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第五話 翌日です。(改訂版)

 謎の宇宙船に拉致られて二日目の朝、おそらく午前六時頃だろうか。

 端末ちゃんに起こされた俺はサバイバルシートを畳み、夜間に増殖したであろうスライムを狩りに地下一階に降りる。

 朝食抜きだが仕方がない。

 昨日の経験によれば地下一階は「田」の形だ。下の三叉路に地上への階段があり、上の三叉路に地下二階への階段がある。

 一片の長さは約百メートルで、通路の両側に扉がある。扉がある間隔はランダムっぽい。扉の内側には縦二十メートル横十メートルの部屋がある。部屋の中にはたまにスライムがいる。スライムの繁殖が冒険者の数に追いつていないのだろう。


「スライムはもう少し増えないのか?」

「歩いて体力つけるのも訓練ですよ」


 端末ちゃんの言う通り歩くことは重要な訓練だ。

 水の問題があるから、初期配置された場所から最初の街まで歩いて三日とかいう状態はないだろう。

 だが、拠点の街から攻略すべきダンジョンまで歩いて三日という状況は十分あり得る。一日に二十キロメートルぐらいは荷物を背負って歩けるようにしておかないとマズい気がする。


「それはそのとおりなんだろうが、歩くだけじゃポイントが貯まらないだろう

「正直に言えば、最初の一か月はこちらもいろいろと制限がございまして」


 どうやら端末ちゃんも正直に現在の状況を話す気になってくれたらしい。

 もちろん、端末ちゃんの話す事全部が真実とは思わないけど。


「制限?」

「最初の一か月は加速してます。慣性航行に移行するまでは何かと厳しいんです」


 加速中は船内で生成されたエネルギー、おそらくは電力の大部分を推進機関に回すから生命維持系に回せる電力が少ないのだろうか?


「加速ってどのくらいだ?」

「毎秒約五メートルです。すごい加速でしょ?」

「まあな。宇宙船の正確なサイズが解らんからどのくらい凄いのかは解らんが」


 今いる訓練場がある宇宙船はキロ単位のサイズだからな。

 そんな巨大な宇宙船を毎秒五メートルで加速する方法となるとかなり限られる。

 万が一、核パルスエンジン、核爆発を発生させて推進する、で推進していたとして地球と人類は大丈夫だろうか? 

 正直、端末ちゃんに訊いてみたいのだが……。


「人類ですか? 大丈夫ですよ、死に絶えてはいません」


 という答えが返ってきそうで訊くのが怖すぎる。


「慣性航行に移行すれば機動兵器の操縦訓練も始まります。楽しみにしていて下さい」

「機動兵器って人型か?」

「やだなー。人型は陸戦兵器ですよ」

「陸戦用で人型なのか?」


 どちらかというと宇宙空間用の機動兵器の方が人型に向いてる気がする。

 可動するメインセンサが頭部でコクピットと生命維持系と動力源が胴体、作業用マニュピレータ二基が両腕で、可動する推進剤タンクと主推進器が二基が両足だ。これでデフォルメされた人型になる。人型になるだけではない。各部のモジュール化で整備が楽になるし、小惑星などの極小重力環境で推進剤を使わずに手足を使って歩行で移動できる。

 それなりに利点はあるはずだ。


「人型兵器の剣と魔法が最強ってのはロマンがあるでしょ」


 ロマンがあるのは否定しないが、俺たちは生身で陸戦用人型兵器と戦わされるわけか?

 そーゆー状況は全力で遠慮したいぞ。


「陸戦用人型兵器の訓練はないのか?」

「陸戦用人型兵器の訓練は慣性航行に移行しなくても可能なので、希望があればそのうちにやりますよ」

「楽しみにまってるよ」

「あらかじめ言っておきますが、陸戦用人型兵器の訓練はそう楽しいもんじゃないらしいです」

「何で?」


 人型兵器の操縦とか男のロマンだろう。

 楽しくないわけがないと思うのだが気のせいではあるまい、多分。


「聞くところのよれば乗り心地がすごく悪いそうです。乗った方は最初は喜んでますけど、そのうちもう二度と乗りたくないという方が少なくないです」


 せっかく人型兵器に乗れると思ったのに、乗ったら敵より先に乗り物酔いとの戦いかよ!


「一般的な陸戦用人型兵器は全高が六メートルから八メートルぐらいで、核融合炉と慣性制御機関を積むには小さすぎますからね」


 一般的じゃない全高二十メートルサイズの人型兵器なら核融合炉と慣性制御機関を積めるのだろうか?

 まあ、人型兵器がダメなら魔法だな。


「ところで魔法の訓練はあるのか?」

「今のところ、はっきりしたことは言えません」


 端末ちゃんの答えは珍しく歯切れが悪い。

 魔法の訓練には問題があるのだろうか。

 普通の人間が魔法を使えるようになるためには精霊さんという名前のナノマシンを制御する器官を体内に増設する必要があるのだろう。

 おそらく、端末ちゃん達は食事に混ぜたナノマシンで俺たちの体内にアレコレ増設しているのだろう。

 最終的に俺達もナノマシンによって体内に構築されたネットワーク・インターフェースを使い、人工知性体に意識を移すことになるんだろうか?


「魔力が上がったら魔法が使えるんだろ?」

「あんまり魔法にはこだわらない方がいいと思いますよ」

「何で?」

「そりゃメリットだけあってデメリットがない事は少ないですから。ヒトの特性から言っても物理戦闘に特化した方が効率がいいです」


 そういえば俺の魔力値はそんなに高くないんだったな。

 端末ちゃんの発言から人間が魔法を使えるようになると何らかの問題があるのかもしれない。


「じゃ、どんなデメリットがあるの?」

「申し訳ありませんが、いろいろありまして今は魔法に関する詳しい事はお話しできません。魔法よりもスライムですよ、スライム! 使えるかどうか解らない魔法より今日の御飯の方が大事です!」


 確かに使えるかどうかわからないより魔法より今日の御飯の方が大事だし、改造人間になってまで魔法を使いたいとは思わない。

 だが何となく釈然としないものを感じるぞ。

お疲れさまでした。

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