オープニング:p1
注意:こちらはSS速報VIPに書き込んだ内容をまとめた物となっています。
作者=ゆうきゆい(仮)=>>1=◆rMzHEl9LA2です。
――放課後、男は女に呼び出され茜色に染まった教室に来ていた。
すでに居た女は男の姿を確認すると頬を赤らめて下を向いた。顔が赤いのは夕日の色ではなく、恋する男が現れたのが原因だ。夕暮れ時の教室に二人っきり――そんな王道ラヴコメ的な場所に二人はいた。
男の名前は河野純一、このラヴコメの主人公である。
「――で、なんだよ、和子? 突然、『来い!』なんて言われたから来たけどさ」
「え、えっと、そうだったわね! そ、そのね……」
和子と呼ばれた女がもじもじと言いにくそうにしている。
女の名前は佐藤和子――この物語のヒロインである。
「き、昨日は! その、あ、ありがとう……」
「昨日?」
和子の言葉に純一が首をかしげて聞いた。
「……とぼけちゃって」
和子は少し嬉しそうに言うとスカートのポケットからキーホルダーを取り出した。
そのキーホルダーを見た純一が反応を示す。
「あ、俺のキーホルダー! 何処かで落としたと思ったら、和子が拾ってたのか」
「やっぱり、これはアンタの物だったのね」
そう言うと和子はキーホルダーを純一に渡した。
「ありがとな! お気に入りだったから戻ってきて良かったよ、ホント」
純一は和子にお礼を言いながらキーホルダーを仕舞う。
「まさか、アンタがム○クのコスプレをして助けに来るなんてね……ビックリしたけど、嬉しかった」
「ムッ○? なんだよ、その○ックって……」
赤い毛むくじゃらな雪男をイメージしながら純一が尋ねた。
まあ、イメージしていると思う。確証は無いが……。
和子はその反応が予想通りと言わんばかりに溜息をひとつする。
「認めたくないならいいわ。アンタがそんな性格だってことは理解してるから」
「認めたくないも何も――」
「いいから、詳しくは聞かないから!」
そして、和子は顔を伏せるとやや緊張した風に言った。
「それにね……あたしはそんなところも含めて、アンタのことが――」
――このタイミングだ!
学ランのポケットから小さな消しゴムを取り出すと、教卓からばれない様に放り投げる。
普通の教卓なら見つかっていたかもしれないが、この改造教卓なら絶対に見つかることは無い。
例え教卓を四方八方から確認しようとただの木箱のような教卓にしか見えないのだ。
しかし、実は後ろから中に入れ、外の様子を窺うことが出来るようになっている。
そして、この教卓は生徒会の仕事で『新入生代表の為に備品を新しくする』という理由で替えたものだ。
生徒会が関与している備品にそんな改造が施されているなんて誰が考えるものか。
俺は覗き穴から外の様子を窺っていると消しゴムが直撃した純一が周囲を見ているのを確認する。
和子はそんな純一に気付かずに「えっと、その、あの」と想いを伝えるのを躊躇している。
だが、そろそろ純一に想いを伝えてもおかしくないな……よし、第二フェーズへ移行するか。
俺は近くに置いたあったラジコンのプロポを手に取り操作する。
すると、教室の出入り口からバイク型のラジコンが姿を現し、和子からは死角になり、純一からは見つかりやすい位置で停止する。
周囲を確認していた純一はそのラジコンを発見し、そのデザインを見て驚いていた。
黒い皮製のジャケットと黒いサングラスという姿でバイクに跨った――ター○ネーター風ム○ク
ム○クの片手には看板が握られており、そこには『アイルビームック!』と書かれていた。
ム○ク、和子との会話で出てきた謎の存在――そのム○クが意味不明な格好で純一の現れたのだ。
俺はプロポを操作しム○クを教室の外へと走らせ、純一の視界からム○クを消した。
