幸せに浸る隙なんて与えてやりませんわよ?
「もし、自分の婚約者が恋に落ちる瞬間を目撃してしまったら、どうしますか?」
そう聞かれたら、あなたはどう答えるかしら。
もし、婚約者が恋に落ちる瞬間を目撃してしまったなら、わたくしは――。
----------
「いい加減にしろ、ガブリエッラ・バルベリーニ!いつもいつも魔術を使って嫌がらせばかり……!もう耐えられない!お前との婚約は破棄させてもらう!」
お昼時で混雑している学園の食堂。
その床に膝をつき叫んだのは、わたくしの婚約者であるダリオン・ガバネッリ様。その背に一人の令嬢――イレラ・ピコットを庇いながら、こちらを睨み上げている。
イレラは口に手を当てて怯えた表情をしているけれど、口の端が僅かに上がっているじゃない。彼に愛されているのは自分だという優越感が隠しきれていないわね。
それに気付いていない周囲の生徒達は、見世物を眺めるようにわたくし達を取り囲んでいる。
令息達の中には、わたくしに蔑みの目を向けている者も……。まるでわたくしだけが悪者のように。
(本当に、腹立たしいわ)
野次馬達を鋭く睨み付けたあと、わたくしは髪をばさりと後ろに払う。そして、憎々しげに二人を見下ろし、
「嫌がらせ?――それの何が悪いのかしら?」
と、自分の行いを肯定しながら、悪役令嬢らしく開き直ってやったわ。
わたくしはバルベリーニ公爵家の娘、ガブリエッラといいますの。
事の発端は、婚約者であるガバネッリ公爵家嫡男のダリオン様が、子爵令嬢のイレラと学園の廊下でぶつかったあの日。
わたくしが横にいるというのに、二人はまるで舞台の主役のように抱き合っていたわ。正確には、転びそうになったイレラをダリオン様が受け止めたのだけれど。
別にね、それだけなら怒らないわ。紳士として、ぶつかってしまった令嬢を助けるのは当然のことだもの。
でもね、抱き合ったまま暫く見つめ合っていたのよ。
人が恋に落ちる瞬間って、こういうことを言うのねと眺めていたけれど、その内の一人が自分の婚約者なのよ?そんなこと、許せまして?
まず。婚約者がいるのに、他の令嬢に目移りするだなんて論外ではないかしら。わたくしに不誠実よ。実に不愉快だわ。
けれど、気持ちをぐっと堪えたの。そんなこともあるわよねと自分に言い聞かせて、何も言わなかったわ。
多感な時期ですものね。滅多にない令嬢との触れ合いにドキッとしたのでしょう……と。
ただの気の迷い――それだったらわたくしも、えぇ、笑顔で流して差し上げられたわ。
何となく、そう……何となく、女の勘というのかしら。嫌な予感がして、わたくしの取り巻きの令嬢達に調べさせたの。
そうしたら、ダリオン様はご友人の令息を使って、イレラを紹介してもらっていたそうなのよ。
ね?「はぁ?」ってなるでしょう?
わたくしという婚約者がありながら、わざわざ令嬢を紹介してもらう意味が分からないわ。
ぶつかってしまったお詫び?そんなものが必要でして?接点を作るための口実じゃないの?と問い詰めたくて仕方なかったわ。
けれど、お詫びと言うのなら、一回の接触で終わるのでしょう。もしそれで関係が終わるなら、渋々不問にして差し上げようと静観していたの。わたくしからすれば、そこまで譲歩してやったくらいよ。
――二回目は、学園の裏庭で。人目を忍んで、手を握ってイチャイチャし始めたのよ。
婚約者がいるにも関わらずよ?これは間違いなく裏切りよね?
そんな不誠実な幸せに浸らせてやると思って?
わたくしはすぐに魔術を発動し、二人を目掛けてつむじ風を起こしてやったわ。叫びながら逃げていく姿が滑稽で、少し気が晴れたわね。
その時、決めたのよ。二人が身勝手な愛を育もうとするのなら、わたくしは全力で二人の邪魔をして差し上げましょう――と。
「よくもそんなふうに開き直れたな!外を歩いているだけで、バルコニーから水をかけてきたり突風を起こしたり、氷の魔術や土の魔術で転ばせようとしてきたり!」
「いくら魔術が得意だからって、野蛮です!今だってガブリエッラ様のせいで、こんな……っ」
イレラはそう言って、スカートをたくし上げた。露わになった膝は、確かに少し赤くなっているけれど……それってただの座り込んで出来た跡ではなくて?
