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冷たい男 解放

次の瞬間、重厚な扉が勢いよく開けられた。

入ってきた男はひどく冷たい目をしていた。


「ーー言わずとも分かっているな。」


その威圧感に、隣に座る男は「ひっ」と息を飲んだ。

エレナは思わず後ずさりをした。

男はそれを軽蔑するような眼差しで見たまま、後ろに控えていた騎士たちに命令を出した。

騎士たちは男を素早く拘束した。


「ま、まて、それは俺の...」


エレナは男から伸ばされた手を避けるように後ずさりした。

「お前がこの女を利用しようとしていたことは分かっている。あとはせいぜい牢の中から訴えることだな。」

ズルズルと引きずられていく男に冷たく言い放った。


そして部屋に入ってきた男は、エレナの方を向いた。

「あの男について話せ。」

間近でみた蒼く冷たい瞳に、エレナはゾゾッと体が震えた。

同時に、あの下品な男から逃れられたことに安堵した。


「あの男とはどういう関係だ。」

「け、結婚しろと言われて...」

エレナは恐怖からどうにか立ち直ろうと努力していた。


「あの男とはいつからの知り合いだ。」

「今日、初めて会いました。」

自分を奮い立たせ、男の質問に答えた。


「お前が相続するはずだった財産が次々と売り飛ばされているが、お前の意思か。」

「い、いえ、まさか!」

エレナは形見のほとんどが売り飛ばされていたことを知らなかった。

葬儀の後、ここに連れてこられてから一週間が経っていた。


「記録したか。」

「はい。」

男の後ろに控えていた部下が、エレナの言った言葉を書き留めていた。

「お前はこちらで保護をする。すぐに事態は収束をむかえるだろう。」

その言葉を聞いて、エレナはホッと息を吐いた。



保護するといって連れて行かれたのは、王城だった。

乗り込んだ馬車から、彼らが高い地位にあることが伺えた。


「あの男の父には詐欺罪の疑いがかけられていたのです。そこに、あなたが相続放棄するとかかれた文章により、屋敷の物を売りさばいていると報告があり、調査に踏み込んだのです。

芋づる式に、あの男からあなたの親族の不正まで暴かれ、一斉に逮捕されました。」


男の部下がエレナの説明にあたっていた。

執務室にいた部下たちが、エレナを哀れむような目で見た。


男だけはこちらを向かなかった。


「あなたもあの家の家財の一つとて見られていたのでしょう。あの男とあなたの叔父で金銭の取引がされていたことが分かっています。」


エレナはめまいがした。


聞けば聞くほどひどい話だった。

親族たちは、エレナのことを人としてさえ見ていなかったのだ。

あれだけ大勢いた親族が、丸ごと逮捕されてしまい、エレナはまたひとりぼっちに戻ったのだった。




助け出してくれた男は、宰相であったらしい。

エレナは、男の部下からの話で推測した。


エレナの記憶では、宰相は王の補佐であって、こんな下級貴族の罪ごときに関わることのない役職だと思っていた。

その予想も一部当たっていたのか、それ以降彼はエレナの前に姿を現さなかった。

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