春分の日
「いよいよ3年生だね」
元気に言っているのは、今は高校2年生の井野嶽桜だ。
テレビのニュースでは、桜の便りが聞こえ始めている。
「いつの間にやら、17かぁ」
「今年中には18になるけどね」
双子の弟の幌の独り言にも、桜は答える。
「この1年、どうだった」
「そりゃ、楽しかったわよ」
桜が幌に言った。
「何と言っても、文化祭が楽しかったわね」
「ありゃ、俺が一番頑張ったからだろ」
「確かに、幌のご飯が一番人気じゃなかった?」
「そ。そして、模擬店で1位を取ったんだし」
「幌が相手じゃ、敵わないよ」
桜が幌に笑いながら答えた。
外は、まさに芽吹きの時。
清らかな風が、庭を吹き抜けていくのが、幌の目には映ったような気がした。