あなたは童貞ですか?
あなたは童貞ですか?
はい ・ いいえ
高校の編入手続きの資料をパラパラとめくりながら
俺は一枚のアンケート用紙の一問に目が釘付けになっていた。
「なんだこの質問…」
あ な た は 童 貞 で す か ?
その文字を一字一句捕らえ何回も読み直す
俺の熱視線で紙に穴があきそうだ
なぜこんな私情を回答しなければならないのだろうか
匿名だったら素直に○をつけてやらんこともなかったが
下の方にしっかりと名前を書く欄があった。
まてよ俺、せっかくの高校デビューをやり直すチャンスなんだ。
入学早々童貞宣言してどうする。
俺の中で悪魔が囁いた。
『どうせお前のことなんて誰も知らないんだ経験済みってことにしとけよ』
それもそうだ…と、いいえに○をつけようとしたら俺の中の天使が囁く。
『だめよ!自分に正直に生きなさい。童貞は恥かしいことじゃないのよ』
確かに自分に嘘をつくのも心苦しい。俺の心の中にもとりあえず善良な天使がいるようだ。
『バカ、高2で童貞だなんて恥ずかしいだろ、彼女いない歴=年齢=童貞!』
悪魔に罵倒されて心が折れそうになる……
別に俺は彼女がいなかったわけじゃないけど
とことんそういう機会に恵まれなかっただけなんだ…
『可哀相に、見栄をはることであなたが少しでも楽になれるのなら私は止めません』
そんな哀れんだ目で俺を見ないでくれ頼むから。
俺の天使…きみは優しすぎるよ。
そして俺は自分を甘やかすように
いいえ
に丸をした。
この小さな見栄が後々散々な高校生活に繋がるとは夢にも思ってなかったわけで。