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第二話「試験開始」

喫茶へと到着したチェル。そこで待ち受けていた試験とは?




第二話


「試験開始」


その喫茶の見た目を一言で言うと…

「ボロッ…」

チェルはおもわずそう呟いてしまう 。

このコンクリートの高層ビル群においてその喫茶は異質な存在だった。 一昔前の様な木造建築で、モダンな感じではあるが、チェルが本気で蹴りをいれれば、崩れてしまいそうだった。

そんなボロ喫茶のドアの前でチェルは一度深呼吸をしてから中に入った。


++++++++

カランコロンと鈴の音がなり、チェルは中へと入った。

やはり中も西洋モダンな感じで、店内はとても落ち着いた風意気を醸し出していた。

店内には四人の人間がいた。

バーカウンターの中に店長らしき20代前半の眼鏡かけた青年が皿を拭いていた。

そして、そのバーカウンターに十代後半くらいのサングラスをかけ、スーツを着た青年がのんびりとグラスに入っている何かを飲んでいた。

さらに、右側に並べられている机とイスの一つに、これまた20代前半くらいの男女が座っていた。

男の方は怖面な顔をしており、その大柄な体格が、彼をよりいっそう威圧的なものにしていた。

しかし男は、顔に似合わず分厚い本を熟読中だった。 女性の方は、和服を着ており、清楚で大人の女性といった印象をチェルは受けた。

女性が静かに紅茶を飲む姿さえ、まるで一枚の絵のようだった。


みんな思い思いの時間を過ごしていた…。


だが…


その空間に一人取り残されている人物がいた…。


チェルだ。


(この状況で話しかけにくい)


