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第十七話 一か月が経ちました。

 なんやかんやで一か月が過ぎた。

 食堂のメニューも増えたし、訓練用の迷宮も居住区の中央部にある大型迷宮に移行する事になった。


「これからが訓練の本番ですよ。これまでは練習みたいなもんですからね。気合入れて頑張りましょう。ちなみに、これからは泊まり込みの迷宮探索もありですからね!」


 如月ちゃんは相変わらずテンションが高い。

 食堂で和風朝食セットを食べてから、コンビニ前で装備の最終点検をする。

 地球のコンビニでやったら非常に迷惑な行為だが、ここにはほぼ俺達以外に客はいないのだからほぼ問題ない。

 現時点の俺達の装備は黒のスウェット上下に防刃ネックガード、防刃手袋、踏み抜き防止用インソールを入れた安全靴、スポーツ用ヘルメット、目出し帽にゴーグル、オートバイ用の上半身用と足用のプロテクタを付けた超怪しい集団だ。

 中世欧州風の冒険者には絶対に見えない。

 別のパーティでは化け物系のイラストが入った悪趣味なフェイスガード使ってる奴らもいるから、俺達はまだマシな方だけどな。

 武器はメインが相変わらずツルハシと三本鍬だが、そのままではあまりにミスマッチなので塗料で黒く塗ってある。サブがククリナイフだ。

 メイヌェポンは銃器類が欲しかったのだが、弾が調達できないので諦めた。

 地球から運ぶわけにもいかないしな。

 全員が持っている大型の黒いリュックサックの中身を確認する。


「スポーツ飲料が一リットルのペットボトルが二本で二リットル。水はニリットルのペットボトルが二本で四リットル。おやつのチョコレートとコーヒーとスープの素、粉末スポーツ飲料、プラ水筒、携帯用毛布、携帯用トイレとトイレットペーパーと目薬、絆創膏、液体歯磨き、ごみ袋、休憩用のサンダル。欠品ないね?」