(わたくし、嫌がらせはするけれど、怪我をさせるようなことはしていませんわよ?転びそうになった時は、風の魔術でクッションを作っていますもの。……そもそも、貴族令嬢がスカートを捲るだなんてはしたない。ほぅら、貴女のお望み通り、令息達が覗き見ているわ)
悲しげに目を伏せて、悲劇のヒロインぶっているイレラ。滅多にお目にかかれない令嬢のおみ足に、ダリオン様は鼻の下を伸ばし、令息達はごくりと息を呑んでいる。
そしてその後、令息達はお決まりのようにわたくしを睨むのよね。イレラが可哀想に見えるのでしょう。特に前方に並ぶ方々はお馬鹿ばかりなのね。嫌になるわ。
逆に、令嬢達は揃って眉を顰めている。当然よね。この女によって貴族令嬢の品位が下げられているのだもの。
「ふぅん?野蛮……ねぇ?わたくしを野蛮だと言うのなら、二人はふしだらな不届き者かしら?」
「なっ!?」
「だってそうではなくて?どうしてダリオン様は、その女と食堂にいらっしゃるの?わたくしという婚約者がありながら、最近はずっと一緒に行動していらっしゃるようだけれど」
わたくしは持っていた扇を広げ、目を細める。カッとなったダリオン様は勢いよく立ち上がった。
「彼女とは友人として親しくなっただけだ!学園で交友関係を広げるのは、別に悪いことではないだろう!」
「その距離感で友人ですって?冗談でしょう?そう言って誰が信じると思って?」
わたくしの声に、令嬢達はみな頷いた。
二人の距離感を友人だと認めてしまえば、己の婚約者がそういう振舞いをしかねないのだもの。令嬢達はわたくしの味方をするでしょうね。
ダリオン様が座り込んでいたイレラに手を差し伸べると、パチッと静電気のような火花が散った。二人は驚いたように手を引っ込めるも、再び手を伸ばし、その手を取り合う。
イレラは涙を浮かべながら、ダリオン様に支えられて立ち上がった。隣の男がわたくしの婚約者だと言っているのに、よくそんなにもしなだれかかれるものね。
――上等だわ。
「お前が歪んだ捉え方をしているだけだ!私がイレラ嬢と仲良くしているのが気に入らないからって、言いがかりをつけたいだけだろう!それで魔術を使って他者を傷付けるなど……お前のような女を、巷では悪役令嬢と言うらしいじゃないか!恥を知れ!」
ダリオン様はわたくしに指を突きつけ、嘲笑うような表情を浮かべた。
――悪役令嬢。わたくしは知らない間に、彼らや令息達からそう呼ばれるようになっていたのよね。
二人を害していたと認めているわたくしと、友人だと主張し関係性を認めないダリオン様。わたくしには罪があって、二人の仲はわたくしの誤解だと主張する。
そうやってわたくしを悪役に仕立て上げたいのでしょうね。本当に、何処までも許せない人達だこと。
「――ほう。では、お前の言う友人関係というのは、キスも含まれるんだな?」
二人に切り返しかけたところで、わたくしの後ろから質問が飛んだ。
登場した声の主に、その場の全員が顔を青くする。
「……もういらしたのですか?カリストス殿下」
「聞いていたら胸糞悪くなってきてな。こんな茶番、さっさと終わらせてしまえ」
「殿下、口が悪ぅございましてよ」
この言葉の汚い方は、カリストス・デ・サンクティス第二王子殿下。通称――不良王子ですわ。
学園に登校しているものの、授業は基本不参加。つまり、サボりの常習犯。そのくせ成績はいつも首席を取り続けているため、教師達も何も言えずにいるタチの悪い方よ。
ダリオン様もこれはまずいと感じたのか、じりっと一歩後退る。
「な、何故殿下が……!?それに、キスだなんて!」
「一度なら見間違いと言ってやれたかもしれないが、何度か目にしているぞ。庭園の奥にあるガゼボ、音楽準備室、裏庭のベンチ、図書室……だったか?随分と情熱的な口付けを交わしていただろう」
