第81回フリーワンライ企画お人形みたいに
第81回フリーワンライ
使用お題
奪われても尚綺麗なままで
微睡む瞳に落ちる温もり
雨宿り
唇伝うは、甘い唾液
お人形みたい
俺の名前は思井束菜。
普通の高校生だと思う。
今俺は特に・・・(略)
あと一時間程で、雨が降ると言う。
本来なら植物にとって恵みの雨。だが・・・この時ばかしは違った。
降るのはただの雨ではなく酸性雨・・・
植物にとっては天敵である。
そんな中、よりそうように咲いた花と華があった。
花は比較的一般の思想をもってはいたが、華は自意識過剰な性格であった。
「私たち・・・次の雨で枯れてしまうのね・・・」
「おーっほっほっほ!!!ワタクシに酸性雨程度聞きませんわ!!安心なさい!!オーッホッホッホ!!」
「はぁ・・・」
・・・このような感じである。
いい意味で自信家。悪い意味でナルシストの華だったのだ。
「私・・・このまま死にたくないよぅ・・・」
花は、ちいさく呟いた。
そんな願いを聞いてなのか、ふたりの元に白い布に身を包んだ男が現れた。
「その願い、たしかに聞き届けた。お前たちに避難できるように手足を生やしてやろう」
・・・なにを言ってるんだろこの人?
と思った花。
相変わらず華は高笑いを上げている。
だが、次の瞬間驚くべきことが起きたのだ。
完璧までに人間の姿・・・とはならなかったものの、手足が生えたのだ。
「あそこに小さな屋根小屋がある。そこで1人は間違いなくたすかるであろう。・・・それでは、さらばじゃ」
言うなり男は消えてしまった。
「・・・え、ちょっとまってワタクシ手が生えてますのなにこれですの」
今頃になって華も驚いたようだ。
「はぁ・・・」
花はため息を付いてことの事情を説明する。
「な、なんですって!?それなら!ワタクシ早く逃げなくては!!」
説明を聞くなり屋根小屋に逃げ出そうとする華。
だが、あくまでも狭いスペースに二人は入れない。
花は思わず止めてしまう。
「な、なにをしますの!?」
「華だけいくなんてずるいよ!!説明も聞いてなかったくせに!!」
「そ、そんなの関係ありませんわ!!」
再び向かおうとする華。思わず花は手を出してしまう。
「このっ!!」
「っ!」
だが、簡単に華に止められた。
いともたやすく。
しかし華もすこしは考えた様で・・・
「わかりましたわ。それじゃ、公平にじゃんけんで決めましょう」
この際だから、なぜ植物たちなのにじゃんけんを知っているのか・・・
そういう説明は省かせていただく。
そういう、世界なのだ。
「わかった。それじゃあいくよ!?」
「「じゃーんけーんぽい!!」」
華はグーを、花はチョキをだした。
「おーっほっほっほ!!ワタクシの勝ちですわね!!」
「そ、そんなぁ・・・」
このように、正式に屋根小屋は華のものになった。
もう、酸性雨がくるまで時間がない。
花は怯えていた。
嫌だ。枯れたくない。嫌だよ。まだ、種も残していないのに・・・
花の考えもおおきくなっていく。
枯れたくない。生きたい。枯れたくない。
重く、強く。
生きるにはどうすればいい。屋根小屋。そう。屋根小屋だ。
そして、罪すらも感じられない考えに。
奪い・・・とってしまえば・・・!
そう考えた花は思い切った行動を起こした。
再び華に殴りかかったのだ。
だが、華はすぐに気づいた。
一度止められた花だ。
あっ・・・これは止められるな・・・
そう確信した。
だが、華は止めなかった。
おとなしく殴られた華は屋根小屋から追い出される。
花が屋根小屋に入ると同時に、魔法が解けた。
手足も生えず、瞳と花と口のみが残った。
「おーっほっほっほ!!やられてしまいましたわぁ!!さっすがは花!!」
奪われた華はそんなことを言った。
花は罵倒されるものだと思っていただけに、驚いてしまう。
「えっ・・・華・・・?なんで・・・今のとめられたじゃない・・・?」
「そうよね!!花はかよわい花!!だけどワタクシならば酸性雨ごとき大丈夫!!だから気にせずそこにいなさい!!おーっほっほほ!!」
明らかに強がり・・・そんな声で言っているのが分かる花。
それでも・・・それでも華は、たとえ場所が奪われようと、自分の命が奪われても綺麗なままでいようとした。
「は・・・華・・・!」
いきなり花の感情に襲いかかる後悔。
「わ・・・私・・・なんてことを・・・」
「おーっほっほほ!!心配なさらないで!!ワタクシは強いのよ!!大丈夫だわ!!オーッホッホッホ!!」
花が後悔の表情になるのを見て強がって言う華。
内心は、怖がっている。
ワタクシ、なんであの時とめなかったの!?なんで、花に譲ったの!?!?
枯れたくない。こわい。生きたい。あの場所に戻りたい。怖い。
・・・それでも・・・
「花が死んでしまうよりは何倍もこわくないですわー!!おっほっほっほ!!」
華が高らかに言うと、いよいよ酸性雨が降り出した。
「は、華!!華ぁぁァァァ!!!」
この時の華はやけに満足感を覚えていた。
正直、じゃんけんで勝ってしまって後悔していた。
それでも、最終的には花が生き残ってくれるのなら・・・
普段はあるはずのない微笑む瞳に落ちる酸性雨ですら、あたたかく感じた。
酸性雨が降り終わり、次の日。
花は涙を流し終えた。
華が譲ってくれたこの命。
・・・絶対に無駄にはしないから。
そんなことを考えていると華の元に蝶がやってきた。
華に口を差し出し蜜を吸う。
蝶は唇に伝う華の唾液を美味しそうに飲んでいた。
・・・そんな華はもう・・・
微笑んだお人形みたいに動かなかった。
「ねぇ作者さん!?!?このお話!!俺出る必要あった!?!?」
俺(思井束菜)は思わずつっこんでしまう。
(いやだってほら・・・三人称とか・・・書きにくいし・・・)
「じゃあなに!?俺がこの物語を読んでたの!?植物に雨宿りさせるなんて話聞いたことねえよ!!」
(今回お題むずかしかったんだって!!)
「しらねえよ!!」
・・・全く、これだけのために俺が呼び出されるなんて・・・
・・・。
「なぁ作者・・・」
(ん?)
「次回・・・俺出番あるかな・・・」
(・・・さぁ・・・)
俺たちの物語は!!まだまだ続く!!(多分!!)
(良かったらこれを読んでくださったみなさんもフリーワンライ挑戦してみてください!!きっと楽しいですよ!!)
(Twitterで検索かければでてくるとおもいます!!笑)