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緩く繋がる同じせかい

乙女ゲーム的世界に喚ばれた弟を迎えに行きます

作者: CHIROLU

前作短編の設定裏話でもあるのですが。読まなくとも平気だと思われます。

気になったら読んでみて下さいね。

ゆるーく読んで、少しながらも楽しんで頂けたらと思います。

 双子の弟が行方不明になった時、事件性よりも何よりも先に、異世界に召喚されたのだという発想に至ったのは、我が家の特殊性によるものだ。


 元をただせば曾祖父が発端らしい。


 いわゆる神隠しにあった曾祖父は、気が付いたら異世界にいたらしい。そこでまぁ何やかんやで世界を救い、チートと曾祖母を土産に帰還して来たとのことだ。

 そう、ウチの曾祖母は異世界人であり、召喚を司る祭司であったらしい。それが元でウチの一族は、代々男は喚ばれる因果を、女は喚ぶ因果を持っているのだという。まぁ、とはいえ全員がそうなるというわけではない。だが、よくある話だと言える位にはウチの親戚間では珍しくも無い出来事だ。

 だから、弟もまた何処かに喚ばれてしまったのだろうという推測に至った。とはいえ喚ばれる『世界』というものは一定ではない。従兄が以前喚ばれたのは、格闘漫画も真っ青なガチバトルな世界だというし、祖父はコンピューターRPGになんとも言えない懐かしそうな表情をしていた。勇者ではなく支援職だったそうだが。

 話が逸れた。行方不明の弟だが、やはり心配ではある。向こうの『世界』の法則によっては還れなくなっているのかもしれないという心配を母は訴えた。無責任この上無い話だが、喚ぶだけ喚んでおいて帰還に責任を持たない『世界』も無ではないのだという。

 母は曾祖母から召喚に関わるノウハウを受け継いでいた。

 弟が召喚されたのであろう『異世界』との道を開く事は出来るらしい。だが、一抹の不安があるとの事で、弟との因縁が最も深い者。つまりは一卵性の双子の兄である俺を媒体にした。

 端的に言えば、命綱付きで俺が迎えに行った。という感じだ。


 何だか弟はキラキラした『世界』にいた。


 双子の弟を美形だとか褒めるのは、ナルシストじみてて嫌なのだが。内面の自堕落さを表出したように常に眠そうな顔の外見にも無頓着な俺と、我が弟ながら真っ直ぐな気性で清潔感溢れる好青年とでは元が同じでも大分差がある。ビフォーアフター的な差がある。

 だから、キラキラしたこの世界の空気に弟は馴染んでいた。

 ……俺が喚ばれなかった理由が解るな。俺じゃ絶対馴染めない。

 この世界の衣装なのだろう、ファンタジー感溢れるヒラヒラした服も何か着こなしてる。とりあえず一枚携帯で写真を撮った。

 弟の隣には同じ年頃の少女がいた。

 何処かで見たような気がするな……弟のクラスメートじゃなかったか? 一緒に喚ばれるパターンか? ふーん……しばらく現状把握に努めるか。あいつ、元気そうではあるし。それにしてもここ……庭か? やたら花盛りだけど季節は何時なんだかなぁ。まぁ四季があるかも定かじゃないか、異世界だもんな。

 ずいぶん熱心に口説いているなー……あいつ、そんな饒舌だったっけ? あー……女の子の方がこの『世界』の救世主な訳ね。あいつは護衛的な立ち位置か。「俺が護りきるから、一緒に元の世界に還ろう」って……弟の熱さに反して女の子の反応薄いなー……それにしても、本当にあいつどーした? 立て板に水とばかりにスラスラと出てくるのは、こっぱずかしい台詞の数々だぞ?