カリストス殿下の言葉に、場の空気が一気に変わったわ。
令嬢達は口元を隠すように扇を広げて目を細め、わたくしに批判的な目を向けていた令息達は、ぎょっと二人を見つめている。
「そ、そんなことしていませんわ!きっと見ていらした角度で、そう見えただけです!」
「そうです、殿下!誤解です!私達は友人で……」
「角度と言うが、俺を護衛するために潜んでいた影も見ているのにか?俺の言葉を否定するのだから、相応の覚悟と証拠が提示出来るのだろうな?」
必死で否定しようとしたイレラやダリオン様だけれど、王族の影まで出てくれば反論出来ないわよね。
二人の表情を見て、カリストス殿下は何かを思い出したようにくくくっと笑い出した。
「学園なんて退屈で仕方ないところだと思っていたが、ガブリエッラが二人に向かってつむじ風を起こした時は大笑いしたな」
その言葉に、わたくしは慌ててこほんと咳払いをした。あぁもう、あの日のことは思い出したくありませんのに……。
――実は、わたくしが最初に二人に向かってつむじ風を起こした時、なんとカリストス殿下は裏庭の木に登って休んでいらしたの。
でも、わたくしはそんなことに一切気付かず、校舎の影からイチャつく二人に嫌がらせをしかけた。
喚きながら逃げ去っていく二人を満足気に見送ったわたくしのすぐ側で笑い声がして、木の上から殿下が降っていらしたのよね。
ヒラヒラと木の葉が舞う中、獲物を見付けたと言わんばかりの瞳で見られて……。あの時ばかりは、「終わりましたわ……」と覚悟したわ。
「授業でもないのに魔術を人に向けたのだから、王子として事情を問わねばならないだろう?それで理由を聞いてみれば、至極真っ当な答えが返ってきたんだ」
「そんなっ!?魔術で人に悪さをすることが真っ当だなんて!」
「お前が言えたことではないと思うが?ガブリエッラが言ったのは『筋を通さない二人の不貞が見過ごせないので、幸せに浸る隙も与えないよう、邪魔して差し上げようと思いまして』だぞ。怪我をさせるようなことはしていなかったしな。お前達が筋を通せばよかった……ただそれだけのことだろう?」
カリストス殿下の指摘に、わたくしは「そうですわ」と肯定する。
わたくし達の婚約は、政略結婚を目的として結ばれたもの。公爵家嫡男で、いずれ当主となるダリオン様を支える相手として、わたくしが選ばれた――ただそれだけの関係。
けれど婚約には、家同士の約束あってのこと。
「カリストス殿下のおっしゃる通りよ。わたくしはダリオン様に対して、愛だの恋だの特別な感情を持っていないわ。でもそれが貴族としての婚約や結婚で、家同士の契約よ。わたくしを本妻とし、イレラを側妻や愛人にしたいと言うのなら、ダリオン様はわたくしに筋を通して、彼女の価値を示した上でわたくしに紹介すべきだったのではなくて?」
「う……っ」
「もしくは、イレラ自身を本妻にしたいと言うのなら、わたくしとの婚約を解消して公爵家の後継者の座を辞退し、弟や分家筋に譲ればよかったのよ。子爵令嬢が今から公爵夫人を目指すなんて、並大抵の努力では足りないもの」
「まぁ難しいだろうな。影に調べさせたが、そこの女は勉学も教養も平均以下のようだし」
カリストス殿下は肩を竦める。全員の前で成績を明かされたイレラは、恥ずかしそうに顔を赤らめて唇を噛みしめた。
そんな成績で、よく公爵夫人が務まると思えたわね。……いえ、教養がなく浅慮だからそう思えたのかしら。
「わたくしが許せなかったのは、婚約者がいる身で、そして婚約者がいると知っている身で、密かに愛を育もうとしたことよ。貴族の模範となるべき公爵家の嫡男である貴方自身が、そんな振舞いをするなんて」
わたくしは身を寄せ合う二人に溜息をこぼす。二人の身勝手な行動に影響された令息令嬢が、不貞をしても許されると認識したら、どう責任を取るおつもりだったの?
