異常!な全校集会
なんだか見られているような気がする。
新と天十郎と一緒に体育館へ向かう。
廊下を歩いていたら、やけにチラチラと視線を感じた。
最初は転校生の俺が珍しいのかと思ったら、それは違うみたいで
「天十郎先パイー!」
とあちこちから黄色い声が飛ぶ。
「天十郎は悪目立ちするからねー、まあ人気者なんだけど」
新はそう自分には関係ない。みたいな言い方をしたけれど
俺にはどっちも人気者にみえるんだが。
密かに新先輩もかっこいいよね、なんて声も聞こえる。
天十郎は確かに可愛いし、綺麗だと下から上に舐めるように見ると
「こっち見んな」
とまた言われてしまった。
黄色声にもまったくと言っていいほど反応を示さず天十郎な足はまっすぐに体育館に向いていた
体育館に入ると全校生徒がクラス別に並んでいて
当たり前だけど、知らない人が多すぎて少し尻込みしてしまう。
「秀平ー!2-Aはこっち」
新に誘導されるがまま俺は自分のクラスの列に並んだとりあえず一番後ろ
新は手際のよい感じでクラスの人数を確認し、全員いることがわかると、座っていいよーと手で合図した
すごく学級委員っぽい
真ん中くらいに天十郎の金髪がみえたものすごく目立つ
俺は静かに座って退屈な全校集会がはじまるのを待った
全校集会とかなんとか式とかそういうのは退屈なものときまっていたのに
いや、決め付けていたのだけど
これほど印象に残った事例はない。
そもそもこういうのはいつも俺に関係ない感じではじまり、関係なく終わるのだから
今回もそうだと、他のパターンはまったく考えてなかった。
転校生の俺でも長くて嫌になる校長の話をうとうとしながら聞いたあと
司会の人が“生徒会長あいさつ”
と言ったとこまではぼんやりとだが現実としての記憶がある。
問題はこの生徒会長なのだ
「生徒会長、赤名薫です」
マイクの前でそう言った男はどうみても生徒会長には見えない身形で挨拶した
長髪でシャツのボタンも余裕で第2くらいまであいている
生徒会長がカチッとした眼鏡で秀才でお堅いイメージというのは時代遅れなんだろうか
「今日はみなさんに嬉しいお知らせがあります!」
全校生徒がわーっと沸いた
俺には嬉しいことが何かわからなかったから
明るくてみんなに好かれそうな生徒会長だなーと、またうとうとし始めた目を瞬きしながら聞いていた。
「3-A本田貴と2-C宮元一樹の二人がめでたく付き合うことになりました。カップル成立です!」
そう言われて全校生徒から歓声があがる。
カップル成立?なんの報告だよそれ…
しかも聞き間違えじゃなきゃ両方男の名前のような気がしたんだが…まさかな
俺がいろいろ考えている内に生徒会長の話は進んでいく
「2人は同じサッカー部で宮元くんが本田先輩に一目惚れ、厳しい練習を2人一緒に乗り越えて、愛しい気持ちが募りにつのり、ついに先日部室で告白したところみごとOK!をもらえたそうです」
つまり2人はガチでそういう関係なのであって
しかも全員その内容に疑問を抱くことなく歓声の拍手を2人に送っていた。
ここで?が頭に浮かんでいる自分の方がおかしい気がして俺は周りに合わせてとりあえず手を叩いた。
拍手の音に囲まれて妙な一体感を感じる。
「宮元くんが生徒会に相談に来て早二ヶ月、いろんな恋の悩みも打ち明けてくれれば我々生徒会は必ず役に立つ!恋が実って本当に嬉しく思う。これをもって2人を学園公認カップルに認定する!」
おめでとー!おめでとー!
あちらこちらからお祝いの言葉が飛び交う。
なんだこの雰囲気、この異様なテンションに早くも飲み込まれそうだった。
眠気のすっかり飛んだ目でステージの上の会長から目が放せなくなっていた。
マイクの前にしっかり向きなおした生徒会長はまだ言葉を続ける。
「私は同性愛を認める!この学園のモットーは愛してます、愛してね?愛し愛され喜嬉楽々(ききらくらく)!つまり、好きな同性ができたら生徒会に相談にくるように!以上!」
以上!と言い放ってステージを降りていく会長を目で追いながら
俺の頭の中では、以上!が異常!!!!に変換されていた。
そしてこのすぐ後、この変な生徒会長にはとりあえず関わらないようにしようと
心の中で思っていたところ、思いもよらない事態が起こる。
「あーそうだ、言い忘れたことがあった。2-Aに転校してきた佐倉秀平くん!君を本日から生徒会メンバーに任命する!後で生徒会室に来るように!以上!」
異常、異常、異常、異常、、、、!!??
全校生徒が少しどよめいたあと、泳いだ視線はやがて俺に全部命中した。
「は?ぇ、」
現実味のない驚きを誰にぶつけることもできず、俺の頭はパニック状態になる。
とりあえず関わらないようにしようと思っていた生徒会長に自分の名前を呼ばれたような気がしたんだが。
俺は何か目をつけられるようなことをしただろうか…
いや、本日登校してきてからまだ4時間くらいしかたってないのにそれはない。
ないないないないない、意味がわからない!
俺が意味のわからないことを考えるのに頭をフル回転させている間に全校集会は終ったらしい。
「秀平ー!教室戻るよー」
新に名前を呼ばれて少し我に返る。
一緒にいる天十郎が腕を組み仁王立ちでなぜか俺を思いっきり睨んでいた。
俺、何かしたっけ?
それが俺と生徒会長、赤名薫との出会いだったわけで。