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Heart State  作者: 鈴羅
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遠い日の記憶

 目覚ましのベルが鳴り、それを止めて起きる。こんな生活は、人間だった時も死神になった時も変わる事のない日常の一つだ。しかし、着る服は黒服一枚のみだがどうやらこれにも種類があるようで私はこれまで着ていた人間界の服装の上に全身を隠せる程の大きさの外套を羽織ることにした。


 隊長さん直々の許可により、単独での任務が可能になったのだが新米の私にとってどのように進めていけば分からない。なので、それらについてはここの先輩たちに聞くことにした。


 部屋を出て向かう先は、ビルの一番下にあるレストランだった。ここには、以前から来ていたが仕事をしている時間帯に来ていた為ルシファーさん以外の死神を見ることが少なかったが、今の時間帯は各々が食事を摂る為にここにいた。

 私がそこに着くや否や全員とはいかないが、そこにいる半数がこちらを振り返った。おそらくは、「転生者」だからという理由からだろう。しかし、その視線もすぐに外れそれに伴い前から近づいてきた一人の死神に声を掛けられた。

 「君が、新人さんのリンだね?」

 「はい、そうです。…失礼ですけど、あなたは?」

 「イクスだ。立場的には、副隊長みたいな役割をしている。つまりは、隊長さんの手伝い係さ。」

 困ったような顔をしながらも楽しげに話していた。彼の腰を見ると、戦国武将が使うような太刀を携えていた。

 「副隊長は…」

 「イクス」

 「はい?」

 「俺の事は、イクスで構わない。」

 「分かりました。では、イクスさん。それって、刀…ですか?」

 「そうだよ。かっこいいだろう。」

 私は、腰に携えている刀に指を指しながら質問し彼は携えていた刀を鞘から出しその刀を見せてくれた。

 「すいません、私…刀の事は…」

 「現代人は、昔と違って刀より銃の方が人気と聞くし…まぁ当然か。」

 少しの間、がっかりしたような仕草を見せたがそれはすぐに消え最後には苦笑いを残した。それと同時に、彼は片手に魔法陣のような紋様を浮かび上がらせるとそこから銃火気を取り出した。

 「それは…?」

 「これは、俺のもう一人の相方で遠距離射撃を得意とする『初井』と言う。」

 「お初にお目にかかります。軍用対物狙撃銃『バレットM82A1』でイクス様には『初井はつい』という名前で呼ばれています。」

 といつの間にか彼の隣に立っていた女性が自分の事を紹介していた。

 「君のは?」

 「私のは、『リム』っていう二丁拳銃でそれぞれに『エム』と『レイ』という名前です。」

 名前を呼ぶと、彼女らは私の右隣と左隣に現れると二人は私の前に立っている彼ら二人に挨拶をした。

 「なるほど、変わったタイプだね。二つの拳銃を持ちながらそれらを統制する一つの名前があるとはね。おそらく自分でも疑問を持っているかもしれないが、他人がどうこうできるレベルではない。言えるとしたら、もっと自分の過去を見つめなおしてみるといいよ。それだけのことで変わってしまうのも人の心だからさ。…君が良ければ、話を聞くが…」

 「そうですね。イクスさんとは初対面ですし、自己紹介ついでに話してみるのもいいですね。」


 そういうと、私はそれぞれのパートナーを再び自分に戻した後、ここに来た本来の目的であった朝食を摂りながら話すという事になったのでそれぞれ注文した後窓側の落ち着ける場所へ向かった。