「最初にわたくしを裏切ったのはダリオン様、貴方でしょう。その姿を見て不誠実で不愉快だと、わたくしが思うのは当然ではなくて?」
さっきまでこちらに冷ややかな目を向けていた令息達に、怒りを孕んだ瞳を向けてやったわ。
わたくしは確かに性格が勝気で、言葉尻も強いのでしょう。
けれど、なにも全員に攻撃的なわけではないし、決して理不尽に怒っていたわけではないわ。わたくしがダリオン様に厳しかったのは、嫡男という自覚が乏しく、努力を怠ってばかりだったからよ。
(それなのに、注意すれば「煩い黙れ」と言われるし、「私を馬鹿にするな」と喚かれるし……。わたくしが婚約したのは同い年の令息のはずで、幼子じゃないのよ?それなのに、まるで子供のお守りのようなことをさせられて……挙句不貞だなんて!)
いくらわたくしの心が強くても、傷付きはするし疲弊だってするのよ?
わたくしを悪者に仕立て上げたい二人も、わたくしを悪者と決め付けて二人を擁護する令息達も、氷漬けにされていないだけ感謝してほしいわ!
令息達は慌てて取り繕うように、「まさか不貞をしていたなんて」と、さも知らなかったように振舞う。二人がイチャイチャしていたところを見ていた人もいるでしょうに。まったく小賢しいこと。
「ガブリエッラが自身の罪を認めた上で、あまりにも潔く白状するものだから面白くてな。危害を加えるような行いに高じないか、暫くこいつに付いて回っていたんだ。それにお前達、ある時からよく静電気が起こるようになっていないか?」
「えっ!?」
「どうしてそれを!?」
ニタリと笑うカリストス殿下に、イレラとダリオン様が驚愕の声を上げる。
「流石、学園内でも随一の魔力操作と魔術の技術力を誇る令嬢だな。お前達のそれは、ガブリエッラによる嫌がらせ兼探知魔術だ。一定時間経ってから触れ合おうとすると静電気が起こり、居場所を探知出来るようになっているらしい」
「居場所の探知だと!?」
「な、なによそれ……っ!」
憎々しげにこちらを睨む二人に、わたくしはパシン!と扇を閉じた。
「殿下がおっしゃってくださったでしょう。筋を通さない二人の不貞が見過ごせないから、幸せに浸る隙も与えないよう、邪魔して差し上げたのよ」
「お、お前っ!」
「さっき、『いつもいつも魔術を使って嫌がらせばかり』と言っていたわね?言い換えれば、それだけ二人が不貞を重ねていたということではなくて?わたくしは魔術で探知してから嫌がらせをしに行っていたのだから」
冷めた眼差しで指摘すると、ダリオン様はハッとして顔を青くした。自分の発言こそ、二人がどれだけ一緒にいたかを物語っていたのだもの。
「彼女からの罰を受けてもなお一切反省せず、己の罪を認めないとは。ガブリエッラはこれほど清々しく堂々としているのに、滑稽で見苦しいことこの上ないな」
二人は口をはくはくさせるも、何も言葉が出てこないみたいね。
カリストス殿下は、まるで舞台役者のように手を広げながら二人に向かっていく。
「まぁ、これだけ大勢の前で宣言したんだ。お前の主張する『魔術での嫌がらせに耐えられないから、婚約を破棄したい』という要望を叶えてやろうじゃないか」
「えっ!?本当ですか?」
イレラは愚かにも、嬉しそうに弾んだ声を上げた。けれど、ダリオン様の表情は悪くなる一方。
「王族の俺が聞いていたことを、今更違えはしないな?今この場で、バルベリーニ公爵令嬢ガブリエッラとガバネッリ公爵令息ダリオン、二人の婚約破棄を認めよう!」
「わぁっ!ダリオン様!私達、これから堂々と一緒にいられるようになるんですね!嬉しいっ!」
イレラは幸せそうにダリオン様の腕を掴む。そんなダリオン様は、真っ青な顔で「ま、待ってくれ……」と呟いているけれど。
「二人の不貞により魔術が発動し、嫌がらせを受けていたんだ。どちらが先に悪事を働いていたのかは一目瞭然だな。よって、ガバネッリ公爵令息ならびにピコット子爵令嬢の有責による婚約破棄とし、それぞれの家には俺の名で通達を送ろう。――行け」
「「「はっ」」」
何処からともなく現れた黒装束の男達が殿下の前に跪き、次の瞬間には姿を消した。まぁ、あれが王族の影なのね。
「……え?」
時間を空けて、間の抜けた声を漏らすイレラ。それと同時に、ダリオン様は膝から崩れ落ちた。ふふっ、ご愁傷様。
「公爵令嬢を侮辱し、軽んじ続けながら愛を貫いた二人だ。それぞれの家には多額の慰謝料の請求が届くだろう。だが、望み通り、ガブリエッラから二人への嫌がらせはなくなるんだ。どんな困難が待ち受けていようとも、末永く愛を育み続けるといい」
くつくつと笑い、カリストス殿下はわたくしに手を差し出した。
「嘘……。どうして?ダリオン様と私の有責……?慰謝料?なんで?どうして……っ!」
ようやく自分がどうなるのか理解したイレラは、頭を抱えて喚き散らしている。
なんで?だなんて、笑ってしまうわ。愛されていれば何をしても許されると思っていのかしら。愚かしいことね。
わたくしは勝利の笑みを浮かべ、殿下の手を取った。くるりと身を翻し、二人に背を向ける。
――あぁ、清々したわ!いい気味ね!