だが、だからといってずっとこのままという訳にはいかない。

チェルは意を決して、精一杯大きな声を出した。

「あの…すみません…」


シーン


四人全員から反応なし。

というより気がついていない様子。 仕方なくチェルは更に大きな声で再度呼び掛ける。


「あのっ!すみません!」


シーン


しかしまた四人全員から反応なし。


ぷちん


チェルの中で何かが切れた音がした。

「あのー!!さっきから呼んでるんですけどっ!!」

すると、皿を拭いていた店長の青年が、チェルに話しかけてきた。

「あ、いらしゃい。いやー全然気がつきませんでしたよ」

「全然…」

その一言がチェルの頭の中にこだまする。

(私てそんなに存在感無いのかな) と気落ちしてしまう。

そんなチェルが沈みこんでいる中で、他の三人もチェルがいる事に気がついたのか、思い思いの事を口にする。

「いやー、マスター。明日は雨だね。

マスターの店に平日に僕ら以外の客が来るなんてまさに奇跡だ。」

と、バーカウンターに座っている少年は大袈裟に両手を広げながらそう言った。

すると、マスターと呼ばれた青年は苦笑しながら

「失礼ですね。それじゃあまるで、私の店が休日以外はほとんどお客が来ないみたいじゃないですか」

「事実じゃねぇか」

と長身の男がマスターにツッコミをいれる。

和服の女性もうんうんとそれに頷き賛同した。

「皆さん手厳しいですね」

少しはぶてた顔をするマスターを無視して、バーカウンターの青年はチェルに話しかけてきた。

「君、名前は?」

青年は優しく微笑むが、緊張しているチェルはなかなか自分の名前を言えない。

すると長身の男が見兼ねたように青年に言う

「馬鹿野郎。名前を名乗るならまずはこちらから だろ」

「あっ それもそうだね。僕の名前は神裂 トレント。ま、よろしくね」

「俺は円谷 狼牙。困った事あったらなんでも言いな」

「うちは、咲杜言います。チェルさん以後よろしゅう」

それに、つられてチェルも自己紹介をする。

「えっと、静菜 チェルです。よろしく…お願いします」

「じゃあ、何かご注文は?」

マスターにそう聞かれ、チェルは考える仕草をし注文をしようとする。 「えっと、じゃあ」

とそこまで言いかけてチェルは当初の目的を思いだし、両手をブンブンと振る。

「あのっ、そうじゃなくて、私賞金稼ぎの試験を受けに来たんです!」

「なんだ…、そうだったんですか。少し残念です」

ガクッと残念そうに肩を落とすマスター。

それをなだめつつも、トレントはチェルの方を見て

「へー、じゃあ君書類審査の方は通ったんだ。それだけでも結構すごい事だよ」

関心しているトレントに、チェルが質問をした。

「それで、ここで行われる試験ってなんですか?」

「それはうちから説明するわ〜。ここで行われる試験ゆうんは、三つあってな〜。

第一試験は狼牙が、二次試験はトレントが、最終試験はウチがやるよ〜」

と咲杜が優しく説明する。

「三つの試験…」

チェルは神妙な面持ちでその内容を頭の中で噛み締める。

「まぁ、別に死ぬわけでもないから、気楽にいこうよ。気楽に」

トレントにそう言われ少し気が楽になるチェル。


しかし…


咲杜の次の一言で全てが水の泡になる。

「でも、楽しみやわ〜。最近大抵トレントの二次試験でみんな脱落してしまうんやもん。 チェルちゃんは頑張って、ウチのとこまで来てな〜」

「えっ!?」

咲杜の言葉に凍り付くチェル。

だがその真実にツッコム前に容赦なく第一試験が開始される。

「おい!いつまで凍り付いているつむりだ?

まずは第一試験を通る事を考えな」

狼牙の言葉に、ハッとチェルは我に帰り、気を引き締めた。

(そうだ…。今は最初の試験に集中しよう)

こうして、チェルの賞金稼ぎ採用試験が始まった。


++++++++

「じゃあ、試験の内容を簡単に説明するぜ。

おい、チェル。あそこにある白い線が引いてある場所に立て」

狼牙の指示した白い線のある場所にチェルは言われたとうりに立つ。

すると、狼牙はチェルの立つその場所から15mほどはなれた場所に、チェルの正面に立った。

そして、どこからともなく取り出したビー玉をいきなりチェルに投げ付けた。

ビー玉は風を切り、ビュンと音を立てながらチェルの横をかすめた。

「なっ…」

「第一試験の内容は簡単だ。このビー玉を四つ。その線の上から動かずに止めろ。方法はなんでもいい。

体で受け止めるなり何なり。好きにしろ。まぁ受け止められればの話だがな」

と狼牙はまた、容赦なく。しかも今度は四つ同時にチェルに投げ付ける。

「つっ!」

チェルはなんとか四つ全部を避ける。

だが、休む暇も無く、すぐに次のビー玉が飛んで来た。

「おらぁおらぁ! 気抜いてると線から動いちまうぞ!」

その様子を遠くから見ていたトレントと咲杜。

トレントは誰に言う訳でも無く呟いた。

「賞金稼ぎには瞬時の判断力と勇気が必要である。

この一次試験ではそう言う面をチェックするんだけど…。

あの子、大丈夫かな」

「う〜ん。ウチは大丈夫や思うけどな〜。まぁ、あの子次第やないの〜」

二人はチェルの方に目をやった。

すでに軽く汗をかき、多少疲れている感じだった。

それを見た咲杜は素直な感想を述べた。

「これは、ダメかもしれへんな〜」

++++++++

チェルは狼牙の攻撃を避けながら考えていた。

どうやってあの攻撃を止めるか。

狼牙の投げるあの四つのビー玉は全部変則的な動きをし、しかもどれもチェルが立っている線から動くように投げてきている。

このままでは、確実に体力を消耗し、チェルは一次試験で脱落してしまう。

そこでチェルは狼牙の投げる変則的な投げ方に弱点がないかを探り始めた。

「おらぁ!」

狼牙が同時に四つのビー玉を投げる。

ふとその時、チェルはある事に気が付いた。

狼牙の投げる四つのビー玉は最初は皆集まっているが、途中で何かに弾かれたように、変則的な動きをし、チェルに襲いかかって来る。

(これだ…!)