 全員がうなづいた。

 もちろん、これら以外にも個人の嗜好品がいろいろとある。

 全員で使うごみ袋や携帯用ガスコンロなどは俺が持っていく。

 他の気合の入ったパーティは初日から泊まり込むらしい。テントやレジャーシート、転がせる水タンクまで持ち込んでいる。


「僕らは中で泊まらないんですよね?」


 山田君が気になったのか確認してくる。


「初日から泊りは勘弁してくれよ」


 俺は何が出るか解らない場所で一泊する度胸はないからな。


「でも、万が一の用心でテントはあった方がいいんじゃない?」

「私もそう思います」


 吉田さんと弥生さんはテントが欲しいらしい。

 迷宮内部で宿泊するならテントがあった方が良いに決まってる。


「テントなら簡易テントがあるじゃないか」


 簡易テントは携帯用毛布より一回り大きい袋に入った非常用のテントである。

 長さが約二百五十センチ、幅約百五十センチ、高さが九十センチの三角柱を横に寝かせた形状だ。

 大人二人が寝る空間は確保できるが、素材が携帯用毛布などと同じで見た目があまりよろしくない。


「えーーー。簡易テントはマジで非常用でしょ」


 吉田さんは簡易テントでの宿泊は嫌らしい。

 弥生さんも黙っているが簡易テントで宿泊が嫌なのは顔を見ていれば解る。

 しかし、俺達はストレージとか異次元収納袋に何でもかんでも放り込めるわけじゃない。

 日帰りが決まってる時はテントなんて大荷物は持ち運びたくない。


「今日はできるだけ荷物は少なくしたいんだよ。多分、二十キロ以上歩くと思うから」


 如月ちゃんと卯月ちゃんも最近は以来だんまりを決め込んでる。

 ちなみに、二人がだんまりを決め込んでるのはしゃべり過ぎて、黙っておくべき情報までしゃべってしまうのを防ぐためらしい。


「じゃ、迷宮の中で泊まる可能性も高いんじゃないの?」

「それはない。今日は無理してでも絶対に帰る」


 今回は無理やりにでも帰らないといけない理由があるからな。


「なんで今回だけ無理しないといけないんですか? いつも余裕持って行動してますよね?」


 弥生さんと吉田さんはよほど不満なのか、いつもは黙っている弥生さんまで突っ込んできた。


「しょうがないんだよ。迷宮の中で一泊すると必要な水の量が倍になるからね」


 手持ちの飲料水が六リットルで、歯磨き、体を拭くための水などを考えれば飲めるのは五リットルぐらいだろうか。

 これだけの水で二日間行動するのは出来る限り避けたい。


「解りました。でも、この先は迷宮の中に泊まり込むんですよね? 水は大丈夫なんですか?」

「転がす水タンクに五十リットル入る。一人が一個持てば大丈夫だと思う」


 一個に水五十リットル入るから、四人が一個ずつ持てば二百リットルの水が確保できる。

 パーティ全体での一日の水の消費量が二十四リットルなら八日分で、多めに三十二リットルとしても六日分は確保できる。

 かなり甘い見積もりだけど、浄水器やガスコンロ使って沸騰させれば何とかなるだろう。


「水タンクとテント買えば問題ないのでは?」


 それは山田君の言う通りなんだけれど別の問題が出てくる。


「今日は迷宮の中と外で最低十六キロ、出来れば二十キロぐらいは歩く予定だけど、誰がテントと水タンク持つの?」


 たまには意地の悪い質問をしてみようか。


「睦月さんと山田君」


 吉田さんは開き直って答える。


「次からは鋭意努力するんで、今回は勘弁して欲しい」

「しょうがないわね」

「睦月さん、何か隠してますよね?」


 弥生さんの質問はひっかけであるのは解っているが一応答えておこうか。


「パーティのリーダーに心配事がない方が問題じゃないかな?」

「それはその通りですけど……」

「出発しようか? 如月ちゃん、入口はどっちにある?」

「艦首を北にして、西へ二キロ歩いて下さい。そこに入口があります」


 如月ちゃんが入口の場所を説明してくれる。

 二キロという事は歩いて三十分、往復では一時間かかる。

 今日の迷宮探索で歩く時間は六時間以内にしたいから、迷宮への往復で六分の一は消費されている。

 モンスターとの戦闘を一時間分と見ると残り五時間。

 休憩を一時間とすると残り四時間、片道二時間歩いて約八キロか。

 問題はこの八キロで地下二階への階段に到着できるかどうかだが、俺は何とかなるんじゃないかと思ってる。

 一階層移動するのに一日かかる迷宮なんて面倒なものが攻略できるわけがない。

 ……でも、目的地は一階層攻略するのに人間の一生がかかりそうな迷宮なんだよなあ。

 これは、少しは覚悟しておけ、という状況なのだろうか。

 三十分歩いて入口の石造平屋の建物に着く。

 二つのパーティがテントを組み立てて拠点を作っている。

 気が早い奴もいるんだな。


「お先に」

「気ぃつけてな」

「ありがとうございます」


 会釈と他愛もない会話を交わして地下一階に降りる。