意気揚々と一歩を踏み出し、ヒールの跳ねるような音が鳴った――その時。すぐ側で、弧を描く瞳がわたくしを捉え、覗き込んできた。
「あぁそれと、ガブリエッラ。お前にも沙汰を言い渡す」
「…………えっ?」
「自分で罪を認めていただろう。嫌がらせとはいえ、悪意を持って魔術を他人に向けてはならない。当たり前のことだな?」
「……はぁ?」
わたくしは令嬢にあるまじき声を出して、殿下を見上げた。
普通こういう時は、打ちひしがれる二人を背に、華麗に立ち去る場面ではないかしら!?まったく格好が付かないじゃないの!
「お前には、俺の監視の元、魔術での奉仕活動を命じる」
「〜〜っ!分かりましたわ!やればいいんでしょ、やれば!」
周りの生徒達はぽかんとした表情でわたくし達を見ている。それはそうでしょうね!?
せめて食堂を出て、誰も聞いていないところで言えば宜しいでしょう!少しばかり空気を読んでくださればいいのにっ!
不機嫌を露わにして顔を背けると、ぐいっと手を引かれ腰を抱かれた。突然のことにぎょっとすると、カリストス殿下は、
「お前みたいな面白い女を、俺が簡単に手放してやると思うなよ。――覚悟しておけ」
と耳元で囁いたあと、わたくしの頭にキスを落としてきた。途端に、令嬢達の黄色い悲鳴が上がったわ。
身を引こうにもがっちりと腰を抱かれていて、離れることも叶わない。
「なっ、な……っ!?」
「なんだ、ガブリエッラ。そんな乙女みたいな表情も出来たんだな。ははっ!これはいいものが見れた」
「〜〜っ!殿下っ!!」
からからと笑うカリストス殿下に、叱り付けるように叫ぶわたくし。
せっかく忌々しい婚約者から解放されたばかりなのに、なんだか厄介な人に囚われてしまったのではなくて?
もうっ!勝利の余韻に浸る隙くらい、与えてくださいませ!
お読みくださり、ありがとうございました!
お馬鹿な二人だけでなく、ガブリエッラも殿下の手のひらで踊らされた上で裁かれちゃいましたね。
まぁ、怪我をさせていないとはいえ、人に向かって魔術を使っちゃいけませんから(苦笑)
こちらの作品は、
▶短編の新シリーズ:恋落ち目撃シリーズ
の1作目として投稿いたしました。
本日より毎週金曜日20:30頃に、4週続けて投稿を予定しております!
多種多様なカップルや展開をご用意すべく、濃いキャラクター達が集ってしまったやもしれません(苦笑)
「このキャラ好き!」と感じていただける作品もあれば、「自分の好みとは少し違うけれど、こういうキャラが刺さる方もいそう」と感じる作品もあるかと思います。寛大な心でお読みいただけますと幸いです。
来週の公開予定タイトルは、
『わたくしの婚約者が“運命の人”と出会いすぎる件』
です。どうぞお楽しみに!
また、少し宣伝させてください!
現在連載中(完結保証):
【 入れ替わり令嬢はもう黙らない。〜モラハラ婚約者を捨てたら公爵令息が味方に!?鏡合わせの私達は幸せを掴みます〜 】
こちらが明日完結いたします!
完結してから読むのがお好きな方、今から追いかけていただけますと、ちょうど最終話投稿の頃合いかと思います。是非ご覧くださいませ。
いいねやブックマーク、評価、感想・レビューなど、とても励みになります!
応援宜しくお願いいたします( .ˬ.)"




