めでたしめでたし
「ーー、エレナ!」
声が聞こえ、エレナはゆっくりと目を開けた。
「大丈夫なの?」
「リラさん....」
エレナは知った顔にホッとした。
「あの、フィルディア様は?」
「あー、あいつは....」
リラは、エレナの知り合いはリラしかいない、と無理矢理押し付けていったフィルディアを思い出した。
エレナは目に見えて落ち込んだ。
「な、なあに、どうしたの?」
「わ、私、醜いんです...」
リラはきょとんとした。
「え?なにが?」
「顔です...フィルディア様が、み、見るに絶えないって...きっと、私のことが嫌いなんです。だから噛みついてーー」
エレナはさめざめと泣いた。
「...え?フィルディアと寝たんでしょ?」
「ね、....フィルディア様はお優しいから...きっと本能的に私のことが嫌なんです。」
(え?なんなのこの二人。なんでこんな、ややこしい...)
リラは思いが重なっていたはずの二人に首を傾げた。
「エレナ....まあいいわ。私からは何も言えないけど、ちゃんと本人から聞きなさい。」
リラは腰を上げた。
リラしかいないと思っていた部屋に、フィルディアがいた。
フィルディアはエレナが起きたと聞いて、思わず駆けつけたのだった。
「フィル、ディア様...」
「私は、エレナにそんな風に思わせていたのか....」
「ふぃ、フィルディア様は!...お優しいです。だから、私に優しくして下さったんですよね?ーーでも、分かってるんです。本当は嫌なのを噛みついて我慢してる、って....」
ごめんなさい、とエレナは小さく呟いた。
「優しい?私が...?そんなわけないだろう。エレナを触ったあの男たちを、どう甚振ろうか考えた。
伝達が私を呼びに来なければ、惨いやり方で殺していただろう。
....エレナが攫われたと聞いて、思わず姿を変えて飛んでしまうくらい、心配した。
...お前は私の大切な妻だ....」
フィルディアはエレナを抱きしめた。
エレナも妻として大切にされていることには気づいていた。
しかし、男たちに言われたことを忘れられなかったのだ。
「じゃあ、じゃあ...どうして噛むんですか?」
「それは....」
一度黙り込んだフィルディアも、
エレナの涙に口を開いた。
「...あれは、ドラゴンの習性だ。ーー愛するが故噛み付いて、自分のものだと印をつける。」
フィルディアは恥ずかしかったのかそっぽを向いた。
「あ、愛するーー?」
エレナは驚いた。
「ーーああ。....昨日言っただろう?」
「お、覚えてないです...」
精一杯だったエレナは、夜中に会話したことなど忘れていた。
(フィルディア様が....私を?)
エレナの目から涙が止まった。
「も、もう一回言ってください。」
「ーーエレナ、愛している...」
エレナもフィルディアを抱きしめ返した。




