09
翌日
私はレイさんとレイさんの仲間の人達と車に乗りこみヴァイス地区へ行き全額を下ろしその封筒をレイさんに渡した。
「……ほんまにええんか?」
「何がですか?犯人探しですか?」
「ちゃうわアホ。この金や。生活とか出来るんか?」
「大丈夫です。なんとかします。」
「……そうか。まぁ困ったらいつでも言いや。」
「レイさんはお金を貸す人ですもんね。」
「なんか嫌やなその言い方。」
レイさんはケラケラと笑う。
「では、これで……。」
私はレイさん立ちに頭を下げ駅へと向かう。
レイさんは何も言わず、暫くすると車がブルータル地区方面へ走り去る音が聞こえた。
世間的には絶対に頼りにしてはいけない人達。
警察に任しておけば良いのに。そう言われても仕方がないだろう。
でも、警察はいつまで経っても私が望む言葉をくれない。
涼の帰り道に数台の監視カメラが設置されているのにも関わらず、未だに分からないのはどうしてなのだろう。
レイさんとキョウさんが言っていたように、もしかすると隠蔽されているのではないだろうか?と思ってしまう。
きっと彼らは、犯人さえ見つけることが出来れば、後はどんな手段を使ってでも私の望む答えを導き出してくれるだろう。
人としてそれは駄目だと言われるかもしれない。
他にやり方がある。と言われるかもしれない。
そんな事旦那さんも息子さんも望んでいない。と言われるかもしれない。
そんな事はわかっている。
落ち着きなさい。と言う人がいるかもしれない。
考え直しなさい。と言う人がいるかもしれない。
人に言うのは簡単です。
同じ気持ちになっても実行しない。しないのが普通。と言う人がいるかもしれません。
なら、私は普通じゃなくても良いのです。
私は私のやり方で、死神退治をしたいのです。
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「ほいよ。」
レイはいつもの店で寛いでいたキョウに封筒を渡した。
「あ?なんだい?」
「昨日の女から渡された金。」
「あァ。」
「……キョウ。」
「なんだい?」
キョウは封筒を開き札束を取り出すと手馴れたように数え始める。
「犯人探しってどうしたらええんや?」
「んー?あァ、それは大丈夫。」
「もしかしてなんか目星付いてんのか?」
「いやァもうちょっとしたら来る客が知ってるかもってだけだけど。」
「……もしかして」
「多分レイが思っている人で合っているよ。」
「知らんかったらどうすんねん?」
「俺もあんまりあの辺は詳しくなくてねェ。
今一応赤城と輝血に調べさせているからなんとかなるよ。」
「ふふ。」
「……なんだい?気持ち悪い。」
「いや、キョウにもまだ優しさが残ってるんやなと思って。」
「喧嘩を売ってるのかい?」
キョウは札束を封筒に戻しレイを軽く睨みつける。
「ちゃうちゃう。
ほら、身内……俺ら仲間には優しいけど客には結構冷たいやん。だから珍しいなと思ってな。」
「あァ、俺も普段やってる事がやってる事だから偉そうに人の事は言えねェけど、胸糞悪いなァと思って。」
「極悪なキョウに胸糞悪いって言わせるってよっぽどやで。」
「……やっぱり喧嘩売ってんのかい?」
レイとキョウが騒いでいると「キョウさん」と赤城から声が掛る。
「おォ、調べ終わったかい?」
「はい。ですがその前に来客です。」
「そうかいそうかい、じゃァ行くとしますかね。」
キョウは赤城に封筒を渡しレイに手を振り客の元へと向かった。
キョウの後ろ姿に笑顔で手を振り見送ったレイは、キョウの姿が見えなくなるとスマートフォンを取り出し今回の事件を調べ始める。
遠足帰りに誘拐か?という見出しの記事が目にとまり、レイはその記事を読み始める。
楽しみにしていた遠足帰りに起こった悲劇。
水瀬涼くん(7)はこの日の為に母親とてるてる坊主を作った、と周りに話していたという。
その日の天気は良くはなかったものの、遠足先で雨が降る事は無かった。
友達と楽しく過ごした涼くんはこの後帰らぬ人となる。
遠足先から学校へ着き、下校時刻は悪天候で視界が悪く声も通りにくい状況だった。
涼くんはいつも真っ直ぐ家に帰っていたと言う。
そんな涼くんは最近自宅の鍵を持ち歩いており、その鍵には母親が無くさぬようにと青い紐が付けられていた。
これが、涼くんの尊い命を奪った道具である。
涼くんは何者かに拐われた後この青い紐で首を絞められたことによる窒息で死亡したと思われる。
涼くんが発見されたのは翌日早朝。
自宅待機と言われていた母親が待ちきれずに探しに行き、自宅から離れた人通りの少ない場所で発見された。
近隣住民が女性の叫び声を聞き外に出た所、涼くんを抱え泣き叫ぶ母親を発見。
そのまま警察へ連絡を入れ事件発覚となった。
近隣住民はその時の様子をこう語る。
「この世の終わりのような叫び声で、今も目を閉じるとあの時の光景を思い出す。
まさか自分の家の近くでこんな事件が起こるだなんて思ってもみなかった。
早く犯人が捕まることを願います。」
「なーんか読みようによっちゃ母親が怪しまれそうな書き方やな。」
レイはその記事を読むのを辞める。
「……身内が、それも自分の子供がってなると余計辛いわな。」
レイはスマートフォンをポケットに入れ店から出た。
「とりあえず俺は俺の仕事せなな。」
レイは大きな欠伸をしながら西倉庫へと向かう。
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「で、何も知らないかい?」
「……すみません。」
椅子に座り煙草を吸うキョウの前で正座をする男。
「そのすみませんってのは、何も知らなくてすみませんなのか、知っているけど話せませんのすみませんなのかどっちだい?」
「あ……えっと……。」
「……ふっ、ははっ。分かりやすいねェ。そうかいそうかい。知っているのかい。」
「いや、あの……でも流石に話す事は出来ないです。」
「……そうかい。おい、赤城。」
「はい。」
キョウの隣に立っていた赤城は正座をする男に一枚の紙を見せる。
「こ……れは……。」
その紙を見た男は目を丸くする。
「教えてくれりゃァ特別に安くしてやるぜェ?」
ニヤリと笑うキョウ。
安くするという言葉に喉を鳴らす男。
「で、どうすんだい?」
キョウの問い掛けに男は下を向き拳を強く握る。
バレれば首が飛ぶかもしれない恐怖と欲がぶつかり合う。
「別に話さないなら話さないでいいよ。こっちで調べりゃァいい話だ。無理にとは言わないけどねェ。」
キョウの言葉を聞き男は頭をフル回転させる。
自分のこの立場は守らなければならない。
だがしかし、話さなければ自分がここへ来ていることをバラされるかもしれない。
こんな所まで自ら足を運んでいる、とバレた時点で立場もクソもない。
それに今、目の前には安値で高品質な餌がぶら下げられている状況だ。
男が顔を上げるとこちらを見つめるキョウと目が合う。
そして男はキョウの目を真っ直ぐ見て答える。
「その事件は───」




