7番目のお話
「……なんだ、まだ夕方ではないか」
《 ものしりフクロウ 》は不機嫌そうに言いました。
「なんだ、おまえは。起こすでない。ワシはまだ眠いのじゃ」
茶色い翼を、しっし、と振って、まおくんを邪険にあしらいます。
「そこをなんとか!」
まおくんはあわてて食いさがりました。だって、早くしないと、夜になってしまいます。暗い森は恐いです。
寝ていたところを起こされて《 ものしりフクロウ 》はご機嫌斜めです。けれど、まおくんが熱心に頼むので、しぶしぶ話を聞いているのです。
《 ものしりフクロウ 》がムッとしたままなので、まおくんはがっかりして、肩を落としました。
「いくら森の賢者でも、知らないことってあるよねえ……」
《 ものしりフクロウ 》はバタバタ茶色の羽を羽ばたかせました。
「笑止! ワシに知らぬことなど、ありはせんわ!」
ものすごい剣幕で、すぐに一番下の枝まで降りてきます。今にも頭をつっつかれそう。
《 ものしりフクロウ 》はものしりですから、プライドがとても高いのです。だから、ばかにしてはいけません。すぐに怒ってしまいますから。ちなみに、ざゆうのめいは「得意満面」です。
「しかし、どこへ行くのも、ワシならば、ほんのひとっ飛びじゃからのう……」
黄色いくちばしを、ぱくっと開けて、くわっとあくびをしています。まだ眠たいようです。《 ものしりフクロウ 》はものしりですが、夜行性なのが玉にきずです。
「ワシは地面なんぞを歩いたりせんから、そもそも出口など無用の代物。じゃが、アレならば里にも行くから、あるいは知っておるやもしれんのお」
一人で物々しくうなずいて、真ん丸の目玉を、きょろりと一度動かしました。
「しかし、あやつはのろいからのう……」
小首をかしげて、一人でぶつぶつ言っています。
まおくんも一緒に首をかしげていると、《 ものしりフクロウ 》はきょろきょろ森を見まわしました。
ばさり、と大きく翼を広げ、バサバサバサ、と三度大きくはばたきます。
「仕方がないのう。すこ~し、ここで待っておれ」
よいこらせっ! と枝をはなして飛びたつなり、まっ暗な森の奥ふかくへと飛んでいってしまいました。
※ 続きます。