゃあ知らねえが……」
「だったらぜぇんぶ吐き出してあげるわよ!!」
「お、おう。そこまで言うならしっかり受け止めてやるぜ」
「…………しっかり受け止めてよね」
「…………いいぜ、いつでも」
「…………うっぷ」
「へ? おい、やめろ! そういうのは受け取れねえって!」
「ううっ……。うっ!」
――以下、自重――
「ぎゃあああああ!!」