 「さて、ここなら落ち着いて話せそうだね。注文した食事も直に来るだろうが、良ければ話してほしい」

 「そうですね。これまでのことですから、結構長くなりますが…」

 「構わないさ。俺は、今日は仕事はないから。」

 と言いつつも、死神の全員が持っているスマホを取り出し何やら操作し始めた。おそらく、今日受けるはずだった仕事をキャンセルしているのだろうと私は思った。

 「本当に大丈夫ですか?」

 「問題ない。今は、仕事より君の過去について知りたい。」

 「ちょっと、恥ずかしいですが…分かりました。…それでは、私の兄がまだ生きていたところから話しましょうか…。」


 《過去》

  ・

  ・

  ・

 『九条真希』…それが私の名前。『九条紫苑』…これが私より3つ上の兄。それに加えて私には、お父さんとお母さんがいて日本では割と普通の家にいる家族の一つだった。私の記憶の中で一番古く…そして印象に残っているのは最後に兄と一緒に遊んだ時のものだった。

 兄がいなくなったその日、小学校の夏休みに入っていたから暇そうにしていた私を公園に連れて行ってくれた。私も兄も動くことが好きだったから、多目的に使えるビニールで作られたボールを持って行って遊ぶことにした。

 その日は、いつも子供たちでいっぱいだった公園にはあまり人がいなくてほとんど私たち兄妹の貸切だったから広々と使うことができた。私たちはそこで遊び倒し、疲れるまで遊んでいた。そろそろ終わりにしようとした時、兄が私にパスしたボールを私が取り切れずに公園の外の方へ転がって行ってしまった。


 「あっ。」

 「真希、そこで休んでて。僕が取りに行ってくるから…。」

 「ううん、いいの。お兄ちゃんはそこで休んでて」

 お兄ちゃんは、「分かった」と頷きすぐ近くのベンチに座るのを見届けてから私はボールが転がって行った方へと走り出した。


 ボールは、道路の真ん中で止まっていて周りを見渡すと車も自転車もバイクの姿が見えなかったから信号が青になるのを待たずにボールがある道路の中へと足を踏み出した。ボールは、無事に回収でき公園に戻ろうとした時だった。「キイイィ」というドリフト音が聞こえたかと思うと前面真っ黒の車がこちらに向かってもうスピードで突っ込んできてその後ろからはパトカーも黒塗りの車を追いかける為にこちらも猛スピードで迫ってきた。私がそれに気づいたのは早いものだったが、何故かそこから動けなかった。今思うと、恐怖でそこから動けなかったのだろう。そりゃ、初めての経験で鉄の塊が猛スピードでこちらにやってくるのだから「恐怖」を覚えないのはとても不思議と言えるだろう。近づきつつあった車は、私の目と鼻の先にあってなにも考えられずにいた私の前に気が付くと兄の姿があって私を助けてくれた。


 次に、兄の姿を見た時には全身が真っ赤に染まっていて、黒塗りの車とパトカーは公園のすぐそばに停車していた。そして、遠くの方から救急車とパトカーの両方のサイレンの音が聞こえていたと思ったが、ショックが大きかったのか自身の心臓の音と息遣いと兄の息遣いの音しか聞こえなくなっていた。すると、兄が少し口を開いた気がしたので耳を近づけてその声を聞こうとした。

 「真希…か、無事で……よか…った。」

 途切れ途切れに話していたがその言葉はなんとかしてその全てを聞き取ることができた…気がする。

 「うん、無事だよ。お兄ちゃんは?」

 「僕も…無事だ…よ?だから、ほら…泣かないで…」

 気が付いていなかった…、涙を流していたなんて…。でも、泣かない。お兄ちゃんの頼みだもの。だから、私は流した涙を拭き取り兄の姿を見る。

 「うん、それで…いい。真希は、泣く…よりも笑っていた方が可愛い。」

 笑顔でそう言われた私は、素直に頬を赤らめてしまった。しかし、恥ずかしいというよりは褒められた感じがしてとても嬉しかったのを覚えている。

 兄と二人で話していると、救助隊の人が来て兄を病院で治療したいから君も同伴してほしいと言われその人たちと兄と一緒に救急車に乗って病院へと向かった。


 そこからは、時間の流れがとてもゆっくりと流れていた気がした。その理由は簡単だ、兄が手術中と書かれたランプが赤く点灯している部屋の中に連れ込まれてその外の待合室で待っていたからだ。ここに来た時は、時計が午後4時を指していたが今やその時計は夜の7時を指していた。あれから、三時間経ったのに兄はまだ部屋の中にいた。両親もまだここに来ていない。だから、私はここに一人で待っていた。通りすがる看護師の人はここを通る度に慰めの言葉をかけてくれる。他にも寒く無いようにとタオルケットや飲み物などを差し入れしてくれる人もいた。その為、言葉は悪いがあまり退屈せずに兄を待って入れることができた。


