事故の時間
神谷悠斗は、コンビニ前の道路に立ち尽くしていた。
目の前では、昨日と同じように黒い車が電柱に突っ込んでいる。
ドンッ!!
衝突音。
ガラスの割れる音。
周囲の悲鳴。
すべてが――昨日と同じだった。
「……嘘だろ」
悠斗は震える手でスマホを取り出す。
時刻を見る。
21時12分。
事故が起きた時間だ。
昨日と同じ。
いや。
完全に同じ出来事だ。
「なんでだ……」
周囲の人たちは慌てている。
「大丈夫か!?」
「誰か救急車!」
警察が来る。
救急車が来る。
昨日と同じ流れ。
誰一人として、違和感を持っていない。
悠斗だけが知っている。
この光景は。
もう一度起きている。
「……もし」
悠斗の頭に、ある考えが浮かぶ。
「もし、本当にループしてるなら」
事故を止められるんじゃないか?
悠斗は道路の向こうを見る。
遠くから、黒い車のライトが近づいてきている。
昨日と同じ車だ。
同じスピード。
同じタイミング。
「止めれば……」
悠斗は走り出した。
道路へ飛び出す。
手を振る。
「止まれ!!」
車のライトが迫る。
クラクションが鳴る。
パァァァン!!
だが。
キィィィィ!!
急ブレーキ。
タイヤが滑る。
車は制御を失った。
ドンッ!!
電柱に衝突。
結局、事故は起きた。
悠斗は道路の真ん中に立ち尽くしていた。
「……止められない」
事故は必ず起きる。
まるで――
決まっている出来事のように。
悠斗はスマホを握りしめた。
画面を見る。
21時12分。
事故の時間。
そして気づいた。
昨日。
事故の直前。
スマホを見た時間も同じだった。
つまり。
この町では。
出来事の順番が決まっている。
「……待て」
悠斗は考える。
もし。
本当にループしているなら。
やれることがある。
何度でも。
同じ一日を試せる。
「だったら」
悠斗は呟いた。
「この一日を調べ尽くせばいい」
事故の原因。
この町の異常。
そして。
時間が繰り返される理由。
悠斗はまだ知らない。
この町のループが。
ただの事故ではないことを。
そして。
その中心にいる人物を。




