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第十四話 とりあえず地下二階を探索します。

日間宇宙〔SF〕ランキングBEST100で3位になりました。(2017/03/19)

読んでくれた方、ブックマークしてくれた方、評価してくれた方、ありがとうございます。

 あの後四人で相談し、しばらくは地下二階を探索する事になった。

 大部分の人間が地下三階や地下四階に降りるのなら、人が少なくなった地下二階で蟻退治する方が効率がいいはずだ。

 そう思ったのは俺達だけではないようで、地下二階の通路で女の子二人組のパーティに出会う。

 二人とも黒髪セミロングで、外見はこーゆー迷宮に放りこまれない限りスライム一匹殺せそうにない大人しそうな子だ。


「こんにちは」

「こんにちは」


 女の子たちは俺達を見て襲われたり、ナンパされたりすることはないと判断したのだろう。

 そのまま地下二階の通路を歩いている。


「女の子二人だけで大丈夫なのか?」


 俺はちょっとした疑問を口にしたつもりだったが、山田君達はそうは取らなかったようだ。


「あの子たちはパーティに加える気ですか?」

「特にそーゆー気はないけど」


 正直、女の子二人を加えるとか面倒な予感しかしないので絶対に遠慮したい。

 弥生さんも吉田さんも面白くなさそうな目で俺を見てるし。


「あの子たちも好きで二人で行動してるのかもしれませんし」

「そーそー。邪魔しちゃ悪いでしょ」


 弥生さんも吉田さんも暗に反対している。


「それもそうだな」


 女の子の意見には同意しておかないと後で機嫌が悪くなるからな。


「そろそろレベルがあがりませんかね?」


 いいタイミングで山田君が話題を変えてくれる。山田君のこーゆー所は見習わないとな。


「普通なら初日に五レベルぐらい上がって、その辺のモンスターには負けなくなるはずなんだがな」


 初日から一週間以上迷宮に潜っているのにレベルが上がらないとか正直あり得ないだろう。如月ちゃん達の上司はもうちょっと仕事するべきだ。


「聞いてる、如月ちゃん?」

「聞いてますよ。ですから最初の迷宮はスライムとかジャイアント・アントとか普通の人なら倒せる奴しか配置されてないじゃないですか」


 言われてみればその通りだがレベルがあがらないとやる気もでない。

 能力値がきつい人に対するサポートもないし、運営はまじめに仕事しろと声を大にして言いたい。


「そのうちにレベルは上がるんだろうな?」

「上がる人もいれば、上がらない人もいるでしょう。はっきりした事は言えません」


 何とも投げやりな答えだが、如月ちゃんにもはっきり答えられないのだろう。

 おそらくは食事に混入されたナノマシンが体に定着し、個人に最適化された生体強化システムを構築するまでの時間に個人差がある。

 その期間を遊ばせておくわけにはいかないので、最初の迷宮で殺傷行為に対する忌避感の緩和などの基礎的な訓練を行っているはずだ。


「レベルが上がるまで能力値は上がらないのか?」

「そんなことはありません。身体能力の向上は能力値に反映されます」


 レベルが上がらない間は現実の身体能力の向上が能力値に反映されるだけらしい。

 全く成長しないよりはましだと思うしかない。


「つまり、筋トレすれば体力値は上がるわけだな」

「概ねその通りです」


 筋トレすれば必ず体力が上がるわけじゃないから如月ちゃんの言う通りなんだけど、なんか今一つ素直に信用しきれないところがあるんだよな。


「弥生さん、今日から寝る前に筋トレしようか」

「歩いてるだけじゃダメなんでしょうか?」


 弥生さんは筋トレが思いっきりイヤそうに尋ねる。

 筋トレに何かトラウマでもあるのだろうか?


「歩いてるだけじゃ足りないみたいだからね」

「はい……」


 あまりの落ち込み様に思わず、やっぱりやめとこうか、と言いそうになった。

 だが、筋トレを止めて困るのは弥生さんだからそーゆーわけにもいかない。


「弥生さんのやる気出すためにご褒美をあげたらいいんじゃない?」


 確かに吉田さんの言う通りだ。弥生のやる気を上げるためのご褒美は何が良いだろう?


