少女とお汁粉
1月10日
木には葉もなく、雪で白い高原が広がっている。
やろうと思えばスキーも出来る程に積もっているが、寒さが嫌いな僕には迷惑でしかなく、雪かきの仕事をしなくてはいけないという苛立ちが募っていく。
そして、何よりも辛いのが布団の中から出る瞬間である。
布団の中に籠ってる暖かい空気の中から出た瞬間にくる寒さは本当に苦手なのだ。
しかし、そろそろ出ないと学校に遅刻してしまう......
さてと、ここは一気にいこうか。
身体全体に力を入れて、少しでも震えがこないようにする。そして、用意が出来た途端
『バサっ!』
勢いよく布団をめくり、また布団に入るのを拒む為にそのままベッドから立ち上がり、布団を畳む。
よし、今日の朝も寒さに勝った......
身体に力を入れたまま、余韻に浸る。
「......へっくしょん」
余韻に浸っていたのに、ここにきて寒さが染みてきた......
「あー、寒いなもう」
鼻を啜りながら独り言を呟く。
こうやって、文句を言わなくてはやっていけない程、寒さが苦手な僕は起きて早々に、寝巻きを畳みベッドの上に置き、ベッドの横の物掛けから学ランを取り着替える。
寝癖がたたない髪質に、こういう時は感謝してしまう。
学ランを着終え、マフラーを身に付ける。
朝食は食べる時間はない。
なら、もう行くか。
頭の中で軽く考え終え、カバンを手に取り自分の部屋に鍵を掛け、そのまま家の外に出る。
そして、アパート住みなために、念のために鍵を2つ掛けて、外に出た。
外はいつもどおりの雪景色で、1階付近はベランダの少し下に迫る程積もっている。
ここのアパートの住民が雪かきをしているおかげで1階のベランダも二階以上と同じように使えるが、住民がサボってしまうと、ここと駐車場が使えなくなってしまう程に僕の住む場所は雪が降り積もる。
ただし、今日のように晴れていると、雪かきはやらなくて済むので、今日はラッキー日和だ。
ナイスお天道様!
てか、本当に学校間に合わない気がしてきたな......
はぁ、体力ないけど走るか......
ため息を実際にもらし、学校まで走る事を決めて、走り出した。
──後少しで学校だ。
疲れた......
体力ない割に頑張っただろ僕。
遅刻まで、残り10分か。
やっぱり走らなくてもよかったんじゃね?
学校の近くの公園の柱に寄りかかりながら軽い後悔をしつつ、息を整える。
とりあえず、朝食食べてなかったし汁粉でも買って、代わりとする時間くらいはあるし、体調に気を使うという心掛け(今決めた)に従って飲むか。
あれ?こういうときって飲むが正解なのか、食べるが正確なのか分かんないな。
......考えるな、早く買え!
無理やり考え事を払拭し、自動販売機の前に立ち、お汁粉を買う分のお金を入れて、お汁粉のボタンを押す。
......ていうか、気のせいか分からないけど、いつの間にか僕の横に同い年ぐらいの少女がお汁粉を買った途端にじーっと見てる気がするんだけど......
この場合は、普通に自動販売機から離れるのが正解だよね?
うん、そうだ。
きっとそうだ!
見られてる感じがしつつも、静かにその場から離れる。
とりあえず、歩いても間に合うし歩き飲みしながら行こう。
『ガン―――ッ』
......へ?
公園の中ではまず聞こえることのない大きな音が後ろから響き、僕はさっと振り向く。
『ゴンゴンゴンゴン!!!』
振り向くと同時に、さっきの少女が自販機を連続で正拳を加え、大きな音を響かせていた。
「......えっと?なんだあの子?」
驚きで声が出なくなり、その場に立ち尽くす。
そして、動き出せるようになったのはその子が大きめの石を持ち、それを投げ付けようと構えたところだった。
「ちょっとストップ!!」
走りながら大きめの声を掛ける。
そして、そのままその子から石を取り上げ遠くへ投げる。
「何してんの!?壊れるし、警察に捕まったらどうするの!?」
肩を掴み、息を整えながら意思を聞こうとする。
しかし、少女は驚きのせいか、口をパクパクさせて戸惑ってしまった。
流石に声を掛けるときに気を遣わなすぎたな。
少女の反応を見る限り少し反省しなくてはいけないと思う。
「――だってぇ、うぅ〜」
反省をしているところにビクビクしながら少女が震え声のような話し方で自販機を指さす。
「だって?」
話が止まった少女に続きを促す。
「だって、お汁粉飲みたいのに何も出ないんだもん」
恥ずかしそうに僕から目を逸らし、訳の分からないことを言う。
いや、言葉の意味は分かるよ?
でもね、普通こんな答え返ってこないと思うんだよね!
いや、ちょっと待てよ?
もしもだけど小銭が無くてお札も一万円札しかないとしたら買えないよな?
納得しろ僕!現実的に自販機を使えない人がいてたまるか!
そう考えるとすれば、この子にお汁粉さえ買ってあげれば自分も納得するよな。
お金は無くなるけど意味不明な言動で頭の中をこんがらがったままにはしておきたくないし我慢しよう。
無理矢理自分を納得させ、右ポケットから財布を取り出し、五百円玉を取り出し自販機の中に入れる。
「ほら、好きなの選びなよ」
自動販売機を指さしながら声を掛ける。
少女は迷わずお汁粉のボタンを押し、出てきたそれをすぐに開け、ズズズーと飲み始めた。
それにしても、そんなに飲みたかったのか。
気付くと僕はすごい幸せそうな表情で飲んでいる少女にしばらく見とれていた。
冷静になるまで少女の見た目を気にしなかったけど、肩より下まで伸びる綺麗な黒髪。
身長は僕がさっき近くで型を揺さぶったときに確認出来たけど155cmといったところか。
なんか、ジロジロ見てる僕って変態みたいだな。
......あ、学校ヤバイ!
「君!僕は学校行くからね!」
「え?あっ」
何か言いたそうにしていたが、僕は余裕もなく走り出した。
ちなみに思い出して走った時には遅刻が確定していたのだが。
久々に書いてみました。
不定期更新です。全然書けません。
それでも書いてみます!
よろしくお願いします!