オープニング:p3
注意:こちらはSS速報VIPに書き込んだ内容をまとめた物となっています。
作者=ゆうきゆい(仮)=>>1=◆rMzHEl9LA2です。
ラヴコメ――それは漢の夢である。
可愛い幼馴染、可愛い妹、美人の姉、可愛い従妹、学園のアイドル、ツンデレお嬢様、以下略、以下略、以下略。
そんな美少女達に囲まれて、キャッキャウフフな生活を満喫する。誰もがそんな主人公に憧れ、そして妄想した。俺もよく妄想した。毎日、妄想した。
しかし、そんなみんなの憧れ、ラヴコメの主人公になれるかどうかは生まれた時点で決定している。絶望的なことである。
魅力的なヒロイン達が周りに居るかどうかなんて、生まれ育った環境次第。生まれた時期、場所、立場が少しでも違えば無縁である。
仮に天文学的な確立に勝利し、魅力的な美少女達が居たとしても、天文学的な確立で自分がイケメンに生まれなければ、一生、彼女達と関わることはない。
そして、天文学的な確立に敗北した者の末路は――モブキャラである。
ギャルゲやハーレムアニメ、ライトノベルなどでヒロインにも主人公にも関わることなく画面の隅っこで同類と当たり障りの無い会話をするだけの……モブキャラ。
空から美少女が降ってくることも、ベランダに真っ白なシスターが干してあることも、美少女な魔法使いに召喚され異世界に行く事も無い。
イベントは自分で起こすしかないし、起きるイベントも当たり障りの無いものばかり、同類とカラオケ行ったり、アニ○イト行ったりするだけの……そんなモブキャラ。
天文学的な確立に敗北した多くの人間はこのモブキャラとなってしまう。俺もそんなモブキャラの一人である。
中学生の頃、美少女な後輩の抱えている問題を解決してフラグを立ててやると奮闘するもモブキャラの力なんかが及ぶ筈もなく、自力解決され結果的に撃沈。同じクラスの美少女に勇気を出して告白したら、「えっと。キミ、名前なんだっけ?」と言われ即撃沈。
モブキャラ一人では、大勢の美少女にフラグを建てるどころか、たった一人にすらフラグを建てることが出来ない。舞台に観客は上がれない。例え、上がったところでモブキャラでは主人公のような力を発揮する事もできない。それが現実であり、俺も数日前までただのモブキャラであった。
しかし、俺は考えた。モブキャラの力では舞台に上がれないなら、俺が同じモブキャラを舞台に押し上げ役者にする。
俺は舞台に上がったモブキャラへ主人公になる為の演出協力して主人公にしてやればいいのだと……。
すぐに俺はネットで同士を探した。そして、2年後、スポンサーとなってくれる者と知り合った。
そのスポンサーの協力で西崎と知り合い、二人でこの組織を作った。そして、高校入学後、俺達は計画を実行した。
持ち前の空気っぷりを利用して悟られる事なく舞台の外から演出し、モブキャラの一人であった河野純一を一年でラヴコメの主人公にする。
何処にでもいる平凡な高校生だった河野純一は今では立派なラヴコメの主人公へと成長を遂げたのだった。
「――新入生代表、相澤梓乃」
「はい!」
などと思考している間に風鈴学園の入学式は淡々と進行していた。
進行役をしていた生徒会長である西崎に名前を呼ばれた新入生代表の女の子が壇上に向う。長い黒髪の左右をリボンで結び、ツインテールにした小柄な美少女である。
ツインテールの新入生代表は壇上に立つと制服のポケットから一枚の紙を取り出し誓いの言葉を読み始める。
「本日はわたし達、新入生代表のために盛大な入学式をして頂き、まことにありがとうございます――」
新入生代表は慣れたよう誓いの言葉を述べていく。
そういえば、新入生の中に風鈴学園の歴史を塗り替えるほどの高得点で入学した生徒がいるとか、そんな噂話をクラスの連中がしていた気がする……。
美少女で優秀。まあ、関わる機会なんて絶対ないほどの住む世界が違う住人だな……。
「――以上をもちまして、宣誓の言葉とさせていただきます。本日はまことにありがとうございました」
この後、担任紹介が行なわれるのだが……そのまま、新入生代表は何かを話し始めた。
「その! わたしの話になりますが! その、えっと……名前はわかりませんが去年のクラスと出席番号ならわかります!」
教えてもらいましたので――と新入生代表は言った。
シナリオにない何かが始める……そんな妙な空気を察した周りの生徒達が騒ぎ始める。
新入生代表はそんな周りのざわめきを気にしないで続ける。
「その人は去年、一年三組で出席番号は九番です!」
去年の一年三組? つまり、現二年生か。いや、待て? 去年の一年三組で出席番号九番? それって確か……。
去年、一緒のクラスだった現クラスメイトが俺の方へ視線を向けた。
それに釣られるようにクラスメイト達が俺に視線を向け、いつの間にか全校生徒が俺を見ていた。
違う、俺じゃない。俺は彼女と今まで一度も関わったことはない。
こちらを見るクラスメイト達の考えを否定するように首を横に振る。しかし、彼女が出した情報が一致しているために誤解が解けない。
俺は現在の状況を作り出した彼女を非難する為に再び、視線を向けて――顔を赤くした彼女と視線が合った。
「わたしはその先輩が好きです! その人が大好きです!!」
周りの生徒たちが騒ぎ出す。近くの者同士で相談しながら、こちらへ視線だけを俺に向けては再び相談したりしている。
彼女はなんて言った? 俺が好き? 何かの間違いでは? 俺は突然の出来事に頭に対応できない。
そんな、俺の肩が軽く叩かれた。振り向くと隣に座っていた生徒――河野純一が笑顔で言った。
「応援しているから!」
それで俺は理解した……。今まで注目されることがなかった俺が周囲に興味を持たれたことを……。
それはつまり、この風鈴学園という舞台で鑑賞する側から鑑賞される側になったということ。
俺は河野純一達と同じ注目される側、モブキャラで何の能力もない俺が誰かの演出協力もない状態で舞台の役者にされたのだと……。
注意:こちらはSS速報VIPに書き込んだ内容をまとめた物となっています。
作者=ゆうきゆい(仮)=>>1=◆rMzHEl9LA2です。