チェルは狼牙の投げの弱点を発見し、心の中でにやりと笑う。

そうとは知らず、狼牙はまた、チェルに向かってビー玉を投げた。


次の瞬間


チェルは自分の腰にあるホルスターから、リボルバー式の拳銃を取り出し、目にも止まらぬ速さで四つの弾丸を撃った。

その弾丸は、まだ拡散する前のビー玉を的確に捉え、 四つのビー玉全ての動きを強制的に停止させた。

それを見て、狼牙は大笑いをした。 「だーはっはっはっ。

いや、お前すげーな。初めて見たぜこのビー玉をそんな止め方する奴。 合格だ、チェル。第一試験はこれで終わりだ」

そう言って、狼牙はチェルの頭をクシャクシャと撫でた。

「まぁ…、次はトレントの二次試験なわけだが。

頑張れよ…」

と、チェルに同情のまなざしを送る。

(二次試験…、そんなにきついんだ…)

チェルは内心ビクビクしながら、トレントの座るバーカウンターに向かう。

すると、トレントは笑顔でチェルを迎えた。

「いやー、まぁとりあえずお疲れ様。

喉乾いてないかい?何か飲む?」

トレントの明るい対応に少し拍子抜けしつつも、さっきの試験で、喉が乾いているのは事実なので、何を頼もうかと悩んでいると、トレントがあるものを勧めてきた。

「炭酸なんてどうだい?」

「あ、じゃあ…それで」

チェルは何も考えずにそれを頼んでしまう。


その一言が二次試験の内容を左右するものとは知らずに


マスターによって炭酸水がチェルの前に差し出され、チェルはそれを一気に飲んだ。

炭酸独特の、喉が焼けるような感覚を感じながらも、チェルは素直な感想をトレントに述べた。

「おいしい…です」


((あーあー。やっちゃった))


内心そのやり取りを見ていた狼牙と咲杜はチェルに同情せずにはいられなかった。

なぜなら、その一言で、トレントに火が着いたのだから。


キラーン


チェルはその時、トレントのグラサンの奥の目が光ったような気がした。

「ふふっ、チェルもそう思う?だってその炭酸は千年戦争が始まる前に存在した炭酸の復刻版で、あの当時の味を忠実に再現しー」

うんぬんかんぬん。トレントの炭酸のマニアな話が始まった。


三十分経過…


トレントの話はまだ続いていた。

正直チェルはいつ二次試験が始まるのだろうと思いながらも、楽しそうに炭酸の話をするトレントの話を中断するのは悪いと思い、大人しく話を聞いていた。


だが実はこれが二次試験の内容だった。

「賞金稼ぎには忍耐力も必要である。て言う訳で、トレントの長話を聞くのを途中で諦めたら脱落なんだが…」

「最初に勧められた炭酸を飲むか飲まないかで全然話す長さか変わるんや〜。

チェルちゃん、可哀相やわ〜。

あと二時間は続くわ〜」

「あいつ、炭酸の事となると妙にマニアックになるからな…」

そんな二人の会話をよそに、トレントの炭酸話はまだまだ続きそうだった…。


二時間三十分経過

(うざっ…)

さすがに心の広いチェルでも我慢の限度というものがある。

こんなにも長く、しかもずっと炭酸の話を聞かされ、いつまで経っても始まらない二次試験。

チェルのイライラが頂点に達しようとしていたその時だった。

「ふぅ。

まぁこんなとこかな。

という訳で、二次試験合格だよ」

「えっ!?」

チェルはいきなりのトレントの発言に固まってしまう。

それを察したのか、トレントが補足説明をした。

「実は二次試験は忍耐力をテストするもので、僕の長い話を最後まで聞けたら合格なんだよ」

「はぁ…」

いまいち納得のいってない感じではあったが、合格といわれたので、チェルは一応安心する。

残るは最終試験。 咲杜だけである。 すると咲杜はニコニコとした笑顔を送りながら、チェルに話しかけて来た。

「チェルちゃん、ウチの最終試験は喫茶の中でやるのは迷惑なんよ〜。 悪いけど外までついて来てくれる〜」

「あ、はい…」

チェルは咲杜にいわれるまま喫茶を後にする。

外に出ると咲杜はチェルと一定の距離を取り、先ほどと変わらぬ笑顔で、チェルに告げる。

「ウチの最終試験わな〜。

ウチと戦って、ウチに一発でも攻撃を当てることなんよ〜」

「つっ…!」




最後の試練がチェルの前に立ちふさがった…。


第三話につづく

いやーやっと第二話書き終わりました。 ほんとウスノロでスイマセンm(_ _)mとりあえずチェルは最終試験を合格することが出来るのでしょうか? 第三話にご期待ください。(またかなり時間かかりそうですが…)

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