同じ部屋
フィルディアが帰ってきたことにより、屋敷にも活気が戻った。
エレナは少し浮き足立ったまま、自室へと歩いていた。
(まだ信じられないわ...
ずっと焦がれていた相手が、自分のことをあんな大切におもっていてくれたなんて...)
エレナは頬を染めた。
「あら、エレナ様。」
満面の笑みを浮かべる使用人に、エレナはフィルディアと心が通ったことが知られていたことを察した。
昨日は同じ部屋で寝たのだ。
(そう思われても仕方がないわね...)
エレナはもっと頬を赤らめた。
「どうかなさいました?」
たくさんの使用人が、私室に出入りをしている。
よく見れば、エレナの物を運び出していた。
(大掃除?かしら?)
不躾なものが屋敷に侵入したことで、使用人は朝から玄関付近をピカピカになるまで掃除していた。
「旦那様が荷物を移動するようにと。」
ちょうど、枕を運び出していた使用人が、にっこり笑って答えた。
「ど、どこへ!?」
エレナは部屋を追い出されたのかと、驚いた。
昨日のことは夢だったのか、とまで思う始末だ。
「私の部屋にだ。」
「ふぃ、フィルディア様!」
いつの間にか、エレナの背後にフィルディアが立っていた。
「ど、どうなさったのですか?こんな早くに....」
ほとんど毎日夜中に帰ってきていたフィルディアが、今日はエレナが寝る前に帰ってきた。
「よいだろう。昨日わざわざ私の部屋に来たくらいなのだ。」
フィルディアは部屋の移動についてだけ答えた。
ーーまさか、フィルディアも昨日のことが夢だったのではないか、と不安になったとは言えまい。
そして、リラに、「まだ手も繋げてないんでしょ?」なんてバカにされたとも言えるはずがなかった。
エレナはわざわざ皆の前で暴露されて、顔が真っ赤になった。
(こ、こんなときに言わないで...!)
あれは、あの時の勢いがあったからこそ、できたことなのだ。
「夜に部屋から出歩かれては困る。」
淡々と、いつもの無表情で言ったフィルディアだったが、理由は別のところにもあった。
(また国王に部屋に入られては困る...)
リアとエレナが二人きりになるのを、阻止するためだった。
「も、もうあんなこと、しませんわ!」
エレナは羞恥でプルプル震えながら言った。
「なんだ、私の部屋に移るのが嫌なのか?エレナ。」
名前を呼ばれてしまった、エレナの完敗だった。
更新遅くなってしまって、申し訳ありません!
エレナとフィルディアの心がなんだか通じ合ったので、「あ、ひと段落ついた...」という気持ちに...
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