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第二話 これから訓練用の迷宮にもぐります。(改訂版)

 俺達がパーティを編成しろと言われて困惑していると壁の一部が左右に開く。


「訓練場を開放します」


 管理者側も実力行使に出たらしい。

 訓練場だしなんとかなるんだろう、多分。

 開いた壁の先には小さな集落と草原がある。

 遠方の方に大きな森があり、さらに向こうには巨大な壁がある。上には空のようなものがあるが、その上には天井がある。

 この迷宮はキロメートル単位の巨大なかまぼこ型らしい。


「訓練場に移動して下さ」


 全員が外に出ると背後の壁が閉じられる。

 ここにいても仕方がないので、目の前の集落に向かう。

 集落の建物の入り口は俺たちがいる反対側にあるようだ。

 平屋のログハウス風の建物に入ってみる。その建物には黒髪お団子ヘアで黒いメイド服に白いエプロンをつけた美少女メイドさんがいる。年齢は十五歳ぐらいだろうか。

 店内はコンビニ風に食料品と雑貨であふれている。


「いらっしゃいませ、お客様。申し訳ありませんが、最初にお隣の冒険者ギルドで情報端末を受け取って登録をすませて下さい。お買い物ができるのはそれからです」


 にっこりと笑いながら店員さんは最初に隣の冒険者ギルドへ行けと言う。

 どうやら議論の余地はないらしい。

 仕方がないので、冒険者ギルドに移動する。


「いらっしゃいませ。訓練場の冒険者ギルドにようこそ」


 さきほどの店員さんと同じ顔で同じ声で同じメイド服を着た受付のお嬢さんが挨拶してくれる。

 双子なのか、と思ったがすでに転移者の対応している受付のお嬢さん達も同じ顔だ。

 有機なのか無機なのかは解らないが、このお嬢さんたちは人工知性体らしい。


「いらっしゃいませ。少々お待ちください」


 俺が開いてるカウンターに座ると受付のお嬢さんが一瞬緊張したが、極普通に挨拶してくれる。

 お嬢さんはそう言って席を立ち、バックヤードからスマフォより一回り大きい七インチタブレット型の情報端末を持ってくる。


「どうぞ。登録して下さい」


 受付のお嬢さんが両手で情報端末を渡してくるので、俺も両手で受け取った。

 情報端末には電源ボタンらしきものがない。

 画面を触ってみるが反応はない。どうやら音声入力らしい。


「登録開始」

「こんにちは。支援端末です。貴方のお名前を教えて下さい」


 端末が若い女性の声で話しかけてくる。

 どうやら初期作業が始まったらしい。正直、ウザいが初期作業に付き合うことにする。

 端末に登録しないと買い物ができないそうだからな。


「ユーザーで」

「ユーザー名はメールアドレスにも使用されます。個人をイメージしやすい名前にして下さい」


 メールできるのか?

 地球の友人には無理だろうが、このわけの分からない世界の内部でならメールできてもおかしくはないか。こーゆー情報端末が存在するんだし。


「じゃ、睦月で」

「これからよろしくお願いします、睦月さん」

「こちらこそよろしく。これからどんな作業があるんだ?」

「身体データは最適化作業時にいただいてますから登録作業はおしまいです」


 初期登録は予想外に簡単に終わった。

 身体データは最適化作業時にいただいてるらしい。

 つまり、指紋とか個人を特定する遺伝子とか指紋などの身体データをすでに持ってるってことだよな。


「最適化作業ってのはどーゆー意味だ?」

「大体、お判りでしょうが肉体年齢を十五歳前後まで戻してます。後は体脂肪分の減少とかですね」

「なるほど」

「じゃ、登録も済みましたし、装備を買いにいきましょうか」

「支払いはどうするんだ?」


 貨幣も紙幣も持ってないのに買い物が出来るのだろうか?


「冒険者の皆さんの支援端末にいわゆる電子マネーで準備金が支払われています」


 問題が起きない様に端末ちゃんが預かってくれているわけか。

 支払いに問題ないなら隣のコンビニに買い物に行こう。


「端末ちゃんは何が必要だと思う?」

「最初の一か月は基礎体力作りでスライム潰してればいいですから、片手用鍬と背負い袋と水筒があれば十分です」


 俺は端末ちゃんの助言通り、イカ型片手用鍬と安っぽいリュックサックとプラスチックの水筒を買い物かごに入れる。


「灯りはいるのか?」

「必要ないです、浅階層では天井が光ってますから。万が一のために携帯用トイレはあった方がいいと思いますけれど」


 訓練用迷宮だけあって難易度は高くないらしい。

 俺も携帯用トイレはあった方がいいと思うので、雑貨コーナーにあった携帯用トイレを買い物かごに入れる。

 万が一の事態に備えての装備が携帯用トイレとは訓練用とは言えそんびりとした迷宮だと思う。


「食料と水は?」

「地上に帰った方が安くて美味しいものが食べられます。水は迷宮の入り口になんとか水の供給機みたいなのがあります。そこで補充して下さい」

「解った。じゃ、これで買い物終了だ」

「ここで清算しておきますか」」

「頼む」


 特に何か変化があるわけではない。


「清算が終了しました。これから一番手近な迷宮に潜ってみますか?」

「そうだな」


 何とも便利な事に集落の建物の一つが迷宮の入り口になっているらしい。

 その建物に入ると手前に長方形のテーブルが二つ、椅子がテーブルごとに六個置かれてある。

 奥の方には飲料水の供給機と地下への階段がある。

 幅ニメートルのゆっくりした石造りの階段を降りると迷宮の地下一階である。

 端末ちゃんの言う通り、天井が照明になっている。

 ちょっと薄暗いが特に灯りが必要なほどではない。

 石造りの壁と通路が前と左右に続いている。

 通路の幅は二十フィート、約六メートルぐらいで、高さは十二フィート、約三メートルだろう。

 通路は三人並んで十分な広さがある。

 俺は右手に全長三十センチぐらいのイカ型片手用鍬、左手に端末ちゃんを持って探索開始である。

 まずは何かあっても逃げ帰りやすいように正面の通路を探索することにする。


「スライムってにはどのぐらい強いんだ?」

「具体的な数字は出せませんが五体満足な成人なら誰でも勝てますよ、多分」


 ここのスライムは物理攻撃が効きにくい面倒なモンスターではなく、最弱のモンスターらしい。


「そんなので訓練になるのか?」

「地下一階のスライムは迷宮の雰囲気に慣れてもらうための最初の敵ですから。特に問題はありません」


 管理側はそう思っているのなら。俺達にとってもありがたい話だ。

 いきなり素人に哺乳類や人型モンスターをぶち殺せと言われても無理に決まっている。

 この迷宮はソフトに、ゆっくりと人の倫理観を壊す場所なのだろう。

 いや、迷宮自体がさまざまな欲望や死への恐怖によって、人を人殺しの人でなしに調教する場所なのかもしれない。

 この事は忘れずに覚えておこう、人でなしに調教されないために。

お疲れさまでした。

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