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外に出たら

 診察もどきを終えたセハンが部屋を出て行くと、室内は急に静かになった気がした。

 

 セハンはこのあと他の診察が詰まっているらしい。

 なんだかんだでちゃんと医者をやっているようだ。


 また一人に戻り、少しずつ思考はおかしくなる感覚をおぼえたわたしは何かすることはないかと考えて、散歩でもしようかと考えた。


 しかしそこで、わたしはこの部屋を出ても大丈夫なのだろうかと考える。


 少しだけ部屋のドアを開けて周りを見回してみるが、衛兵の姿は見当たらない。

 出来ればここを出て良いか聞きたかったのだが……


 わたしは少し考えて、部屋から出た。

 とりあいずこの階を歩いて衛兵を探し出そうと思ったのだ。


 しばらく歩いてみるが、都合が悪くなかなか衛兵が見当たらない。

 わたしは困り果てて、一回部屋に戻ろうかと思った。しかし部屋に戻ったら戻ったで、深く考え込んでしまうことは分かりきっている。


 わたしはその場にたたずんだまましばらく考え込んでいた。

 そのときだった……


 「そこで何をしている?」


 いきなり背後から声をかけれられてビクッと肩が震えた。振り返ってみると、衛兵らしき人物がこちらを睨みつけるように見ている。

 その手が腰に付けられて剣の鞘にかかっていることをみてわたしは驚愕した。

 目を見開いて、この状況をどうしたらいいのか考えるも頭が白くなってしまってどうしようもない。


 「聞いているのか?何をしているとのかと聞いている」


 衛兵は答えられずにいるわたしに警戒した様子で剣を鞘から引き抜いてわたしに向けた。


 「あっ……そのっ、違います!違うんです!」

 「何が違うと言う」


 衛兵は低い声でわたしに問う。

 

 どうしよう、どうしよう


 そんなにわたしは怪しかっただろうか?

 というかこの衛兵はわたしが“天子”だと知らない?


 だってわたしが天子だと知っていればここまで警戒することもないだろう。いや、知っていて天子が目障りだからこうして剣を向けていると言うこともある。

 

 わたしは恐怖のあまり一歩後ずさった。


 「わたし……その、この階にある客室を使わせてもらってて……さっ散歩をしても良いかどうか聞こうと思ったら誰もいなくて……その……人を探してまして……」


 混乱しているからか言い方が変になっている。

 今まで刃物を向けられた経験などないのだ。さすがのわたしだってこれには対応できない。

 衛兵はわたしの言葉を不振そうに聞きながら、首をかしげた。


 「この階の客室を使っている人間がいるとは聞いていないが?」

 「えっ……あぁ、その今日から使っているので……まだ伝わってないのでしょう」


 伝わってないって……

 人を部屋に置くならせめてそのことを衛兵全員に伝えておいてほしい。


 このまま疑われて牢屋に逆戻りとか絶対に嫌だ。

 あんなコケが生えていて、湿っぽくて、ゴキそっくりの物体が壁を這い回っている牢になど二度と戻りたくはない。


 衛兵はわたしに剣を向けたまましばらく考えていたが、少しするとその剣をおろしてくれた。

 わたしはそのことにホッと安堵のため息をつく。


 なんとか信じてもらえた……のだろうか?


 「……王都騎士団2番隊隊長のレヴォラ・シアードだ。先刻、外の警備より戻ったばかりなので屋敷内の状況がよくわかっていない。お前が本当に客人であるのなら無礼は詫びよう。とりあいず確認をとるためにもついてきてもらいたいのだが良いだろうか?」


 まだ疑われているらしいが、まぁなんとか即効牢屋行きということはなくなったらしい。


 にしてもこの男いま騎士団のナンチャラ隊長とか言った気がする。そんなに偉い人なのか?

 はっきり行ってそうは見えない。


 筋肉はたしかに無駄なくついているように見えるが、服装がそのへんにいる衛兵とさほど変わらないし、なんというのだろうか?顔というか雰囲気と言うかそういうのがどうも隊長という感じではないのだ。


 わたしはうーんと首を傾げる。


 「……聞いているのか?それとも確認を取られたら困ることでも?」


 そこまで言われてわたしは彼……レヴォラと言ったか?ものすごく言いにくい名前だな……


 じゃなくてレヴォラに質問をされていたことを思い出した。


 「ち、違います!!確認でもなんでもとってください!牢屋に行かなくていいならなんでもしますから!」


 ちょっと観点がずれた気もするがこれが本音だ。

 レヴォラは牢屋?とわたしが言った突拍子もない言葉に首をかしげている。


 しまった。余計なことを言ってしまったかもしれない。


 「なっ、なんでもないです。確認取るなら早く行きましょう。ついでに散歩をしても良いのかとか聞きたいです」

 「……そうか……ならお前を客として招待した人物の名前を教えてほしいのだが……」


 わたしを客人として招待した人物?

 そんなの、人の気持ちも考えずに自分のことしか考えていないあのクソ王子に決まっているだろう。

 いや、わたしを召還したという五大魔術師とやらでもいいかもしれない。


 そう思って言ってやろうと思ったがフッと思う。この男に、“わたしを招待したの王子です”または“五大魔術師です”なんていって信じてもらえるだろうか?


 もらえない気がする……


 ならセハンだとでも言おうか?

 いや駄目だ、セハンは診察があると言っていた。邪魔をするのは大人の礼儀としていただけない。

 

 と、すると……

 わたしの頭に浮かぶ人物は一人しかいない。



 「あぁえとその……フェジーさんです……」


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