やっぱりこの将軍は頭がおかしいと思う
「わりぃ。俺には無理だわ」
「ど、ど、どうしてだい!? こんなイイ話を断るなんて、ボクにはとうてい信じられないよ!」
「マルコおじさんのバカ! ウチよりママをとるなんて信じられない!!」
「マルコは定食屋のおかみさんを狙ってたの!? た、たしかに定食屋のおかみさんは、歳のわりには美人でスタイルもいいのは認める。ええ、いわゆる美魔女よね。それに旦那様にも先立たれて、今は未亡人っていうじゃない。少しだけ年上の女に憧れる男の気持ちも分かっているつもり。でもダメよ、マルコ!! もっと若い女の子と恋をしなきゃ! 熟年の恋をするにはまだ早すぎるわ! ……って、わ、わ、私はダメだからね! い、い、今は恋よりも仕事なんだから! で、で、でも一緒にお食事するくらいなら、ゆ、ゆ、許してあげてもいいわよ! し、し、仕方ないんだから!」
「だったらウチがマルコおじさんの恋人になってあげる!」
(ブフォッ!! こ、こ、このエロ小娘! なんてこと言うのよ! 信じられない。信じられないわ! 恋ってもっと奥ゆかしいものでしょ? あっさりと『恋人になってあげる』なんて言ったら、情緒もへったくりもないじゃない! 愛の告白は、じっくりと二人の距離をつめた後、ロマンチックな夕陽を見ながらするのがセオリーってもんでしょ!?)
(このエルミリーって女騎士さん。もしかしてマルコおじさんのことが好きなのかしら……? でもそれは許さない! ウチとマルコおじさんは結ばれる運命なんだもん!)
(ふふ。二人とも分かりやすいね。しかしライバルが多いほどボクは燃えるタイプでね。渡さないよ。その汗はボクだけのものさ)
「ちょっと待て! どうしてそうなるんだ!? 俺はただ町に残した武器屋を捨てて、ここにくるわけにはいかないって言いたいだけなんだぜ?」
「ふふ。だからその件は他の武器職人を送るとしたじゃないか」
「そういう問題じゃねえんだよ……」
「じゃあどういう問題なんだい?」
「町には俺の作る武器を待っている奴らがいる。俺は自分の身のためだけに、そいつらを放り出すわけにはいかねえんだ」
「ふふ。あの町で売っているのは鉄や銅でできた武器なんだろう? そんなの職人なら誰でも作れるじゃないか。君でなくちゃいけない理由なんてどこにあるんだい?」
「……ふざけるな……」
「ん? なにか言ったかい? よく聞こえなかったんだが……」
「ふざけるなぁぁぁぁぁ!!」
(マルコ! ダメよ! そこでキレたらダメ!)
「こちとら使い手のことを考えて作ってんだ! あいつは左利きだったから持ち手はこの角度にしておこうとか、あいつは腕力が強いからこのくらいの重さにしてやろうとかな! 一つ一つに魂がこもってんだよ!! それを『誰でも作れる』だとぉ!? なめてんじゃねえぞ!!」
(うわぁ……。王国軍のトップに君臨する将軍にタンカ切っちゃったよ。
マルコはこれで終わりね。
軍ににらまれたら、この国で武器屋をやっていけるわけないもの。
この国をでるしかないわ。もしそうなったら………。
…………駆け落ちね。
うん、いいよ。マルコ。
私はどこまでもあなたの背中についていく。
そうして誰も知らない土地で、二人で静かに暮らすの。
あなたが薪を切って……私はその背中を眺める。
あなたが料理を作って……私はその背中を眺める。
ただじっくりと背中の筋肉を愛でるだけの生活。
ふふ……。
そういう何気ない日常にこそ、幸せを感じるのかもしれないわね)
「素晴らしい!! 素晴らしいよ、マルコ君!」
「ほえっ?」
「ボクは君のことがますます気に入ったよ!」
(ふふ。それに飛び散る唾も素晴らしかったよ、なーんてね)
「どういうことだよ?」
「君の武器作りに懸けるその情熱とプライド! 実に素晴らしいじゃないか! 今、僕は確信した! 君は絶対にイイ汗をかいてくれると!」
「汗だぁ?」
「よし、ではこうしようではないか! 君は町に戻って武器屋を営む」
「お、おう。ハナからそうするつもりだが……」
「そして、僕が率いる『第一騎士団』は君の町を拠点にするとしよう!!」
「ほえっ!?」
「うん、それがいい! そうすれば堂々と君に武器作りを頼めるし、目の前で汗をかく君を眺めることもできるじゃないか! われながら妙案だ! はははは!!」
「……」
「……」
「「はああああああ!?」」