 幅六メートル、高さ三メートル、天井が薄暗く光るクラシックな石造の迷宮がある。

 道は真ん前に一本あるだけで、道の右側に沢山の扉がある。たまに右側に通路があるようだ。


「今日はできるだけ戦闘せずにまっすぐ行けるだけ行ってみようか」

「偵察ですか?」

「敵を知り、己を知れば百戦危うからずだよ」


 百戦危うからずということは必ず勝てるわけではないが、ボロ負けして命が危ない事はない、ということだろうな、多分。

 いつものようにツルハシで落とし穴がないか確認しながら歩く。

 たまに右側に通路があるが今回は無視する。十五分に一回、五分の休憩をいれて大体一時間半ほど歩く。

 道が直角に右へ曲がる。

 俺達はここでスポーツ飲料を飲みながら休憩することにした。

 俺も長時間連続で歩くのは久しぶりだから正直ちょっときつい。

 山田君も平気な振りをしてるけどあまりうまくはいってない。

 弥生さんと吉田さんの飲料水の消費量が想定よりちょっと多いっぽいけど、俺と山田君が無理のない我慢すれば何とかなるレベルだ。問題ない。


「こんどの迷宮は一辺が四キロの正方形かな?」

「縦四キロ横八キロの迷宮とか攻略できる気がしませんよ」

「そりゃそうだな」


 そこまででかい事はないだろう、多分。


「これ三人で分けて」


 俺は背負い袋から塩飴の袋と板チョコを出して、塩飴を三つ取ってから残りと板チョコを弥生さん達に渡す。


「睦月さんはいいんですか?」

「うん。余計に持ってきた分だから」

「じゃ、チョコは弥生さんと吉田さんで分けたらいい。塩飴はいただきます」


 塩飴を嘗めつつ休憩してると高橋さんがリーダーの男子六人パーティが追い付いてきた。

 さすがに男子だけのパーティだから移動速度も速い。

 六人全員が黒いポンチョとフードで装備を隠しているのは中二病っぽいけどな。

 後衛の三人が転がす水タンクを持っているから、彼らは合計百五十リットルの水を持ち込んでいる。

 六人の一日の消費量が三十六リットルとしても四日分以上ある。

 おそらく地下二階への階段の近所に水タンクを一個か二個置いておく算段なのだろう。

 高橋さんのパーティは見た目脳筋っぽいけど、最強パーティと呼ばれているのは伊達ではないらしい。


「お気をつけて」

「ありがとな。しかし、余裕だな」


 高橋さん達はスポーツ飲料飲みながら休憩している俺達に少なからず呆れているらしい。


「五か月かけてやる耐久レースですからね」


 派手にダッシュしてこけた方がダメージはでかいはずだからな。


「それもそうか。じゃ、君らも頑張れよ」

「ありがとうございます。罠と水の残量に気を付けて」

「そうするよ」


 苦笑しながら高橋さん達は先に進んでいった。


「みんな頑張ってるみたいですよ?」


 山田君は高橋さん達のやる気にあてられたらしい。

 俺もそう思わないでもないから仕方がないと言えば仕方がない。


「行動時間を決めるのはやる気じゃなくて飲料水の残量だから。僕らが飲料水不足で遭難したら物笑いの種だよ」

「それはその通りですけどね」

「このレースは五か月かけてやるんだ。他のチームがスタートダッシュで走ってるからって俺達まで走る必要はないさ。兎と亀じゃないが堅実に行こう」


 走り出すのはコースの詳細が解ってからで十分だ。


「何か策でもあるんですか?」

「ないよ。最初は一番トラブルが起きやすい時期だから慎重に行動しただけで」


 山田君は何か思う所があるらしいが口には出すつもりはないらしい。


「何らかのトラブルが起きると思ってるんですか?」


 黙ってる山田君にかわって、吉田さんが訊いてくる。

 山田君と吉田さんも割と息の合ったいいコンビだ。


「トラブルが起きなければいいと思ってるけど、それはトラブルが起きても対処できる準備をしなくてもいい理由じゃないよね?」

「それはその通りですけど……」


 さてそろそろ歩き出すか。今日のノルマは十キロ以上残ってるんだし。


一か月後のキャラ


 名前  睦月

 種族  転移者(日本人)

 性別  男性

 年齢  15(修正後)

 体力 ( 5)

 知覚力( 5)

 魔力 ( 4)


 名前  弥生

 種族  転移者(日本人)

 性別  女性

 年齢  15(修正後)

 体力 ( 4)

 知覚力( 3)

 魔力 ( 4)


 名前  山田

 種族  転移者(日本人)

 性別  男性

 年齢  15(修正後)

 体力 ( 5)

 知覚力( 5)

 魔力 ( 4)


 名前  吉田

 種族  転移者(日本人)

 性別  女性

 年齢  15(修正後)

 体力 ( 4)

 知覚力( 4)

 魔力 ( 5)


読んでくれてありがとうございます。

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