 結局、兄の治療は4時間にも渡った。しかし、その命は助からないとも言われ私は落ち込んだ。一人のお医者さんが近寄ってきてこう言った。

 「今、お兄さんと話をすることができるから話してきなさい。」

 そう言われた。私は、看護師の人と一緒に兄が寝ている部屋へと向かった。


 その部屋には、兄がいてその兄の身体からはいろんなコードが姿を見せていた。すると、兄が私に気付いたのか口につけていたマスクを外し、寝ている状態から身体が座れるようにベッドを傾けた。

 「やぁ、真希。久しぶり、そしてお待たせ。」

 いつも通りの兄だった。でも、その身体にはいくつもの包帯が巻かれていて見た目からはとても痛々しいもので、兄が死んだ後に聞いたのだが妹である私といつも通りに話すために何本もの痛み止めを注射したという。しかし、その時の幼かった私はそんなことは分からずに…

 「お兄ちゃん、本当に大丈夫?」

 「もっちろん、全然大丈夫だよ。」

 と兄は、力こぶを作るように右手を挙げて見せた。

 「それよりも真希に大事な話があるんだ。」

 「えっ、それって私の事好きなの、お兄ちゃん?」

 「えっ、まぁそうなんだけど…、そういった話じゃなくてね。いいかい、よく聞くんだよ。お兄ちゃんが死んだら、真希はお兄ちゃんの事は忘れる。」

 「えっ、ヤダよ。私はお兄ちゃんの事絶対に忘れない!絶対だもん…!」

 兄の事を忘れてしまうとその兄自身から聞いた私は泣きじゃくってしまって、その私の頭を兄は優しく撫でてくれた。…それと同時に眠くもなってきた。

 「そんなに泣くなって…。いずれ、僕と会えるその時まで忘れるだけだからさ。その方が、いつまでも悲しい想いをしなくていい。むしろ、お兄ちゃんがそう願うんだ。許して…な。」

 そう呟くのを聞くと、私の目の前から兄が消え………………………………世界も消えた。


 気が付くと、そこは病院の病室だった。そこには、どこにも繋がれていないコードがあって、確かにそこには誰か寝ていた形跡もあった。けど、そこには誰もいなかった。私は、病因には何も用事がなかったので家に帰ることにした。

 家に帰ると、両親が迎えてくれた。


 今日は、変な一日だった。両親も友達もいないのに、一人公園で遊んでいた。でも、一人じゃなかった気もする。

 「誰だったかな~?」

 幼い身でありながら、あたかも格好つけるようにベッドで仰向けになり静かに天井を見ながら考えていた…。


 《現在》

  ・

  ・

  ・

 「へぇ、君にそんな過去がね~。…でも、その話は少し疑問が残るね。」

 「えっ?」

 「だって、君は昔お兄さんが死んだときにお兄さんの存在自体を忘れていたわけだろ?そして、そのお兄さんを思い出すためにはお兄さんに逢わないと思いださないわけだろ?なのに、この話をしたということは既に思い出している。…つまりだ――――」

 そこで私は、これまで話した内容を振り返ってみた。すると、自分の言葉の中に矛盾が生まれたのだ。確かに、私は兄に記憶をなんらかの方法で封じられた。それなのに、今は兄に関する記憶を全て思い出している。…ということは――――

 「私は、兄と逢っている――――!?」

 「そういうことになる。」

 どこで?いや、いつ私は兄に出会ったのだろう?もしかしたら、幽霊になったときにでもすれ違ったのかもしれないし…もしかしたら、この世界にいるのかもしれない。もしかしたら―――

