決戦!クリスタル・ボアキング!
「この武器は……?」
「おまえさんのためにイロハと作ってきたんだ」
「イロハさんと?」
「ああ、あとで礼を言っておけよ。あいつの親父さんの形見である『ミスリル』って素材を使ったんだからよ」
「そうだったの……」
「さあ、おしゃべりはここまでだ! そいつで一発かましてきやがれ!」
「うん!」
(そうよね。今はかったいイノシシに集中するのよ! 私がみんなを守る! 私は英雄なんだから!!)
「うりゃあああ!!」
「グオオオオ!!」
――カン! カン!
「くっ! やっぱり固い!!」
「エルミリー!! 負けんじゃねえ!! もっとやれるはずだ!!」
「グオオオ!!」
(ぐっ……! でかいくせにちょこまか動くから、なかなかヒットできない。今まではルベルガー将軍がおとりになってくれてたから隙だらけだったけど……。ええい! 弱気になるな! 私! マルコが見てるのよ!!)
――カン! グサッ!
「グオオオオ!!」
「やったわ! ちょっとだけ傷つけることができた!! この武器すごい!!」
「すごいのは武器だけじゃねえよ。エルミリー。おまえさんが一流の剣士だから武器が輝いてるんだ!」
「ありがと、マルコ! お世辞でも嬉しいわ! さあ、これから反撃のはじまりよ!!」
――グサッ! ザクッ!
「グオオオオ!!」
やっぱりエルミリーはすげーぜ。
手にしたばかりの武器をもう自分のものにしちまってやがる。
それにしなやかな動きも、目に見えないくらいに速い剣さばきも、すべてが俺なんかが考えもつかねえくらいにすげーよ。
あらためて思うよ……。
俺とエルミリーとでは住んでる世界が違いすぎるってな。
そう考えるとこれまでのように気軽に話しかけるのは気が引けるな。
いつかあいつは世界中を飛び回る勇者になるだろうから……。
(すごい……。この剣、すごすぎるわ。まるで腕と一体になっているかのように吸いついて、まったく重さも感じさせない。そして振ればふるほど斬れ味が増していくのは、きっと私に剣の振り方を教えてくれているんだわ。
こんな武器を作れる人を『しがない武器屋のおっさん』って呼んでいたなんて……。
私とマルコとでは住んでる世界が違いすぎるわ。
きっとマルコは世界中で必要とされる武器屋になるもの……)
「グルルル!!」
しまったボケっとエルミリーを見つめてるうちにイノシシがこっちに目を向けてるじゃねえか!
こっち見んな!
「グルルーーー!!」
「マルコ!!」
やべえ、突進してきやがった!
しかも俺が避ければ、足元にいる中二病変態将軍……もとい、ルベルガー将軍が巻き込まれちまう。
くっ……。こうなったら仕方ねえ!!
背中で受け止める!!
――バッ!!
「俺の背中をなめんな!!」
――ドドドドッ!
「グルルーー!!」
「……なめさせてもらうよ」
「へっ?」
――ペロッ。
「ひぃっ! な、な、なにしやがる!? この中二病変態将軍!!」
――ゴゴゴゴゴゴ!!
「きた、きた、きた、きたあああああ!! むっほぉぉぉぉ!!」
「ど、どうしたんだ!?」
「ふふ。説明しよう。僕は好みの男性の汗をパワーに変えることができる特殊能力を持っているのさ。マルコ君。君の汗は極上だよ。たとえるなら秘境で見つけた湧き水。まさに瀕死だったボクを救う奇跡。そう……。今決めたよ。君の汗は『奇跡の塩しずく』と名付けることにした」
「おい、おい! そんなどーでもいいことを、だらだらと言ってる場合じゃねえだろ!」
「安心したまえ。『汗は悪魔を凌駕する』って昔から言われてるじゃないか。ふふ」
「初耳なんだが……」
「さあ、勝負はこれからだよ。とうっ!」
――バッ!!
「将軍!?」
「僕にもマルコ君が作ってくれた武器はある。何よりも僕の体にはマルコ君の汗が駆け巡っている! そう、今僕はマルコ君と一緒になったのさ! 負けるはずないだろう? イノシシごときに!」
――スパッ! スパッ! スパッ!
「グオオオオオ!!」
「は、速い! まったく見えなかった!」
「ふふ。これでヤツの目はつぶした。でももう武器が限界のようだ。エルミリー君!!」
「はいっ!」
「やっておしまい!!」
「はいっ! うりゃああああ!! 雷神の一閃!!」
――ズバアアアア!!
「ギャオオオオオ!!」
――ドッスーーーン!!
「やりやがった……」
――スタン……。
「ふふ。さすがだよ、エルミリー君。僕が見込んだだけのことはある」
「やったわ……。はは……。ははは! やったわぁ!! 私たち勝ったのね!! ははは!!」
まったくたいしたヤツだぜ。
エルミリーって騎士は。
でもこうして無邪気に笑ってると、どこにでもいそうな可愛いお嬢さんにしか見えねえから不思議なもんだ。
……もっと知りてえな。
エルミリーのこと。
(すごい! マルコはやっぱりすごい武器職人だわ!! それが分かって嬉しい! いえ、分かったのはそれだけじゃない。私はようやく自分の気持ちが分かったの。
『私が好きなのはマルコの背中だけじゃない! マルコのぜんぶが好き!』
って!)




