11番目のお話
《 ものしりフクロウ 》が「ついて来い」と茶色い翼を振りました。自信満々の様子なので、一人と一匹は、よく分からないながらも従います。
《 ものしりフクロウ 》は枝から飛びたち、翼を大きく広げました。すい、と風の上を滑っていきます。
けれど、一人と一匹は、空などぜんぜん飛べないのです。だから、あわてて走って追いかけました。
しばらくそうして走っていると、《 ものしりフクロウ 》は翼をばさばさ羽ばたかせ、すい、と優雅に舞いおりました。
元の木から20本も先にある、モミジの巨木の下でした。根元の方に生えている、青々とした大きな葉っぱに、なにか丸いものがいるようです。
「……これは、なに?」
はあはあ息をあえがせて、まおくんは《 ものしりフクロウ 》に聞きました。一緒に走ってきた《 オレがやるクマどん 》は、けろっと平気な顔で見ています。
うぉっほんっ! と一つ咳払いをして《 ものしりフクロウ 》は物々しく答えました。
「これは《 まきまきマイマイ 》じゃよ」
まおくんは首をかしげました。
「雨の季節に、あじさいの葉っぱの上にいる、あのカタツムリさんのこと?」
それにしては、ちょっと大きいようでした。まおくんの頭くらいはありますから。
《 ものしりフクロウ 》は、うむ、と物々しくうなずきました。
「こやつらは里への道に詳しいからの。雨が降ったら、里へ遊びに行くのが、やつらの慣わしであり、礼儀でもある。訪ねていくと、人も喜ぶ」
「そうなんですか?」
「うむ。まったく律儀な連中よ」
《 ものしりフクロウ 》はそう言って、《 まきまきマイマイ》の茶色で書かれた渦巻きを、黄色いくちばしでつっつきました。
「……なんか用?」
かたく閉ざしたカラの中から、にゅーっ、と首が迷惑そうに出てきました。《 まきまきマイマイ 》です。
「硬いくちばしで、つっつかないでよ、ぼくのおうちが壊れちゃうじゃないかあ」
大切なおうちをつつかれて、とてもとても嫌そうな顔。
《 まきまきマイマイ 》はおうちが大好き。だから、いつでも、どこでも、おうちを背負って移動します。ちなみに、ざゆうのめいは「難攻不落」です。
大好きなおうちでくつろいでいるところを呼びだされたので、《 まきまきマイマイ》はちょっぴり不機嫌。
「おぬしに頼みがあるんじゃが」
《 ものしりフクロウ 》は物々しく言いました。茶色の翼をバサバサ動かし、かくかくしかじか説明します。
《 まきまきマイマイ 》は、まおくんを、じぃっと、じぃっと見ています。
やがて(そのまま固まっちゃったんじゃないかしら……)とみんなが心配になった頃、ぬめぬめしたその首を、にゅーっと、ゆっくり動かしました。
「……あっちだよ」
左の道を示しています。
枯葉が厚く積もったそこには、ぬめぬめ光る「銀の道」、《 まきまきマイマイ 》が使っている、出口に続く一本道です。
「なら、送っていくのはオレがやる!」
《 オレがやるクマどん 》が、黒く分厚い毛皮の胸を、どん、とゲンコで叩きました。
出番です。まおくんの体を、ひょい、とでっかい肩にのせます。これでやっと、まおくんも、自分のおうちに帰れそうです。
「ありがとう、みんな」
おでこを膝にくっつけて、まおくんはお礼を言いました。
※ 次で、おわり。