スイートホーム
月を見上げる
いつかこの体が朽ちたら
魂はあそこに帰るような気がした
死んでしまえば
それでしまいだと
じいさんが言っていた
僕もそう思う
ただ月を見るたびに
心がざわめく
帰りたいと泣く長い髪の女の後姿
月を見上げるたびに思い浮かぶイメージ
こんな感情は誰にでもあるんだろうか
じいさんにもあったんだろうか
しまいだと言っていたけれど
死に際にふっと笑ったのを思い出す
魂があるのか
ないのかわからないけれど
この心が帰りたがっている場所がある
じいさんの心は最後の最期で
その場所がみえたのだろうか
だとしたら
それはきっと幸せなことなのだろう