「ご褒美は何が良いと思う?」


 食堂のメニューに甘い物があればいいんだけど、出来るとしても三週間ぐらい後だからな。


「ご褒美といえば、げへへへ」

「ナニですよね、ぐふふふ」


 弥生さんと吉田さんが奇天烈な悲鳴を上げて爆発する悪党のような事を言っているが、ツッコミは入れずに聞かなかった事にする。

 下手に突っ込むと、突っ込むのはそこじゃないです、とか言い出しかねない。


「そーいえば今晩はどこに泊まるんです?」

「久しぶりに野宿かな」


 この一週間は宿泊施設に泊まっていたから、野宿という言葉を聞いた弥生さんと吉田さんはあからさまに嫌な顔をしている。


「野宿ということは男女別ですか?」

「山田君達が一緒に野宿してくれるなら適当な場所を探すつもりだ」

「僕らは野宿はちょっと……」


 山田君達は野宿しない予定らしい。

 一週間続けてまともな宿泊施設に泊まれば野宿なんてできないよな。

 俺も出来れば野宿なんてしたくない。


「俺も出来れば野宿はしたくないが、今のうちに慣れておいた方が良いと思うぞ。最近の迷宮ってのは一週間ぐらい潜りっぱなしらしいからな」


 必要な飲料水や燃料の量を考えれば現実的な話ではないと思うが、聞くところによれば最近の冒険者は数日以上迷宮に潜っているらしい。

 俺はどちらかと言うと、極地法など冒険者の恥だ、という古い冒険者だが現実には逆らえない。


「どうする?」


 宿泊施設に泊まれば余計な出費があって、そのうち必要になるであろう野宿のノウハウが得られない。


「野宿も訓練だと思って諦めようよ、吉田さん」

「しかたないわね。でも、お風呂は譲れないわよ」

「お風呂が譲れないのは吉田さんだけじゃないって」


 俺だって風呂には出来るだけ入りたい。

 しかし、半年後には風呂に入りたいからと言って入れる環境ではなくなってしまうらしい。

 魔法でお湯が作れるようになれば多少は改善するだろうが、お風呂に入れるほどのお湯を作れるだろうか?

 一立方メートルの湯船に半分のお湯を入れるためには五百キログラムのお湯が必要になる。持って運んで使い捨てに出来る量ではない。

 収納容量を拡大するマジックアイテムやストレージが存在しても飲料水が優先だからな。

 ダンジョン内部で入浴に使える水があることを期待するしかない。


「今日はお風呂に入るんですよね」

「もちろんそのつもりだ」


 弥生さんも安心したらしい。

 まだ一か月目が終わってないんだから無茶な事はする必要がないだろう。

 ラストの一か月はちょっときついことになるかもしれないけど。


「如月ちゃん、なんで黙ってるの?」

「秘密です」


 どうやら如月ちゃんは俺達に言えない事をしていたらしい。

 マジで艦内ネットワークに実況してるんじゃないだろうな?


「超巨大迷宮のお風呂事情ってどうなってるんですか?」


 弥生さんが卯月ちゃんにお風呂事情を訊いている。


「火山がありませんから温泉はありませんけど、入浴は一般的な習慣な階層が多いですよ」


 温泉がない、だと……。急速にやる気が失せてきた……。


「貴方達を待っているのは、太陽系最大の迷宮で究極の秘宝を探す大冒険、ですよ。温泉がないぐらいは気にしないで下さい」


 如月ちゃんが面白そうな事を言い出した。言われてみればその通りだな。


「宇宙生成機って究極の秘宝なんですか?」


 弥生さんはそう思っていないのは明白だが……。


「もちろんその通りです。すべての恒星間文明の見果てぬ夢である超光速機関と同義ですから」


 そう言われると宇宙生成機ってのは銀河に住む全ての民が求めてやまぬ究極の秘宝だよな。不老不死は電脳化で何とかなるっぽいし。


「でも、私達にはあんまり有難みがないですよね」

「うん。どちらかというと神様が出てきて、どんな願いでも叶えてやろう、の方がありがたいよね」


 これだから女性は……、あれ……、いや、もしかして……。

 そうか、そういうことか。


「宇宙生成機を使っても神様は作れるぞ。願いは聴いてくれるかもしれん」


 どちらかというと神様を作ること自体が人の子の願いかもしれないがな。


「ホントに?」

「睦月さん?」

「人類の魂を素材にして、宇宙生成機で相転移させればアダム・カドモンをすっ飛ばして神が出来上がるからな」


 固体の氷にエネルギーを与えれば相転移して液体の水になる。

 液体の水にエネルギーを与えれば相転移して気体の水蒸気になる。

 同じように、神の分体である人の子の魂にエネルギーを与えれば、相転移して始まりの人であるアダム・カドモンの魂になる。

 始まりの人であるアダム・カドモンの魂にエネルギーを与えれば相転移して神となる。

 そのためにどれだけのエネルギーが必要かは見当もつかないが、無限のエネルギーが生成されれば足りないという事はないはずだ。

お疲れさまでした。

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