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ある町のガイド

作者: 只野 皐度

ハリス・アスター、旅行者を中心にスリや詐欺、置き引きなど巧みにこなす小悪党。

生涯に渡って休むことなく務めを果たし、誰もその仕事の全容を把握できていない。

仮に捕まえてみせたとしても、その全てが彼の模倣犯であり、本物が捕まることはなかった。


やぁ旅人さん、道に迷ったのかい?ならここで会ったのも何かの縁だ、案内しようじゃないか。

ただ案内料で5エーストもらうけどいいかい?毎度ありー。

さて、ここグラミーは歴史こそ短いけど住み心地がいい街でね、領主様のウェルシア様も領民には良くしてくれる。

旦那も検問は受けただろ?私も他の町にいったことがあるが、ここほど厳しい検問は他にはないだろうね。

それもこれも私たち領民を守るためで、ウェルシア様を悪く思わないでくれよ。


それもこれも、これはあまり人には言いたくない話なんだが、まぁ言いたくないといっても町の人なら誰もが知っているほど有名し、旦那みたいによそから来ても二日もいれば一度はその名前を聞くはずだから言うけど、実はどうしようもない悪党がこの街にはいるんだ。

そいつの名前はハリス・アスター、私たちはハリーって呼んでる小悪党がいるんだよ。


例えば旦那が町にやって来て何かを買おうとするが、会計をしようとしたときに小銭入れがなくなっていることに気がつく。慌てふためく旦那を見た店員はこう教えてくれる。

「なんだ、すられたのかい?たぶんこそ泥ハリス氏の仕業だろうね」と。

どうして分かるかって?ハリーは獲物の背中に鳥の羽を刺していくんだよ。しかも領民には決して手を出さないから、右も左もわからない旦那なんていい獲物さ。


それから不機嫌な感じで宿をとるだろ?でも目が覚めたら荷物が荒らされるはずだ。ハリーには仲間が多く、どこそこに誰々が泊まった、なんて情報は逐一入るから仕事を誤ることはない。

もちろん宿側だって対策はしてるんだけど、熟練の泥棒に鍵なんてのは無意味なんだよね。


日帰りで宿も取らないし、小銭入れはちゃんと握っているから大丈夫?あぁ、旦那みたいにそんな警戒してる人ほど危ないんだよ。

なんせハリスはこれまで役人に一度だって捕らえられたことがなくてね、そういった心の隙をついてくるんだ。


その声色は千を持ち、物乞いから貴族まで真似してみせて、顔だって変えられる。

旅芸人一座のアルテスって知ってるかい?あそこの役者になり替わって芸を見せてたことだってある。


おや、ところでその指輪をちょっと見せて貰えないかい?ふむ、随分と高そうな指輪だけど、あぁ安心しておくれ。この石は本物のルビーだしアームも金だよ。どうやって手に入れたんだい?

酒場でたまたま出会った男から、酒代のために買い取って欲しいって?いくらで?200エースト、それは随分と安い金額だね。おかしいと思わなかったのかい?

残念だがソイツはきっとハリスだよ。


それにその指輪はウェルシア様の指輪にそっくり、ありゃ、恐らく盗品だよ旦那。

私がウソを言ってる?なら領主の屋敷に行くといいさ。捕まる?あはは、仮に盗品だとしても正直に持っていけば旦那が疑われるはずがない。だってわざわざ盗んだ物を正直に返す馬鹿がいるかい?


それにもしも盗品でなければあんたのもんだ。

しかし黙って持ち出そうとすればアンタは間違いなく罪人になるだろうね。だってハリーの仲間だと思われたって仕方ないじゃないか。

なんなら私が口添えしてあげようか?なあに、この町のイメージが悪くなるのを見逃せないんだよ。

ん、ちょうどそこに衛兵がいるじゃないか。


おーい、そこの衛兵さん。ちょっとこの旦那がハリスから盗品を買わされちゃったみたいでさ。もしかしたら伯爵さんの指輪かもしんねーんだ。

こいつがハリスかもしんねーだぁ?旦那さぁ、ハリスがそんな嘘をついてなんの得があるんだい?それによくみてみぃ、背格好も全然違うだろ?

それに今日来たばかりの旅人なんだから、早く返しちゃくんねーかな?

うん、話がわかる旦那で良かったよ。この間の衛兵は偉そうにしてキチンと身元を調べなければ屋敷には連れてかねーとか抜かしやがるからフザケンナって怒鳴っちまったよ。

そもそも旦那たちがハリスを捕まえないからこうして被害者が出てるんだろ?

よし話がついた、じゃあ旦那、その衛兵さんと一緒に屋敷に行けば疑いは晴れるはずさ。


何から何まですまない、礼がしたいって?

あはは、じゃあもし届けた礼でも貰えたら、うちで何か買ってってくれればいいさ。

あそこに青い屋根があるだろ、あれがうちさ。迷ったら「夜鴨鳴き亭」っていえば通じるからさ。


じゃぁな

思いついて書いてみたはいいものの、使う機会がなさそうなので公開。

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