10番目のお話
「まてまてまてぃ! 帰ってはいかーんっ!」
バサバサバサ──! とあわただしい羽ばたきが聞こえてきました。
一人と一匹が、なんだなんだ、とそっちを見れば、何かがあわてて飛んできます。小さな黒い影がひとつ──
あの《 ものしりフクロウ 》ではありませんか。
《 ものしりフクロウ 》は翼をひろげて滑空してから、すいっ、と元の枝に舞いおりました。ぜえぜえぜえぜえ短い首をうなだれています。急いで戻ってきたようです。
急に暗くなった森を見まわし、まおくんは文句を言いました。
「クマさんは、出口なんて知らない、って言っていますよ?」
《 オレがやるクマどん 》も、ぶっとい腕をゆっくり組みます。
「オレはあんたが、" オレにやれることがある " って言うからきたんだぜ?」
《 オレがやるクマどん 》も不満です。せっかくきたのに、" やれること " がないからです。
「双方まてい! だから、まてと言うておろうに!」
茶色の羽を、ばさり、と広げて、《 ものしりフクロウ 》は、一人と一匹の文句をさえぎりました。けれど、まおくんは、ちょっぴり怒っているのです。
「もお! フクロウさんってば、ずいぶん遅かったじゃないですかあ」
これではすぐに日が暮れて、アニメが始まってしまいます。「待っておれ」と言ったから、ずうっと、ずうっと待っていたのに。あの約束を、ちゃあんと守って。
「──ああ、いや、それがのお」
《 ものしりフクロウ 》が、まおくんを見ました。
「方向が急にわからんようになってしもうて。森には長らく住んでおるが、こんなことは初めてじゃよ」
短い首を不思議そうにかしげます。賢そうなまん丸な目を、きょろり、とすぐに動かしました。
「それはともかく、まあ見ておれ。ワシに良い考えがあるのじゃ」
歌うようにそう言って、ふぉっふぉっふぉっと目を細めて笑います。なにやら自信たっぷりです。
けれど、《 オレがやるクマどん 》は、出口なんて知らないのです。本人が言うのですから、これは間違いありません。
まおくんと《 オレがやるクマどん 》は、お互いの顔を見合わせました。
いったい、どうするつもりでしょう。
※ 続きます。