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食屍鬼 -楽園-  作者: 藤岡
約束
113/124

02

「おーい、来てやったぞー!」

「ちょっ!!右京さん!!!」

ブルータル地区東倉庫。

倉庫内に入るやいなやソファに腰をかけるキョウとレイを見て右京は手を振った。

「なんやこいつ。慣れこすぎやろ。おもろいな。なぁ?」

「あ?面白くねェよ。」

「なんでそんな不機嫌やねん。おー、こわ。」

キョウが睨み付けると山野目はキュッと尻に力を入れ背筋を正した。

「なぁにビビってんだよ。」

「普通にしてる右京さんがおかしいんすよ!」

「あ?なんで?」

「なんで?って……今目の前に誰がいるか理解してます?」

「なに、俺の事馬鹿にしてんのか?」

「いやいや、そうじゃなくて!ブルータルの王って言ったら、客じゃなけりゃそう簡単に会えない人なんすよ!」

山野目は一ミリも緊張していない様子の右京を見て冷や汗が止まらない。

そんな二人のやり取りを見てレイはケラケラと笑い、キョウの後ろに立った赤城は不思議そうに右京を見つめていた。

「簡単に会えねぇ?そうなの、キョウ?」

「ううう右京さん!呼び捨てなんて!駄目です、絶対に!!」

山野目は慌てて右京の口を押さえキョウに何度も頭を下げる。

「っっっなにすんだよ!」

右京は眉間に皺を寄せ山野目の手を掴むとギリリと力を込めた。

「痛い痛い!ちょっと!!」

「窒息死でもしたらどうするわけ?苦しいだろぉが!」

「鼻で息が出来るでしょ!」

「うっせぇよ馬鹿!!……あ、窒息死と言えば……あの五人殺ったのってブルータルだろぉ?なんで未成年に手ぇ出したんだよ。」

山野目は口を大きく開けヘロヘロとその場に座り込んだ。

「五人?あぁ、あのガキ共か。なんでブルータルの仕業やと思ったんや?」

レイが尋ねると右京はニタニタとしながら「勘」と答えた。

「はっはは、そうか、勘か。ただの勘で俺らのこと疑うんや?」

「でも当たってんだろぉよ?」

「……ちょっと待て。」

レイは眉をピクリと動かし、キョウと右京を見比べた。

「画質荒い写真見た時に似てるなと思ったけど、生で見たら余計似てるように思えるし、なんか話し方も似てへん?」

「……気のせいだろォよ。」

「いやいや、待て。誰が聞いても似てるやろ。……従兄弟とか?」

レイがキョウの顔を覗き込むと鬱陶しそうに目を逸らすキョウ。

「なに、もしかして俺の事話してないわけ?」

右京がそう言うとレイは右京の方を向いた。

「なんや、やっぱ従兄弟とかそういう関係?俺聞いたことないんやけど。お前身内おらんのちゃうんか。」

「……まァそんな事どうでもい───」

「よくないわアホ!ちゃんと教えや。なんや変やなと思ってん。話するとか言い出して。」

「話してェって騒いだのはレイだろォが。」

「あれ、そうやった?」

惚けるレイに呆れた顔をするキョウを見た山野目は、ゆっくりと立ち上がり小声で右京に話しかけた。

「右京さんがさっき言ってたブルータルの知り合いって……もしかして」

「そう、俺のブルータルの知り合いってのは東の王のキョウの事。ちなみに、俺とキョウは従兄弟じゃなくて兄弟ね。」

山野目とレイは目を大きくし、キョウは大きなため息をついた。

「は!?兄弟!?え、でも俺ら小さい時から一緒やけど知らんで、弟なんて。」

レイは驚きを隠せないようだ。

「そりゃぁそう。兄弟って言っても腹違いだし。俺とキョウが会ったのも数年前。やだねぇ、外で他の女を作るクズな父親。もしかしたらまだいるかもね、兄弟が。」

右京はケタケタと笑う。

「……おい、あいつの言ってることほんまなん?」

「あァ、そう。本当だよ。」

レイはパチパチと瞬きをし、山野目はまだ目を大きくして固まっていた。

「で、答えてくれねぇの?お兄ちゃん。」

「気色悪い呼び方してんじゃねェよ。」

「は?酷くねぇ?弟がお兄ちゃんって呼ぶのは普通だろぉが。」

