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この世は優しくて甘い   作者: ニケ
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レイから必死のお願いを受けリュウガはうーんと天井を見上げて唸った。プレゼン資料からヨシザワが押していない印鑑を見つけたが、この証拠だけで陥れようとしている犯人を誘き出すのは難しい。犯人の心に届く何かを手に入れなくては。そのためには犯人のことを深く知る必要があった。



「わからない犯人を知る、理解しようとするってことですか?そんな、雲を掴むような話。。。」



「だって、脅して恐怖を与えて呼び出すって嫌じゃない。向こうだって警戒しちゃうよ」



「。。。。」



そこまで相手のことを考えなくてもいいだろうとレイは不満げにリュウガを睨み付けた。売上を不正に上げその罪をヨシザワやアルに擦り付けようとしている人物だ。決定的な証拠をいくつも突きつけて正体をあぶり出してもいいじゃないか。心の中にある声は口に出さなくてもリュウガに伝わったようで、リュウガはにんまりと口元を緩めた。むしゃくしゃした想いを言葉としてわかりやすく伝える必要もなく、レイは初めて自分の感情が顔に出る特性を良いもんだなと頭の片隅で思う。



「レイの気持ちもわかるんだけどねぇ。やられたらやり返せ、んじゃ遺恨を残しちゃうでしょ。それじゃあ、相手だって幸せになれないよ」



「なんで向こうの幸せを考えるんですか。それなりのことをしたんですから、辛くなっても仕方がないでしょう」



「そうなんだけどさー。そんなやり方じゃあ、ヨシザワ部長は悲しむよねぇ」



レイはあ!っと小さな声を上げ難しい顔をして押し黙った。例え相手が自分を陥れようとしていてもヨシザワは部下想いで何も言わず自分を責めるだろう。売上の不正を気づけなかったこと、他社との癒着をしてまで利益を上げさせてしまったこと、部下を精神的に追い込んでしまったと人知れず苦しみ続けるかもしれない。



「それにアルも悲しむだろうね。他にやり方がなかったか、またいろいろと研究し出すだろうし」



「アルさんもですか?」



「うん。。。アルって人を幸せにすることにすごくこだわるから。異様に執念深いんだもん。幸せとか、人の笑顔とか。どこまでも追求するの。怖いくらいに」



コウも考え込むようにじっと手元を見つめた。気のせいなのか辺りがぐっと暗くなったような不思議な気配を感じた。コウから発せられる無言の威圧感にレイはピタリと動きを止める。無意識に背筋が伸びて胸の辺りがドキドキしてきた。体が思ったように動かず頭もピリピリとして落ち着かない。緊張してきた空気を払いのけるようにコウの頭の上でリュウガはブラブラと手を動かした。



「。。。何してるの?隊長。虫なんていないじゃない」



「ん?いるよー、虫が。ほら、どよ~~ん虫。たまにコウの頭に乗っかってきてさー、どよ~~ん、どよ~~ん、鳴くの。で、レイがどよ~~ん光線にやられるっていうね」



「もうー!!何それー!!」



頭の上を何度も往復するリュウガの手をコウは叩くように追いかける。パチンと軽く痛そうな音が目の前で弾けてレイは目が覚めたように瞬きを繰り返した。



「凄いだろう?コウのどよ~~ん虫。レイも殺虫剤を持っておかないと。あ、レイは大丈夫か。いろいろと鈍感。。。」



「隊長。。。口を手で隠しても聞こえています」



しまった!言い過ぎた!と目で訴えてくるリュウガにレイは横目で恨めしそうに答えた。助けを求めるようにコウを見ると、鈍感くらいがちょうどいいよ、と優しく笑っている。先ほどの暗い威圧感がなくなり、いつもの穏やかな微笑みに戻っている。レイは安心したような、救われた気持ちになって心が少し軽くなった。



「いいわぁ、レイ。立ち直りが早いわぁ。からかい甲斐がある。。。っと、まずは犯人を知らないとね」



「急に真面目な顔をしないでくださいよ!隊長の真剣な顔って違和感ありすぎて逆に怖いです」



「ホラーだよねぇ。嫌な予感しかしないの。で、どうするの?ある程度特定できてる?」



誰かもわからない人の心を理解することができるのだろうか。リュウガは静かに下を向いた後、提案だけどと珍しく鋭く目を光らせた。



「そもそも不正を働いた原因は、営業成績が落ちたことからの焦りと不安だと思うんだ。営業成績が良くて、お客様からも慕われてたんなら仕事が面白くてしかたがないだろうし」



「うん。信頼されて商品を選んでいただける。愛されて次に繋がっていく。営業の醍醐味だよね」



「やりがいもありますしね。そうだったら」



リュウガの言葉に二人も頷く。営業という仕事はうまくいけばいくほど面白い。営業に限らず他の仕事もそうかもしれないが、営業の仕事はプレゼンした商品を選んでもらった時の嬉しさや高揚感をその場でダイレクトに感じることができる。自分の上げた利益がそのまま会社の利益になり、わかりやすく数字で評価されるのだ。



