オープニング:p2
注意:こちらはSS速報VIPに書き込んだ内容をまとめた物となっています。
作者=ゆうきゆい(仮)=>>1=◆rMzHEl9LA2です。
ライトが消えた薄暗い部屋で俺は、この部屋の唯一の明かりである巨大ディスプレイの前で腰を屈めて次の言葉を待っていた。
あの後、教室で純一と別れた俺は学校の地下にある秘密基地にやってきた。
巨大ディスプレイには組織のスポンサー……の代理人である執事服を着た男が映っていた。
長めに切り揃えられた黒髪のイケメンである……絶対にあの執事は釘ボイスのお嬢様とモテモテリア充生活を送っているに違いない。
「――何か、失礼なことを考えていないか?」
「いえ、全然、考えてませんよ?」
このイケメンはこちらの考えていることがわかるのか?
「まあ、いいだろう……ところでその格好はどうした? いつもと違う格好のようだが……」
「今日、出来上がったばかりの正装です」
その問いに俺は自信満々に答えた。
現在、俺の服装は白の学生服に黒いマントを羽織り、顔には黒い仮面という正装姿だ。組織を支えてくれている人の前で普段の格好では失礼と言うものである。だから俺は西崎に頼み、専用の衣装を制作してもらった。 ちなみに本来はマントと仮面以外にも専用の服とズボンも作る予定だったが予算が足りなかった為に作れなかった……らしい。
らしいというのは、この組織の予算を管理しているのが俺ではなく、現在、俺のすぐ後ろで同じように座っている西崎が管理しているからである。
俺の発言に執事は「なるほど、理解した」とだけ言うと本題を話し始めた。
「……主からは『いつも通り見事な手腕であった。今後の活動も期待している』との伝言を預かっている」
「ありがとうございます。今後もご期待に添えるよう努力します」
俺は執事にそのままの姿勢でそう答えた。
執事はその言葉に満足したのか「ああ、頼む」とだけ言って続きを話し始める。
「主はお前を高く評価している。くれぐれも、それを裏切ることの無いように……」
執事がそう告げてすぐに巨大ディスプレイの映像が消える。
「総帥、皆が待っています」
後ろを振り返るとすぐ近くに美少女――――西崎律子が立っていた。
長く綺麗な金髪、宝石のように綺麗な瞳、モデルのようにバランスよく整った顔と身体。ハーフである日本人の父親とスウェーデン人の母親から生まれたとかで、両親のいい所だけを全て受け継いだと思うほど完成された超美少女である。
まあ、そんな超美少女が近くに居ようと俺には関係ない話である。なぜなら、フラグが立つのはただしイケメンに限るなのだから……。
「どうかされましたか?」
「……いいや、何でもない」
西崎にそう答え、俺は舞台の少し前へと出る。
すると、消えていたライトが点灯し、俺が立っている場所を明るく照らす。
舞台の下には覆面姿の部下たちが俺の言葉を待っていた。
俺はその大勢の部下たちの期待に答えるために高々に宣言した――この組織の理念を!
「事実は小説より奇なり! 故にラヴコメは現実である! つまり、ラヴコメは現実でないとならないのだ! 私はここに『人類ラヴコメ化計画』を必ずや成し遂げる事を宣言する!」
目の前に居る部下たちから歓声があがり、いつしかそれはラヴコメコールとなる。
俺は片手を上げ、その歓声に答える。
「そ・う・す・い! そ・う・す・い!」
「総帥! 総帥! 総帥!」
「キャー! 総帥ー! こっち向いてー!」
ラヴコメコールはいつしか、総帥コールへと代わる。
目元が潤んでくる。黒い仮面の下で俺は今、猛烈に感動していた。
まさか、部下たちがこんなにも俺を支持してくれているとは思ってもいなかった。
普段、総帥の俺が何故か前線で活動していたから、てっきり部下達に嫌われていると思っていたがそうではなかった。
勘違いだった。この同じ志を持つ同士達と共に一緒に夢の実現を目指そうじゃないか!
部下達の期待に答える為に何かパフォーマンスでもしようかな、など考えているとマイクを持った西崎が俺の前に立った。
そして、マイクを口元に持っていき――
「――では、これで集会を終了いたします。バイトの皆様、お疲れ様でした」
「へ?」
バイトの皆様? 何の事ですか?
などと混乱している間に部下達が俺に背を向けゾロゾロと外へと出て行く。
混乱する俺を無視して西崎の言葉は続く。
「タイムカードの切り忘れが無いよう、気をつけてお帰りください」
「あぁ~、終わった、終わった~」
「あの総帥だっけ? 話が短くて助かったよ、わたし」
「ウイッー!」
あっという間に出入り口に向う人の波が消える。
そして、部屋には俺と西崎だけとなった。
「どういうこと?」
「と、いいますと?」
西崎は質問の意味がわからないという風に首をかしげて聞いてくる。
俺は先ほど人の波が消えた出入り口を指差しながら言った。
「あいつらだ! あ・い・つ・ら! ……俺の部下だよな?」
西崎は顎に人差し指を当てて思考した後、一言。
「部下ですよ? 掛け持ちありですが……」
「掛け持ち? なんだ、そのアルバイトみたいな話は……」
「アルバイトですから」
「アルバイトぉおおおお!?」
「はい、彼らは自給八五〇円で雇われた学生アルバイトの方々です。今日は総帥が来るまで休み時間、昼休み、放課後をコールの練習で計八時間の労働をすでに終えましたので強制終了させていただきました。八時間以上の労働は労働基準法に違反しますので……」
自給八五〇円って……高っ!?
しかも、ここの生徒だと!?
どおりで覆面以外は見たことある学生服だと思ったわ!
「……ち、ちなみに正規メンバーは?」
「総帥、私の計二名となります」
「あとは雇われたバイトかよぉおおお!!」
西崎の言葉を聞いて床に両の膝と手の平をつけうな垂れる。
その姿はまさにorzといったところだろう。
そんな姿の俺を無視して西崎は言った。
「では、私もすでに八時間の労働が過ぎてますので帰らせて頂きます。お疲れ様でした、総帥」
ペコリと頭を下げた西崎が俺に背を向けて出入り口へと向って歩き出す。
「総帥も一緒に……」
「ん?」
姿勢をそのままに俺は頭だけ起こし出入り口の方へ視線を向ける。
そこには扉に手を掛けたところで、こちらに背を向け止まる西崎の姿が見えた。
「……たまには一緒に帰りませんか?」
人を誘うことに慣れていないのだろうか? 振り返り、少し恥ずかしそうに西崎はそう言った。
彼女と知り合って一年……そういえば、一度も一緒に帰ったことはなかったな。
当然と言えば当然である。アニメで例えれば彼女はヒロイン入りするレベルの美少女、そして、俺はモブキャラレベルが妥当だ。
モブキャラがメインキャラを誘おうなど無謀なことをする訳もなく、当然、今まで彼女とは仕事以外では全く関わる事はなかった。
そんな、美少女からの誘いだ。生まれてからその手のことに一度も縁のなかった俺は……。
「よし、一緒に帰ろう!」
当然、即答したのであった。
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