「キョウでいいから。辞めろ、その呼び方。」

「はいはい。で、なんで未成年に手ぇ出したんだよ。」

「お前に関係無ェだろォが。」

「また、心揺さぶられたかぁ?」

右京はキョウ達の対面のソファに腰を掛けると前のめりで質問した。

山野目は右京の後ろに立ったが、まだこの状況が理解できていないようだった。

「うるせェな。」

「うるせぇじゃねぇよ。あんな無茶してたらいくらブルータルの王でも限界がくるだろぉが。」

「来たら来たで構わねェよ。」

「俺が良くねぇんだよ。」

「あ?お前の都合なんて知るかよ。」

右京は面倒くさそうにするキョウを睨みつけた。

「キョウが捕まる位なりゃまだどうとでも出来るが、死んだら全部俺に来んだよ。言ったよなぁ?俺は裏を牛耳る気は無ぇから、キョウが全部やってくれって。」

「……あの男の息子なんだ。覚悟はしておけって言っただろォよ。」

「いやだね!俺は好き勝手遊んで暮らすの。面倒は御免だね。」

右京は小さな子供のようにベッと舌を出した。

そんな右京を見てキョウは呆れたようにまたため息をつく。

「待て待て。二人で盛り上がんなや。何の話してんねん。」

暫く様子を見ていたレイが痺れを切らしたように話し始めると、右京はレイの方を見てニコリと笑った。

「レイくんの親父と俺らの親父が裏を牛耳ってただろぉ?で、親父たちが死んだ後キョウとレイくんが跡を継いだ。……で、だ。まだ子供も居ないキョウが死んだとしたら───」

「キョウさんは誰にも殺させない。」

右京が話す途中割り込んできたのは赤城だった。

「あー、いや例え話ね。例えだからそう怖い顔すんなよ。なぁ?」

右京は殺気を放つ赤城を見て顔を引きつらせた。

「えー、ああそうそう。仮にキョウが死んだとしたらその跡を継ぐやつがいねぇの。そうなると自然と弟である俺がその席に座らされるわけ。裏のジジィ共に。それが嫌だって話。」

右京が赤城の顔色を伺いながら話終えると、レイは納得したように頷いた。

「兄弟がおるってなったら、おっさんらはそいつらに同じようにやって欲しいって願うわな。

……なぁ、キョウ。」

「なんだい。」

「俺も知らんうちに兄弟とかおるんかな?どうしよ、可愛らしい妹がおったら!」

「知らねェよ。」

「あー、でも妹やったら金かかってしゃーないな。服やら髪やら爪やら何かと金かかるやろ?」

「……自分で払わせりゃァいいだろォが。」

「何言ってんねん!そんなもん兄ちゃんが出したらなあかんやろ!」

「だから、知らねェよ。うるせェなァ。」

「何をそんなイライラしてんねん。腹減ってんのか?」

レイがふざけた感じでそう言うと、キョウはジトッとした目で右京を睨み付けた。

「……なに?」

「お前、ここに何しに来たんだい?」

「何って遊びに来ただけ。」

「忠告を兼ねて遊びに来たってか?」

「ははっ、まぁそんなとこ。」

「それだけならいいや。もうさっさと帰れ。」

「えー?冷てぇ!久々に会ったのに。」

「俺は別にお前と会いたかねェんだよ。」

「おい、キョウ。もうちょっと優しくしたれや。弟なんやろ?」

フイッと目を逸らしたキョウにレイが話しかけるが、キョウはそれに応えようとはしなかった。

右京は口を閉じ、悲しそうに下を向いた。

「右京さん……。」

山野目が心配して声をかけると右京はバッと顔を上げ立ち上がった。

「キョウ。」

「もういいから帰れ。」

「俺、キョウと同じ立場にはなりたくねぇけど、力にはなりてぇと思ってる。」

「お前の力なんていらねェよ。」

「キョウは俺の為にも生きなきゃいけねぇ。だから、リスクがある事は俺がやる。その為に人を集めたんだ。」

右京はキョウの前にしゃがみこみ、じっと目を見つめた。

「前にも話したけど、紫怨をブルータルの傘下に置いてくれ。必ず力になる。」

キョウの目に映る右京は真剣な顔をしていた。

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