 ……とりあえず動画撮っとくか。母さん心配してたし。

 ん? 何か色とりどりな面子がこっちに来るなー……頭の色とか目の色すげぇな。あーいうあり得ないカラフルな様子見ると、異世界感半端ねぇな。……それにしても美形ばっかだ。全部男っぽいけど。……お前、こんな奴等の中紛れてもやっていけるってすげぇなぁ。本当に俺じゃなくて良かったよ。無理無理。世界を救う前に俺の心が折れる。


 おー……修羅場ってる。

 明らかカラフル集団に敵意丸出しの弟だけど、良いのか? その子護るってんなら、同じ役割らしいカラフルさん達周囲との連携大切だろうに。その子どーでもいーけど、俺としてはお前の無事が心配だかんな。自分の生存率上げてくれよ。

 女の子一人に美形が何人も、かぁ……「私は大丈夫だから、皆仲良くして!」ねぇ。口調は殊勝だけど、口元弛んでるよ。取り合われる自分に酔ってんのか?

 ……確かに可愛い娘だけど、なんでこんなに美形どもが夢中になるかねぇ? あー、あれか吊り橋効果って奴か。非常時だから自分の事が冷静に見れないんだろうなぁー


 険悪な空気だなぁ……血ぃ見る前にちょっとあいつの頭冷やしとくか。

 よぉ、元気そーだな!

 なんでこんなとこにって、それはウチの企業秘密だろう? あー。ウチの弟がお世話になってます。……勝手に喚んでおいて無理難題押し付けているつう事には触れないでいてやるのが様式美って奴だ。

 母さん心配してたぞー。これ持ってけって。醤油とお守り。見た目は近所の神社の家内安全だけど母さんの特製だぞ? うん、そういうことだ。いざとなったらこれ使って還ってこいってっさ。

 あー、そうそう。お前がこんな情熱的だったなんてお兄ちゃん知らなかったよー

 おー真っ赤だ。何時からいたのかって? それはお前が壁ドンって奴でその子に迫った時から……始めからずっと見てたのかって……知らねぇよ。着いたのがそのタイミングだったんだからさ。でも、あの時のお前……やべ。堪えきれずに吹いちまった。

 悪い悪い。怒るなって。だけどお前自分で言ってて恥ずかしくなかったのか? ん? 何愕然とした顔してんの? あー、なる。そういう意識なかった訳ね。舞台の上とか祭りの時とかみたいな非日常感に飲まれていたって事だな。……悪い。でも無理だって、腹筋限界だって!

 あー、笑った笑った。じゃ、俺還るから。え? だってお前その子護りきる役目あるんだろ。……また、吹きそう。ん、ごめん。そんな顔すんなって! 頑張れよ、本当に無理だけはすんなよ?

 そーだ。母さんだけじゃなくて、親父も何も言わないけど心配してたから、写真一枚撮っていくな。あ、皆さんもよろしければ是非。

 それじゃーいちたすいちはーにー

 んじゃーなー。無事に還って来いよ?


 後日。無事に弟は還ってきた。

 女の子の方はあっちに残るって言い張ったらしい。あのモテ期は人生最高峰だろう。それを捨てて『日常』に戻る事が出来なかったのだろうな。自分の欲望に素直なのも一つの生き方だ。

 まぁ、あちらの親御さんには同情するが、ウチとしては弟が還って来ただけで御の字だ。ウチの一族だって万能じゃあない。同族の居る『異世界』ならなんとか繋げられても、赤の他人の元にまで帰還の目処はつけてやれない。薄情だと言われても、そう言うものだ。

 ああ。親戚で集まった時に、例の写真披露したら弟にすげぇ拗ねられた。

 動画は弟がまだ『向こう』にいる間に親に披露したんだが、存在を知った弟に本気で泣かれた。

 これが黒歴史って言うんだな。

 ま。俺だって本気で心配してたんだからな。

 このくらい仕方ないだろ?


 でも、本当に俺じゃなくて良かった。


 

とりあえず兄貴が酷い。

この兄は将来、従兄の息子の担任教師になります。

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