クロvsキルシュブリューテ②
「ヤマトォォ!!」
突如の出来事になす術なくヤマトのHPが半分以下まで減らされていた。恭弥は、【気配遮断】と【光学迷彩】のコンボでヤマト達に気付かれずに近づき、木の上から渾身の踵落としをヤマトにぶち込んだのだ。
「【アンカーバーク】!」
リーダーであるヤマトがやられたにも関わらず、カタクリはすぐに冷静さを取り戻してスキルを発動した。
(やっぱヤマトも1発では無理か…)
恭弥はそのままヤマトの背中に拳を振り下ろした。
《【アンカーバーク】を受けています》
恭弥の思いっきり振り下ろした拳がヤマトに当たる直前で、恭弥は背中から何かの攻撃を受け吹っ飛ばされた。恭弥を吹っ飛ばしたのはカタクリだ。
◇◇◇
スキル【アンカーバーク】気合の雄叫びをあげることによって、自身に注意を惹きつけさせる。 無視しようとした相手を無防備な所に攻撃をする。
◇◇◇
吹っ飛ばされた恭弥は、地面に背をつける前にすぐに立ち直して猿のように木の上へ登った。
(スキルか…もっと勉強しといた方が良かったかな)
恭弥が木の上から下を見下ろすと、ヤマトは立ち上がっており、ポーションで回復しようとしている。
(【アンカーバーク】受けてるから俺はヤマトさんに攻撃出来ないけど…)
「いきなりか…」
ヤマトはポーションでHPを完全に回復させた。そして、確認のためにもステータスを確認した。
「うーわ、出血になってる…ネロか、いつの間に…」
予想していたと言わんばかりに、落ち着いた様子でアイテムボックスから黒い小さな球体を取り出して飲み込んだ。
(は!?)
出血はポーションなども解決不可能なはずだが、ヤマトの〈状態〉出血が治っている。
「クロさん、その様子だとちゃんと情報見てないっぽいですね。理不尽過ぎるという理由で前のアップデートから、出血も止血丸というアイテムで治せるようになったんですよ。」
(まー、止血丸は貴重だから1人1個しか持ってないけどね)
嘘はついていないがヤマトは大切な情報を隠して言った。
「わざわざありがとうございます」
恭弥は皮肉っぽくそう言って、木の陰に身を隠した。
(まずはカタクリさん、か)
恭弥は木を利用してヤマト達の死角を移動し、カタクリの近くまで行き、木を蹴りカタクリに突進する勢いで突っ込んだ。
「【スリープ・バインド】!」
カタクリを狙ってくると分かっていたヤマトが恭弥に対してスキルを放った。だが、【状態異常無効】を持っている恭弥はそのままカタクリへと突っ込んでいく。
「毒と麻痺の耐性だけじゃないのか…」
突っ込んでくる恭弥に対してカタクリは大楯を構える。だが、恭弥の姿がカタクリの視界から一瞬にして消えた。そして、次に現れた場所はカタクリの真後ろだ。【交換】を使用して近くにいたネロと位置を入れ替えたのだ。後ろをとった恭弥は、左手に持った黒蛇の短刀で左の脇腹を右手で逆手持ちしている宝魔短刀で右肩をドスドスッと刺した。【魔闘法】を使用した為、カタクリの高いVITを無視した攻撃になったが、高いHPは完全には削りきれなかったようだ。
「【シールドバニッシュ】!」
カタクリは苦痛に顔を顰めながらも大楯を振り回して、恭弥を薙ぎ払おうとした。恭弥はすぐさま地面を蹴り、後ろに飛び退いた。
「【水刃】!」
恭弥は飛び退きながらカタクリに【水刃】を放った。
「【ウィンドカッター】!」
__バシュッ
放った【水刃】はナデシコが放った魔法でカタクリに当たる前に相殺された。しかし、予想していたのか、恭弥が【水刃】を放ってすぐに投げていた黒蛇の短刀は弾かれることなくカタクリへと飛んでいき、カタクリが反応する間もなく頭に直撃した。
「すみません」
カタクリはそう言い残して、赤いエフェクトに変わった。
「【トリックフィールド】!」
カタクリが倒されても焦る様子を見せることなく、ヤマトはスキルを唱えた。それと同時にホヤが恭弥に接近してきた。
(なんだ…体が…)
ヤマトのスキルのせいか、構えようとした恭弥は体に違和感を覚えた。
「【ダブルスラッシュ】!」
そして、恭弥はうまく体が動かせずにホヤの攻撃を正面からまともに受けてしまい、HPもVITも低い恭弥はHPが半分を下回っていた。




