繰り返される町
神谷悠斗は、事故現場から家へ帰った。
昨日と同じ夜。
昨日と同じ空気。
昨日と同じ静かな住宅街。
だが、悠斗の頭の中だけが違っていた。
「……本当にループしてるのか」
家のドアを開ける。
靴を脱ぐ。
リビングへ行く。
すべて昨日と同じ動きだ。
テレビでは同じニュース番組が流れている。
母親がキッチンから声をかける。
「悠斗、帰ったの? ご飯あるよ」
昨日と同じ言葉だった。
悠斗は背中に冷たいものを感じた。
「……ああ」
返事も昨日と同じになってしまう。
食卓に座る。
テレビ。
母親の会話。
すべてが昨日の再現のようだった。
悠斗はスマホを見た。
時刻は23時40分。
昨日と同じ時間だ。
「……もし」
悠斗はあることを考えた。
この一日が本当に繰り返されるなら。
明日の朝。
また7月14日になるはずだ。
「……試すか」
悠斗は机にメモ帳を出した。
ペンを持つ。
そして書いた。
『明日は同じ日になる』
さらにその下に書く。
『事故は21時12分』
そしてもう一つ。
『ループしている』
メモ帳を机の上に置いた。
これが残っていれば。
証明になる。
悠斗はベッドに入る。
目を閉じる。
だがなかなか眠れない。
事故の音が頭の中で繰り返される。
ドンッ!!
ガラスの音。
悲鳴。
「……」
気づけば、眠りに落ちていた。
そして。
目覚ましが鳴る。
午前7時。
悠斗はゆっくり目を開けた。
心臓の鼓動が速い。
「……まさか」
スマホを見る。
日付。
2026年7月14日。
「……まただ」
ループしている。
確実に。
悠斗はベッドから飛び起きた。
すぐ机を見る。
メモ帳。
そこには。
何も書かれていなかった。
真っ白だった。
「……消えてる」
昨日書いたはずの文字がない。
悠斗はメモ帳を手に取る。
紙をめくる。
全部白紙。
「物は残らないのか……」
この町では。
一日が終わると。
すべてがリセットされる。
だが。
「……俺の記憶だけ残る」
悠斗はカーテンを開けた。
町はいつも通りだった。
通学する人。
犬の散歩。
新聞配達。
昨日と同じ朝。
同じ世界。
悠斗は呟いた。
「だったら」
「この町を全部調べてやる」
ループしているなら。
何度でもやり直せる。
何度でも試せる。
そして。
事故の時間。
21時12分。
その意味を見つければいい。
だが悠斗はまだ知らない。
この町で。
自分以外にも、ループを知っている人間がいることを。
そして。
その人物が。
もう悠斗を見つけていることを。




