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ぼくたちの思い出  作者: シドウ
3/6

3話 人の話をちゃんと聞かないで悪いと決めつけるのはよくない。

「やばい、ちょっとこっち来て」

 ぼくの手を急に掴んだエミーローズ。

 女の子の柔らかくてしなやかな手……人生で初めて女の子に触れたかも。

 いや、そんなことよりも!

 急にぼくの手を掴んで何してんの⁉

「ちょ、ちょっとー?」

 ちょっと、どうしたの、と思っているぼくの手を引っ張り、近くのベンチにエミーローズに連れられ、ぼくたちは座る。

「どうしたの、急に?」

「しーっ!」

 静かにしろ、とポーズをするエミーローズは、

「あれ見て、あれ」

 と顎でくいっと動かす。

 んー、なんだろうなー、と思って、顎が差す方向を見ると、辺りの見回しているさわやかイケメンがいた。

「おお、すんごいイケメン」

「わたし、あいつに追われているの」

「あのイケメンに追われてたの? よかったじゃん」

「よくないわよ」

「そうかなー? どんな女の子もあんなイケメンに追われれば嬉しいと思うけど?」

「うれしくないわよ」

「ふーん、そうなんだー。で、なんで追われてるの?」

「え、それは、遊んでいる途中でバックレたからよ」

「おまえ……」

 最低だな、こいつ……

「なによ?」

「全面的におまえが悪いじゃないか!」

「悪くないわよ」

「いや、悪いだろ」

「だって、あいつが悪いんことするんだよ!」

 人の話をちゃんと聞かないで悪いと決めつけるのはよくない。

 なので、ちゃんとこいつの意見を聞こうじゃないか。

「あのイケメンは何をおまえにしたっていうんだ?」

「毎回毎回うざいくらいに遊ぼうってしつこいくらいに誘うから遊んでやったの。そしたらね、これが、まーーーつまらないのよ」

「うん、それで?」

「だから、バックレたの」

「おまえが悪いじゃないか!」

「わたしを楽しませれないのが悪いんですー」

 なんて横暴な考え方なんだ。イケメン君が不憫だ。

「それだったら、バックレるんじゃなくて、一言帰るからって言えばいいじゃん」

「そう思うじゃん? でも、エミーローズが帰りたいって言ったけど、帰してくれないの。何かにつけて、違う店に行こうとかもっと話しようとか言うの」

「それは……面倒くさいな」

「でしょー? だから、わたしは悪くないの」

「いや、そうとは言い切れないけど……」

「なんでよ?」

「じゃー、Instagrenとかでわたしは帰ったとか言ったのか?」

「え……言ってないけど」

「この野郎!」

「な、なによー?」

「相手も心配してずっと探しているんだろ? 帰してくれないからバックレたのは気持ちは分かるけど、せめてInstagrenとかで連絡しろー」

「……それもそうね」

 と言って、エミーローズはポケットからスマホを取り出して、ものすごいスピードで画面をタップする。

 送信したわ、と彼女が言うと、イケメン君がポケットからスマホの画面を見て、肩をがっくしと落とし、とぼとぼとどこかに歩き去っていった。

「じゃー、エミーローズ」

「なに?」

「ぼくはこれで帰るよ」

「え、なんでよ?」

「え、いやだって、エミーローズともう十分に話したし、それに、エミーローズもイケメン君から解放されて自由な身なんでしょ? 自由な身だから友達と外で遊んだ方がいいんじゃない? なら、会話終了でしょ」

「えー、まだ何も話してないよー。会話が足りない。しかも、五分も経っていないわよ」

「いいよ、もう話さなくて」

「まだ話そうよ」

「お断り」

「えーーーー」

 ぶーっと頬膨らませて、不満の意を表すエミーローズ。

「はいはい、またどこかで会ったら喋ってあげるから、今日はこれで勘弁して」

「分かったわ」

 素直に聞き入れてくれた。

 よかった、よかった。ちゃんと素直に聞いてくれて。 

「分かったけど、わたしと会ったら絶対に話をしてね?」

「ああ、うん。それは約束する」

 じゃ、と言って帰ろうとした時、ぼくの名前を言うのを忘れてたのに気づいた。

「ああ、そうだ。エミーローズ」

「ん?」

「ぼくの名前はさとしっていうんだ。よろしく」

「ふーん、さとしっていうんだ。知らなかった」

「初めてだからね、知らないのは当然だからね。むしろ、知ってたら、おまえストーカーかってなるからね」

「……そうね」

「じゃ、ぼくは帰る」

「うん、またねー」

「またねー」

 お互い連絡先も聞かないし、変装はしているけど、エミーローズみたいなにじみ出る美人はぼくがよくいる場所で出会ったことない。

 だから、次に出会うとしてもだいぶ先かな、とこの時のぼくはそう思っていた。

 しかし、このエミーローズとは翌日に出会うことになる。あろうことか同じ学校の同じクラスで。

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