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『みずみずしいなにか』

波打つ病室

作者: 曙に鴉


 短編『みずみずしいなにか』の後日談です。 本編から先に読むことをお勧めします。


 本編はこちら→https://ncode.syosetu.com/n6538kr/


 もしくは、シリーズから飛んでください。






 私はとある病院にナースとして勤めている。


 その夜、私はモニター越しに患者さんたちの容態を確認していた。

 時刻は午前2時を回っていた。


 いつもはある眠気が、なぜかほとんど感じられなかった。


 ふと、異音が聞こえた。気がした。


 それはぽた、ぽたと水滴が落ちる音。その音はやけに耳にこびりついた。


 私は立ち上がり手洗い場を確認しに行ったが、異常は見当たらなかった。


 空耳だと切り捨ててもよかったのだが、なぜか不安感が残った。

 そのため病室の見回りをすることにした。


 やがて音の出所が分かってきた。



 四〇四号室。


 

 確か、脱水症状で入院してる子がいた部屋だ。


 名前は、高瀬美雨。


 入院直後は点滴を嫌がって暴れたりしたから看護師たちの間での評価は悪かったが、それ以来はほとんど何も喋らず、鏡ばかり見るようになっていった。


 話しかけても、返事すらしない。

 私たち看護師は、彼女のことをどこか不気味だと感じていた。


 そんな彼女の病室が異音の発生源となっている。嫌な予感がした。





〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜





 私は懐中電灯を持ち、患者さんを起こさないよう静かに歩き、四〇四号室に向かった。


 静かに歩くとはいえ、足音は響く。その反響はいつもより強く感じられた。


 部屋の前で立ち止まる。

 音は止んでいた。

 

 ドアを軽くノックする。



「高瀬さん、大丈夫ですか?」



 彼女の身に何かあったのではないか。

 そう思って問いかけたが、返事はない。



「開けますよ?」



 ゆっくりとドアを開けた。

 暗い。


 懐中電灯を点け、ベッドを照らした。


 ()()()()()()()



「……はっ?」



 思わず声が漏れる。


 ベッドは乱れており、叩き割られた鏡の欠片が散乱している。


 トイレを確認した。

 いない。


 クローゼットも見た。

 やはりいない。


 

 『四〇四号室、患者の姿が見当たりません』



 無線で同僚たちに伝えた。



『はぁ? ふざけないで頂戴。様子は?』


『ベッドのシーツがくしゃくしゃになっていて、ガラスが散乱しています』


『モニター、確認するわ』




 後で映像を確認すると、部屋から出入りした人物はいなかった。

 じっと鏡を見つめる高瀬美雨だけが映っていた。

 

 だが、その時微かに映像が揺れた。


 まるで波打つかのように。



「何これ……」


「……カメラの不具合でしょう」



 そして、それがおさまった時には、()()()()()()()()()()()()()()



 病院はすぐに警察に通報した。


 長い時間をかけて捜索したが、彼女が見つかることは最後までなかったそうだ。


 原因不明の失踪事件として世間を騒がせた。


 でも、私はなぜ彼女が失踪したのか、なぜ水を恐れていたのかを少しずつ理解できるようになってきた。




 なぜって?


 


 あの日から、水の向こうに「なにか」が見えるようになってしまったから。








 本編

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