1章 世界を救ってその後3
謁見室を後にする。
国王は執務で忙しい。大抵の事は大臣から仰せつかる。
お偉い方々は飯を食うのも執務、あっちこっち観光するのも執務。別に構いやしないのだが、実地で危険な目に合う俺の身にもなってほしい。
溜め息を落としながらやたらめったら広い城を闊歩する。
人一倍横幅がある俺だが、そんな俺が三人横に並んでも余裕のありそうな廊下は絨毯が引かれ、荘厳な眺めだ。清潔感に溢れ、日頃の清掃が行き届いてるのが見てとれる。
こんな広い城を隅から隅まで掃除するなんてとんでもない! 気が狂う……もとい気が遠くなる作業だ。そんな苦労をおくびにも出さないメイドさんたちは今日も今日とて忙しなく城内を駆けている。
「やあ」
「まあ、トーカ様! もうお勤めは終わりで?」
「残念ながらまだ」
「そうですか。お時間が出来ましたらまた食堂にいらして下さいね。私共も腕によりをかけて準備しておきますので」
「それは楽しみだなぁ。これからの憂鬱なお仕事も頑張れそうだ」
顔見知りのメイドさんはくすくすと楽しげに笑うと、飾り気の少ない給仕用ドレスをふわりと揺らして一礼して横を通り抜けていった。
その際にせっけんのような香りがかすめて、気持ちが浮わついてしまう。
「……やっぱメイドさんはいいなぁ」
多分に下心を含んだ呟きが漏れる。