キスの続きをしたいの
「そ、そうよ!! それの何が悪いのよ!! マルコが遠征についてきてくれるんだったら、最初から絵なんていらなかったんだから!! ぜぇんぶマルコが悪いんだからね!!」
「エルミリー……。それはどういう意味だ?」
「か、か、勘違いしないことね! 私はマルコの武器のことは認めてるの! 本当は遠征中でもあなたに武器のメンテナンスをして欲しい。でもそれがかなわないなら、せめてマルコがそばにいるつもりになって、武器を大切にしたい、ってただそれだけのことよ!! これも騎士としてのたしなみだわ!!」
………
……
三日後――。
「諸君! 紹介しよう! 今回の遠征で専属の武器職人として同行してもらうことになった、汗の天使ことマルコ君だ!」
「お、おう。よろしく頼むわ」
――パチパチ……。
本当は町を三ヶ月も離れるなんてしたくはないが、あの絵をここへ持ってこられたらたまったものじゃない。
それに武器屋の方はイロハが面倒みてくれるってことになったから、まあ大丈夫だろ。
イロハか……。
以下、回想。
『……やっぱり行っちゃうんだ……』
『仕方ねえだろ。しかも今回の遠征はずっと世界を悩ませているホワイト・クイーンボアの討伐が目的っていうじゃねえか。ちょっとでも力になってやりてえって気持ちもあるんだ』
『そう……。寂しくなるね』
『うん、まあ、そうだな……。……あと、ありがとな』
『え?』
『いや、おまえさんが戻ってきてくれて嬉しかったぜ。……俺たち家族だしな』
『マルちゃん!』
――ガシッ!
『ちょっと、イロハ! 急に抱きつくな! 離れろって!』
『いやよ!! マルちゃん! 好きなの! 離れたくない!!』
『いや、そう言われてもな……。もう決めたことだ。今さらくつがえせねえよ』
『だったらせめて今夜だけでも!』
『は? それはどういう……』
――チュッ!
『んぐ!?』
『ぷはぁ……。ふふ、初めてだったでしょ? キス』
『そりゃ、そうだが……』
『……続きしよ』
『え?』
『キスの続き……。マルちゃんとしたい』
『……それはダメだ』
『どうして!? 私たち家族なんでしょ!』
『ダメなもんはダメだ。こういうのは順番ってもんがあるんだからよ』
『じゃあ、帰ったらしてくれる?』
『いや、それは……』
『約束! 帰ったらキスの続きをして! そしたらここで待ってるから!』
回想終わり。
「はぁ……」
「どうしたの? マルコ。大きなため息ついちゃって」
「いやイロハがよぉ……。遠征から帰ったら続きをしたいって言ってきかねえからさ」
「続き? 続きってなぁに?」
「……ん? のわっ! エルミリーか!! てっきり俺一人で考え事してるもんだと思ってたぜ」
「いいから答えてよ! イロハさんと何の続きをするの!?」
キスの続き、なんて言えるはずもねえだろ!
(顔を真赤にして……。あやしい。あやしすぎるわ、この反応。はっ! もしかして! でもまさかこれはないわよねー。私の妄想はいっつも外れるし)
「もしかしてキスの続きだったりしてー。ははは!」
「ぐはあっ! な、な、なんで分かったんだよ!?」
「…………え?」
「…………ん?」
「えええええええ!!」
(な、な、な、なんですってぇぇぇ!! なんでこんな時に限って私の妄想が当たるのよぉぉぉ!!
…………ちょっと待って。
ということは、マルコはイロハさんと『キスまではした』ってことじゃない!!!
うわああああああ!! やられたぁぁぁ!!
ダメよ! このままだと負ける!
ただでさえイロハさんは『美人』『朝から晩までずっと一緒にいる』『幼馴染』『強引だけどフィアンセ』って有利な属性ばっかりなのよ!
一方の私なんか『肉野菜炒め』『武器のお客さん』『イノシシ』くらいしかないじゃない!!
まずい! まずいわ! エルミリー!
もうこうなったらなりふり構ってる場合じゃないわ!!
確実に仲良くなるしかない!
この遠征中に!!)