 「考え出すと止まらないや…」

 「この世界のことは聞いたろ?功績を上げれば、特権がいろいろと生まれてくる。その中に、天国や地獄に顔パスで行ける権利が含まれる。俺やルシファー、隊長のようになればいずれお兄さんに逢えるだろうよ。」

 「だから、私はあなたたちがいるところを目指す。そのために協力してくださいイクスさん。」

 「は…?」

 「私が仕事に慣れるまで一緒に来てくれませんか?」

 「俺でいいのか?」

 「イクスさんがいいんですよ。」

 「ふっ。女性にそんな顔で頼まれると告白されてるみたいだな」

 どうやら、私の顔は昔ドラマで見たように頬を赤らめながら言っていたようだ。彼にそんなことを言われて気づいた私は急に恥ずかしくなり顔を隠してしまった。

 「…それでっ!イクスさん協力してくれますか?」

 「もちろん、むしろ断る理由が見当たらないよ。」

 「では、よろしくお願いします。…ちなみに、イクスさんは―――」

 彼に出身――人間からの転生か元々死神だったか――を聞く前に答えが返ってきた。

 「俺は、元々死神だよ。むしろ、剣と銃の全く性質の違う二つを使用するのは純粋種しか見たことはないんだよ。」

 「そうなんですか!?でも、可能なんですよね?」

 「あぁ、可能だ。純粋な死神は、転生者と違って実戦経験を積んでるからその度に身体も心も自ずと鍛えられその性質は良い方向か悪い方向のどちらかに進むことになるのはまず間違いないだろう。結果的に、俺もその他の上位者たちのほとんどが二つかそれ以上の性質を持っている。」

 「じゃあ、頑張らくっちゃ…ですね。」

 私は、両手で握りこぶしを作り肘を曲げ自分の方に曲げて見せた。

 「それじゃ、君が仕事に慣れるまでよろしく頼むな。まぁ、とりあえず飯を食おう。朝食にするはずだった物がもうそろそろ昼食を通り越して夕飯になりそうだな。」

 そう言われて、私は窓の外を見た…が外の景色は変わっていなかった。―――当然だ。この世界には朝も昼も夜も関係なく同じ景色がそこにあるのだから…なので、自身の形態を取り出し時間を確認すると、確かに既に夜の時刻を示していた。

 「うっわ~、ほんとだ~。どれだけ話してたんですかね、私たち…。」

 お互いに苦笑いを交わした後、目の前に置かれた既に冷め切ってしまった朝食を食べることにした。そして、食べ終わった後に今度は夕飯を頼みそれぞれの武器についてのまとめや過去についてをこれまで話をした内容を見つめなおしていた。


 私―リン―は、ブローバック型の拳銃『ベレッタ』とリボルバー式の『トーラスレイジングブル』の二丁拳銃スタイルで主に中距離による攻撃を行う。前者の銃は相手への牽制を主な役割を果たし、後者の銃はマグナム弾を使用している強力な銃である…なので右利きである彼女は右手に持ち相手に命中させダメージを与えることを役割とする。

 イクスは、太刀による近距離・中距離を得意とする攻撃または防御を行い、ライフル銃による遠距離攻撃を行うスタイルを持ち全距離攻撃型…つまりは、オールラウンダーである。その時々の相手に合わせて攻撃をすることを役割とする。


 朝食と夕食という二つの食事を済ませた後、仕事をするときはお互いの形態で連絡を取り合うという事にしてその日はお互いの部屋へと戻った。

 

 先程までしていた話を振り返ってみると、もう一つの疑問が浮かび上がった。何故、私は兄の事をあそこまできっぱりと全て忘れることができたのだろうか…。私だけならともかく両親からもその周囲からも思い出に撮ったはずの写真でさえも消えていた。今の自分が置かれている状態を見て考えてみると考えられる理由が3つ挙がった。