ム○クが現れ走り去っていった……そんな不思議を目撃した純一は当然、思考停止――和子が話した内容など頭に入ってくるハズがなかった。
「――だ、大好きなの!」
そう、顔を真っ赤にして和子が言った事も当然のように聞き逃していた。
「……」
教室が静かになった。
不思議な出来事を目撃し、思考停止する河野純一。
勇気を振り絞って告白し、返事を待つ佐藤和子。
まあ、二人が無言となった理由には大きな違いがあるが……。
しばらくして、思考停止していた純一が動き始めた。
そして、目の前で顔を真っ赤にして俯いている和子に気がついた。
まさか、何かあった?――純一の考えていることはそんなところだろうな。
だが、先ほどまで思考停止していた純一には和子が何をしたのか理解できないだろう。
「あー、そのだな……」
その場の空気に耐え切れなくなった純一が何とかしようと思考している。
そろそろ、和子が動き始めるハズだ……。
案の定、しびれを切らした和子が顔を上げて言った。
「……いつまで返事を待てばいいわけ?」
よし、予定通りだ。
純一の様子を窺うと……あの顔は『和子が何かを言ったことは理解した』というところだろう。
すると純一の次の行動は決まっている――
「――えっと、何か言ったのか?」
そう、この台詞だ。
俺の予想通り、お約束の言葉を純一が言ってくれた。
当然、和子は純一の言葉を理解できずに停止した。
和子の発言を尋ね、返事を待つ河野純一。
純一の発言を聞き、思考停止する佐藤和子。
そんな異なる理由で二人が無言になった為に再び教室は静かになった。
「……和子?」
突然、無言になった和子を心配して純一が様子を窺っている。
和子の様子は……俯き肩を振るわせている。
そろそろ、お約束の展開だな……。
そんなことを考えていると和子が予定通りに動き始めた。
「あ、アンタってヤツは……ひ、人がせっかく勇気を振り絞ったのに……ほ、本当にアンタは……」
そして、何の事か全くわからない純一が再度、確認する為に尋ねた。
「もしかして、何か怒らせるようなことしたとか?」
ピシッ――そんな風に教室内を満たす空気がヒビ割れた気がした。
「……こ、こ、こ」
「こ?」
肩を震わせていた和子が視線を上げた。
その顔を見た純一が和子を怒らしたことを理解したのか、慌てて言い訳を始める。
「ま、待て! た、ただ、俺は聞いてなかったから確認しただけで!」
まさか自ら爆弾を爆発させるような発言をするかね……。
これは一種の才能……ラヴコメ主人公が生まれながらに持っている才能だな。
この才能を持った者だけが主人公となり、リア充生活を満喫できるのか……。
純一の言葉を聞いた和子が拳を握り姿勢を一瞬にして低くすると、そのまま勢い良く拳を振り上げた。
「この、ばかぁああああああ!」
和子の拳は純一の顎へ綺麗にヒットし純一を真上へと吹き飛ばす。
その一連の流れは強いヤツに会いに行くのが趣味な格闘家が放つ、昇り竜を想像させるような技と似ていた。
「ふげらばっ!」
宙を舞う純一がそのまま床へと落下する。
怒りが収まらない和子はそのまま教室から出て行くのであった。
「……り、理不尽だ」
和子が教室を去った後、床に転がった純一はそう呟き気絶する。
純一が気絶するのを確認した俺は改造教卓の出入り口を開けて外へと出る。
四月六日――いくら、少し肌寒いといえど、密閉された場所に一時間近く居るのは暑くて疲れるものである。
俺は背伸びをひとつし、凝り固まった身体をときほぐすと、教卓内に入れていた学生鞄に持っていたプロポを仕舞った。
「……任務完了」
これが俺の仕事――今日もラヴコメを手伝う仕事を終えた俺はひとり呟いた。
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作者=ゆうきゆい(仮)=>>1=◆rMzHEl9LA2です。