新しい目標
「おはよー! エブリバディ」
姫は朝からテンション高い。
「おはよー、姫。何それ? その荷物」
舞が聞く。
「これは……複製原画なのであります! 限定100枚のレア物」
そう……これは早川みさお様が高校生の時に出演した「オレのヒロインは2人」イベント限定の複製原画。カネに物を言わせ、オークションで定価の12倍で落とした逸品。今日はナマみさおさんなのだ! バッチリサインを貰う予定である。
足立さんからはすぐに連絡が来た。明後日の17時に赤坂の事務所でみさお様に会える! 予定は全てキャンセルした。
「舞、今日はよろしくね。舞がきてくれて嬉しい」
「姫だけでは心配でしょ。私は引率、変なことにならないように見張り役よ」
「ならないって! 握手とか出来れば泣いちゃうかも」
とにかく朝から気持ちが高ぶる。
「その前にやる事やっておいてね」
「まかせよ!」
今日はお昼から櫻会との会合、放課後に生徒会に寄ってフリマの進捗報告、これは報告書提出だけにしてもらった。
お昼は櫻会のレロレロ部長のところに。
「こんにちは、姫ちゃん」
「すみません遅れまして、先輩」
「私も時間あまりないから、報告だけでいいわよ」
では……姫は報告書を提出する。レロレロ部長は報告書に見入っている。読み終えると
「……ってことは、5年契約締結ってこと? そしてその権利が来年から櫻会に帰属ってことね。 でこの契約金は?」
「すみません、それは今回のカトレア祭でのクラスの経常利益にしてもらいます。それと、今年は無理ですが、来年はメディア使ってでも大々的に支援してくれるって鶴岡社長が!」
「企業にもメリットのある事ですけど、凄い条件ね。文句ないわ、あなたの思う通りにして!」
「ありがとうございます」
これで櫻会はクリア、あとは生徒会への報告だ。
6時限少し長引いた。こりゃ生徒会室に行くと間に合わない可能性がある。報告書は華に渡して貰うことにして学校を出る……どうにか間に合った。受付に着くと足立さんが出迎えをしている。
「本日はよろしくお願いします。こちら友人の遠藤舞さんです。足立さん、姫とか舞とか呼んでもらって構いませんよ!」
「お2人ともよろしく…………あのもしかしたら遠藤さんってU19の代表の?」
「はい、そうですが……」
「僕、サッカー大好きで新星はチェックしてるんだよ! テンション上がるなー。ボランチだよね?」
「足立さん、お詳しいのですね! 私は怪我で辞めちゃいましたけど、舞と一緒にプレーしてたんですよ!」
話は弾む。舞はぎこち無い、舞は初対面の男性に対してそういう面がある、まあ仕方がない。
△△△△△△△△△△△△△△△
「みさおさん、透のスカウトしてきた女子高生来ましたよ! 一人はとんでもなく可愛くて、もう一人はサッカーの日本代表らしいてす。透がそんな話、してました」
「そーなの、で私そろそろ参加するの?」
「はい、お願いしてもいいですか?」
透のお願いなので仕方なく引受けたことだが、その一言で興味を持った。どんな子なんだろ。席を立ち応接に向かう。
「こんにちは 早川みさおです」
2人の女子高生が立ち上がり挨拶する。この制服カトレアだ。
「どうもはじめまして。伊集院姫と申します。本日はお会いできて光栄です、私、早川さんの大ファンで……」
「応援してくれて本当にありがとうね」
「こちらは遠藤舞、私の親友で、今日は付き添いです、ほら舞、挨拶!」
「どうも、遠藤です……よろしくお願いします」
舞ちゃんはシャイなのかな。それにしても……姫ちゃん、こりゃ可愛い! いや、その域を超えてる。誰でも分かるカリスマ性がある。なんで透が連れてこれたのかな? ん? なんだあの大きな荷物……
「あ、すみません。実は……こちらにサインを貰いたくて……」
あれそれってヒロヒロの複製原画、懐かしい! 確か高校在学中だったなぁ。ガチ勢? 私のファンの? すごく嬉しい
「それ懐かしい! よく持ってるね。それあまり出回ってないはずよ? 確かヒロヒロ展の時の限定品」
「はい! オークションで落としました! これは、みさお様ファンが持つべき原画ですから!」
いやー可愛いし嬉しい! みさおは原画の隅にサインをする。
「そうだ、これお借りできない? ヒロヒロの15周年でみんなと会うからサイン貰ってきてあげるよ」
「えー! 感激! 是非お願いします!」
「そうだ、私、今日オフなので後でお食事でも行かない? 今度学園モノの出演があってね、今の現役高校生の話を聞いて参考にもしたいし(笑)」
「えー、いいんですか? 是非お願いします。」
この子はもう私の弟子ね。みさおもテンションがあがる。
△△△△△△△△△△△△△△△
姫は別室で説明を受ける。舞は明日が早いので足立さんが駅まで送るっている。ユアプロではアイドルユニット企画があるそうでそこでの参加を打診された。
「あのー、私、あまり人前に出たくないんです。声優さんとかならやれるかも知れませんが……」
「うーん、そうかぁ、声優志望かぁ。ウチさぁ、声優養成所を開設してて、そこに所属しないとならないんだけど……」
「声優養成所があるんですか? そこに入ればいいのですか? じゃあ入ります!」
「でも月謝とかあるし、ご両親と相談とかしないとね。お小遣いとかで払える金額でもないし」
「お金は大丈夫です! いくらですか?」
「入学金が50万円、レッスンと教材費が月に3万くらいだからね、今年からは声優養成はビジネス化ってことになって……」
「では10月に入会すると3月までで80万くらいですよね? それ即決! 申込書あります?」
「まだ15歳だとどっちにしてもご両親の承諾必要なのでもう一度書類書いて来てね」
もう姫はやる気である。
ここまで、順調!
新しい思い出作りステージへ!