①自分の記憶だけがいいように書き換えられているのだろうか…。

②兄が何か知らない力を世界に向かって使ったか…。

③そもそも存在しなかったか…。

―――――――――――――――のどれか…もしくは、私の知りえない理由があるか…だ。

そこまで思考を広げた後、「今の私には考えられないや…」と天井を見ながら小さく呟き、眠りという闇に飲み込まれていった。


 《イクス視点》

  ・

  ・

  ・

 真希を部屋まで送ったあと彼はすぐに自室へと向かった。その途中で、彼も彼女と同じことを考えていた。

 

―――彼女のお兄さんの事についてだった―――

 

 彼女が話してくれた事をここではなく人間界で話のタネとして聞く分にはとても悲しい…それしか残らないような話だろう。だが、この世界を知る者にとって彼女の昔話には疑問点しか残らない。


 第一に、『そのお兄さんが死んだとき何故自らの記憶を消したのか…?』

彼女の話からいつまでも兄の死の事を覚えているのは苦痛に思えるからという理由を言えばもっともらしいが中には消したくない人だっていたはずだ。そもそも、彼は何故リン以外の人間からも思い出の品からも自分自身を消すことができたのだろうか…?

 第二に、『あと一歩で彼女は車に轢かれそうだったのに、どうやって彼は一瞬で公園の中央から道路のある外周まで移動できたのか?』

常人には不可能なはずの瞬間移動にも似た瞬発力は、当時小学生だった彼に可能なのだろうか?もし、そんな力があるとして何故事故に遭ってしまったのか?それとも、事故に遭わなくてはいけない理由があったのだろうか?


 疑問からさらに疑問が生まれ、それを解こうとするとさらに疑問が生まれた。

彼は椅子に座り込み後ろに限界までリクライニングし――

「ダメだ。考えるにしても答えに辿り着くまでの材料が足りない…。」

と、大きな独り言を呟くと携帯のベルが鳴った。

「誰だ?って、まぁ一人しかいないか」

彼には、あまり交流はない。あるとすれば、隊長であるゼロのみだったが今の彼にはリンが加わっていた。今さっきベルが鳴った携帯のディスプレイを見ると『新人』という文字が浮かび上がっていた。――リンである。


『明日なんですけど、早速任務一緒にお願いできますか?』


という内容だった。その問に彼はすぐさま返事を返した。


『もちろん。任務の内容は、明日教えてくれればいい。今日は、休め。』

『はい、ではまた明日。』


こんな感じでメールによる短い会話を終えた。

そして、彼もまたベッドの中に入り眠りについた―――


 《???》

  ・

  ・

  ・

 どの世界にも属さない黒く染まる暗黒の世界―――

 その世界にあるのは、高くそびえ立つ塔があった。その塔は変わっていて地上から生えているのではなく空中に核となるべき球体があり、そこから何本もの塔がそれぞれの場所に向かって伸びていてその数は六本あった。その塔の内、四本に亀裂が入った痕があり修復された痕が残っていた。残りの二本の内の一本には他の四本と同じく亀裂が入っていたようだが修復されることはなくその塔が目指す場所へと高く伸びていた。最後の一本は、その五本の塔を支える球体を支えるようにどこが地上か分からないがどこまでも太く深く伸びていた。

その世界には一人の男がその不思議な塔の中から暗闇の世界をただただ見つめていた。そして、その眼は自ずと一本の塔を見ていた。例の…一本だけ亀裂のはいった塔だ。少し悲しそうな目で見ていた。


「先の大戦で修復された塔がさらにまた亀裂が入ってから、十数年…。如何なる修復方法を以てしても修復不可能。一体どんな因果が絡み合ってるんだろうね~。僕は、その因果を断ち切り元の状態に戻す事…。優先順位は、どの任務よりも高く…。例え、その因果が仲間の中の誰かと絡んでいたとしても―――――」

そう呟いた男は、自らが武器とする銃を右手で握りしめ、また何もない真っ暗闇の世界が広がる窓の外を見た。


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