「原因になった、営業成績が落ちた理由を知りたい。特に気になった三人の社員がいたよね?」



「あ、はい。俺の同期と先輩と。。。アルさんのパソコンを触っていた先輩です」



「アルのパソコンを、かー。アルのことだから、トラップをかけてるかもね。こんな大がかりな不正だもの。随分前から準備されてたんじゃないかな」



リュウガはまた思考を整理するかのように上を向き、眉をひそめる。ほんの半年前まで先輩や同期のライバルと肩を並べて仕事をしていたレイは営業成績についてどうだったかなとなんとか記憶を辿っていく。自分のことでいっぱいいっぱいだった半年前の自分を叱ってやりたい。なぜもう少し周りに気を配らなかったのだろう。もしかしたら重要な、ふと疑問に思う行動を身近だった二人がとっていたかもしれないのに。



「営業成績が落ちたって、かなり空回りしてたってことだよね。それか、誘われて魔が差したって感じ?」



「あいつがそんなことするなんて。。。でも、思い返してみると、あいつ、かなり無理して外回りしてましたよ。1日に10社とか。どうやってアポ取れんだ!?って劣等感に苛まれてましたけど」



「いいねー!レイの嫉妬に満ちた悪魔の形相、見てみたかったわー」



「隊長!!にやにやしないでくださいよ!!」



嬉しそうに笑うリュウガにレイは堪らず脇腹を突いて精一杯抗議する。体をよじらせて逃げるリュウガを恨めしそうに見て次の攻撃を仕掛けようとしていると、静かに考えていたコウが一呼吸置いて考えをまとめるように口を開いた。



「じゃあ、営業成績が落ちてきた時期の報告書を見直せばいいってことだよね。そうだ!ぽっちゃり部長のデータに個別の営業成績って保存されてないのかな?」



「うーん。そうだなぁ。アルからの資料には個人の成績がデータ化されてたけど、最近のものだしね。部長なら義務として保管してるかもだけど、部長だからなぁ」



「そうだよねぇ。。。」



ヨシザワは仕事のできる面倒見のいい人物だが、細かい整理などには向いていない。よく言えばおおらかで、悪く言えば大雑把。データよりも自分の感を信じ、過去のことなど気にしない性格だ。過去の営業成績のデータなど保管していないだろう。整理すらしていないかもしれない。



「ルカさんが三人の報告書の書き方が変わったのは、5月頃だって言ってました。架空の売上から淡々としたものになったって。その前の営業成績はどうだったんでしょうか」



「何かあったんだよね。その何かがわかれば。三人の心に近づけるかもしれないね」



コウは目を細めて、5月か。。と小さく呟いた。ここは手分けした方がいい。営業成績が落ちた原因を探るべくリュウガは二人を見ながら口を開いた。



「報告書を見るのはルカに任せた方がいい。レイはルカが見やすいように三人の報告書を探して整理して。コウは三人の過去を知る人たちにどうだったか話を聞いてきてほしい」



「三人の身近な人に?取引先の会社にも行っていい?」



「おう、任せる。なるべく三人と直に接していた人がいいな。書類に表れない情報が欲しいんだ」



「了解」



コウは自分のスマホを取り出し電話帳から何人かの人物を選び出した。指をスライドさせてメールを作成しているようだ。レイは資料室から運んできた報告書を見て大きく頷いた。



「俺は三人の営業成績のデータを探してみるよ。まあ、監査辺りに保管してあると思うんだけど」



「へ?隊長。。。探すってなんですか?監査って?」



「うん、そうだねー。役員の中にはデータを見たいっていう人がたくさんいるからねー」



「。。。は?どういうことですか?」



よくわかっていないレイにコウは明るく笑うと、報告書を整理するよう促した。二人の会話の意味を全く理解できなかったが、まあ自分は知らなくてもいいことなんだろうと頭を切り替える。報告書を整理する前に休んでいるルカの様子をも見ようとレイは寛ぎスペースのこたつから足を出して立ち上がった。

いつもありがとうございます(*^^*)!お久しぶりです~~!!学びたいものが一段落ついて、心が落ち着いたので書きました。読んで楽しんでもらえたらいいなぁと思います。自分も人も幸せにする考え方に惹かれて、本田晃一さんの動画を見ています。素晴らしいです!!!これはいい!!!竹田和平さんの存在を知って、なんて素晴らしい人なんだ!!!と感動していました。争いから平和にする考え方、これなら自分も人も幸せにする!!ってとても感動しています。どんどん学んで吸収して平和で豊かな愛溢れる世界をたくさん楽しもうと思います。どうぞお読みください♪いつもありがとうございます(*^^*)!

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