プロローグ
えらいことになった。
そう思った時には遅いというのは非常にわかりやすい構図である。
現代では化学が発展し、オカルトの類は人々の嗜好品のように影でつきそうようになり、漫画やアニメの類でしか姿を見せなくなったのかもしれなく。
一方の化学だって、光化学兵器を使い戦うロボットなど作れず、それどころか宇宙を飛び出す船さえままならないといったところ。
そんな、なんでもない世界でなんでもない日々を過ごし「あぁ、何か面白いことは起きないのか?」なんて少し非日常を求めながらも、やはり平穏が一番だなんて思いながら某大型掲示板に書き込みをする日々を過ごす、俺こと…いや、こういうのは僕のほうがしっくりきそうだよな…んじゃあ、この場では僕にしよう。改めましては、僕こと神木澤切尾は今非常に困っているのである。
「何考え込んでんだ?」
これほど困ったのは小学二年生の時に隣の横山さんの体操服が盗まれ、それが後日僕のロッカーから出たとき以来だ。
誤解を招くようだが、盗んではいないぞ。
誰かが僕の困る顔見たさにやった罠だと思うのだが、証拠は出ずに結局僕はその一年フェチ男というあだ名で過ごしたんだ。
「おーい。聞いてんのか?」
いや、もうそんな過去の話を悔やんでも仕方がない。
それにあの時は、数日間ロッカーが横山さんの残り香で満たされるという報酬で50:50にしようという結果が出たじゃないか。
おっとここで横山さんが可愛いのか?なんて質問はやめてくれよ。
って、そんなことを言ってる場合じゃない。
今はあの時の数億倍は面倒じゃないか。
「おい、見ろよあのカップル道端でキスしてんぞ。まったく、いつからこんなに慎みがなくなったんだ…。」
そうだよ、まずはこのカップルを打破…じゃない、この現状を打破しないといけないんだ。まったくもって面倒な事になった。
「見てみ、俺手首スゲェ柔らかいんだぜ?ほら、グニャグニャ曲がるだろ?」
しかし、これは僕のような一般常識人と書いてモブキャラと読むような空気人間にどうにかできる問題なのか?
「あー腹減った。ポテチ食っていい?」
「あぁ!うるさいなお前!ちっとは考えさせろよ!」
ついに僕の堪忍袋も限界だったようである。
さっきから我が物顔で僕の部屋をうろつく、少々体がでかいソイツに反応してしまった。
「ん?あぁ、契約するか考えてんの?迷うぐらいならすぱっとやろうぜ。男だろ?睾丸ついてんだろ?」
「そっちじゃないよ!いや、まぁそれに関係してんだけどさ!」
ソイツは割と普通に見掛ける程度の印象で、あまりに普通に部屋に馴染んでいる。
「んだよぉ・・・そんなに大声出さなくても聞こえるぜ?つーか、ポテチくっていいの?」
「あのな!こんな事にいきなり巻き込まれたら誰でも大声になるわ!いや、でも近所迷惑だから声は小さくしよう。あとポテチは食っていい、うすしおなら。」
ソイツは面倒な友達みたいなノリで部屋に居座り、図々しいほどの態度でベッドに寝っ転がっている。
「エェ…うすしおとかないわ…。コンソメか関西だし醤油だろjk。」
「文句言うなら食うなよ!それだって俺のしがない小遣いから買ってるんだから!だいたいな…」
ソイツはあまりに普通すぎて今も忘れそうになるけど。
「悪魔がポテチ食うなぁああああ!!」
由緒正しき悪魔である。