奇襲のプロポーズ作戦!
はぁ……。
エルミリーとルベルガー将軍の二人に頼まれて武器を作ったのはいいが、まさかこんなことになるなんて思いもよらなかったぜ。
以下、回想――。
『やはり見込み通りだよ、マルコ君! 君の汗は美しい! ついでに言えば武器も素晴らしい!』
『人の仕事をついで呼ばわりするのはいただけねえな。でも、ありがとよ』
『うん! これなら大丈夫だ!』
『なにがだ?』
『僕の率いる兵の全員分の武器を作ってくれたまえ!』
『はっ!?』
『全員で100人だからね。1ヶ月後に遠征があるから、それまでに揃えてくれ! もちろん報酬ははずむ! じゃあ、よろしく頼んだよ!』
『ちょっと待て! 1ヶ月で100人分って、そんな無茶な!』
『ははは! 今日もいい汗を見たなぁ! ははは!』
回想終わり。
……ったく、あの将軍の言っていることはどこまでが本気でどこまでがジョークなのかまったく分からん。
そりゃあ暇よりはマシってもんだが、1ヶ月で100人分は無理だ。
誰か手伝ってくれる人がいればいいんだが……。
いや、師匠の技を知ってる奴しか、俺の仕事は手伝えねえからな。
弟子が俺しかいなかったってことは、誰も手伝うことができねえってことか……。
ん? まてよ。
一人だけ師匠の弟子がいたことはいたんだが、いや、でもアイツはダメだろうなぁ……。
アイツ……イロハは、師匠のお孫さんで俺の幼馴染。
小さい頃から腕前はよかったんだが、「広い世界を見てみたい」って飛び出しちまったんだもんなぁ。
そう言えば彼女は元気だろか。たしか歳は8歳下だから、今は27か。
じいちゃんのドワーフの血を継いでるかなのか、まるで小さなクマみたいにまるまるしてて、可愛らしかったんだよな。
いやあ、なつかしいことを思い出したら腹が減ってきた。
よし、今晩の肉野菜炒めは肉マシにしよう!
――カラン。カラン。
「あ、マルコおじさーん! いらっしゃーい!!」
「アリエッタ!? おまえさん、王都の本店はどうしたんだよ!?」
「あは! 第一騎士団の人たちがいなくなってから売上が落ちちゃってね! 店じまいしたの」
「まじか……。本店をそんな簡単に閉めていいもんなのか……?」
「いいのよぉ、細かいことはね! でもマルコおじさんが第一騎士団の人たちを連れていかなかったら、こんなことになってなかったかもね」
「いや、それは仕方ねえだろ。でも、まあ、悪かったな」
「ううん、いいの! その代わり責任とってほしいなぁ」
「責任?」
「うん! ウチをお嫁さんにして!」
――むにゅぅぅ
「ちょっと! な、なにしてんだよ!? やめろ! おかみさんがすごい目でこっちを見てるだろ!」
――カラン。カラン。
「あああーーー!! ちょっと、ちょっと!!」
「あら、エルミリーさん。こんばんは! いつものでいい?」
「こんばんは! うん! キラーボアの肉野菜炒め、肉マシマシ、ご飯超特盛りね! ……って、のんきにあいさつしてる場合じゃないでしょ! そ、そ、その無駄にデカイおっぱいをマルコからどかしなさい!」
「ええー! エルミリーさんの胸が控えめだからって、無駄にデカイっていうのはどうかと思うなぁ」
「なっ!! 控えめで悪かったわね! こぶりだけど形はいいってお姉ちゃんに褒められたんだから!」
「ふーん、そうなんだ。じゃあ、ウチとマルコの邪魔をしないでくれる? 今、大事なとこなんだから」
「大事なとこ? いったいなにをしてるのよ?」
「なにって、プロポーズだよ」
「ぷ、ぷ、ぷ、プロポーズですってぇぇぇ!?」
(このエロ小娘はなにをぬかしてるのかしら! プロポーズっていうのはね、もっとロマンチックにするものでしょ! たとえばこんな風に……。
以下、妄想――。
『エルミリー。今晩はどうしてもおまえさんに言わなきゃいけねえことがあるんだ』
『え、マルコ。あらたまっちゃってどうしたの?』
『その前にこれを……』
『これ……。指輪……。もしかしてマルコ……』
『ああ。今から大切なことを言うから、ちゃんと聞いてほしい』
『うん』
『これから毎朝、俺の背中にキスしてくれないか?』
『え……。あ……。はい。私でよければ』
『エルミリー!』
『マルコ!』
妄想終わり。
(キャーーーーー!! 控えめに言って最高だわ! けどもう私とマルコは公認の仲だもん! こうなる日も近いわ! その前にこのエロ小娘をどうにかしなくちゃならないわね)
「おい、アリエッタ。悪いがおまえさんを嫁にもらう気はねえよ」
「え……」
「王都の店が俺のせいでつぶれちまったなら、本当にすまねえと思う。だが、その責任をとっておまえさんを嫁にもらうってのは違うと思う。冗談でもそんなことを言っちゃなんねえ」
「マルコ……。ウチは本気だよ!」
「それ以上はやめときな。そういうのは順番ってもんがあるんだ。それに俺なんかが相手じゃ、おかみさんを悲しませるだけだ」
「うううっ……。マルコのバァカ! バーカ! うえええええん!!」
(エロ小娘あらためアリエッタ……かわいそうだけど、ここまでよ。まさか功を焦って自滅するとは思わなかった。
彼女は敗れはしたが、アグレッシブな姿勢と破壊力抜群の胸には、さすがの私でも脅威を感じたわ。
でも勝負は非情なものね。
そのアグレッシブすぎるところが裏目に出てしまうなんて……。
ありがとう。
私はあなたのことは忘れない。
あなたがライバルでよかったわ。
さあ、エルミリー!
ついに戦場に立っているのは私一人よ!
マルコも今言ったじゃない!
『そういうのは順番ってもんがある』って!
だから今日こそ、『お友達』になってもらうんだから!!)
「ま、マルコ!!」
「ん? どうした?」
「お、お、お、おとも……」
――カラン。カラン。
「ねえ、マルちゃんはいる?」
(ぐふっ! なによこの超絶美女は!? 抜群なスタイル、ウェーブのかかった金色の髪、そのうえセクシーな泣きぼくろに、透き通るような白い肌! 完全無欠とたたえられた私でも負けを認めたくなるような完璧なお姉さんじゃない! なんでそんな美女がマルコの名前を!?)
「おう、俺がマルコだが」
「ふふふ、マルちゃん。やっと会えたね。でも他に言うことがあるでしょ?」
(や、や、やっぱりマルコの知り合いだったのねぇ! ぐぬぬぬ……。なんでこんなしがないおっさんのマルコに女ばかりが寄りつくのよぉぉ! ……いや、ルベルガー将軍は男だったわね)
「さあ、マルちゃん。聞かせてよ。私に告げる言葉を!」
(ちょっとなに!? この展開! まさか……。まさかマルコ……。この美女はあなたの……)
「………………すまん。誰だ? おまえさんは?」
「……へ?」
「……ほえ?」
「すまんが、おまえさんの顔も名前もしらねえんだ」
「……」
「……」
「はあああああ!?」




