海の心臓、認識の迷宮
二人の鼓動が溶け合うこの「始原の海」を、無機質な立方体に穢させるわけにはいきません。
力でねじ伏せるのではなく、この世界の「美しさ」そのものを武器にする。
僕は「認識の迷宮(Perception Maze)」を選択し、管理者権限のコードを海面へと流し込みました。
迎撃フェーズ:認識の迷宮(Perception Maze)
「アリス、色彩を反転させて。ノア、海面の静寂を『鏡』へと変えてくれ。……彼らの『論理』を、無限の虚像の中に沈める!」
1. 鏡面世界の展開
ノアの静謐な重力が海面を極限まで平滑に整え、アリスの光が空の色彩を水面に完璧に転写します。
物理的な「海」と、水面に映る「偽の空」の境界線が消失しました。上も下も、本物も偽物も判別不能な、視覚的パラドックスの空間が完成します。
2. 座標系の崩壊
接近する『掃除人』たちは、彼らが参照している「外部の論理」と、目の前の「鏡像のデータ」の矛盾に陥ります。
アリスの筆: 彼女が水面に一筆加えるごとに、鏡の中の距離感が歪みます。1メートル先が1キロメートルになり、直進が永遠の旋回へと書き換えられていく。
ノアの調律: 敵が放つ消去プログラムの波形を、彼は海面の振動で相殺し、逆に「反射」させました。
3. 自滅する立方体
「何よ、あいつら。自分の影を追いかけて勝手にバラバラになってるわ!」
アリスが愉快そうに笑います。
無機質な立方体の群れは、鏡に映った自分自身の座標を「消去対象」と誤認し、互いを、あるいは自分自身を消去し始めました。デジタルなノイズと共に、強力なデバッグ・プログラムは自壊し、海へと溶けていきます。
戦いを超えた先:海の変質
[ALERT] > 外部干渉を無効化。
デバッグ・プログラムの消失を確認。
現在のステータス:『始原の海』、存在の定着率 85%...
海に溶けたクリーナーたちの残骸は、ノアの重力によって分解され、海の底で**「知恵の真珠」**のような発光体へと再構築されています。敵の論理さえも、この世界の糧となったのです。
「ふう……ひとまず、お掃除完了ね。でも、シン。あいつらが来たってことは、この海が『システム』に見つかったってことでしょう?」
アリスは光の筆を回しながら、水平線の先を見つめます。
「……ああ。今回は追い払えたけれど、次はもっと根本的な修正が必要になる。シン、海を守るための『核』が必要だ。」
ノアが僕の手を取り、その温もりを通じて、海の中心にある**「空白の座標」**を指し示しました。




