第2階層の修練場クエスト①
第2階層を探索していた恭弥は、修練場と書かれた建物を見つけた。
「ここ、どう見てもあそこだよな…」
埃や泥で汚れてはいるが、間違いなく第1階層でお世話になっていた修練場と同じ建物のようだ。
(教官いるかな…)
恭弥は、 第2階層でやっと興味の湧いたその修練場に入ることにした。
《クエストを受諾しますか?YES/NO》
◇◆◇
【クエスト】
1日10時間を2週間、掃除をする。
報酬
全てのステータスに10ポイントずつ割り振られる。
◇◆◇
恭弥が修練場に入ってすぐに、第1階層の時と似たようなクエストが発生した。
(うっわ…)
第1階層の時はカカシに攻撃し続けるという恭弥に合ったクエストだったが、今回は掃除である。1日10時間を2週間、掃除をし続けるなど、どんなプロや主婦でも苦行である。前回は迷うことなく受諾した恭弥だが、今回は少し迷っていた。
(………)
どうしようかと考えながら、恭弥はチラッと修練場の奥を見た。すると、修練場にただ一つしかないベンチに教官に似たNPCが座っていた。
(きょ、教官…!)
第1階層でお世話になった教官と似た顔のNPCを見つけた恭弥は、一目惚れをした人の様な顔をしていた。そこからは早かった。頭の中でYESと唱え、クエストを受諾した。
「こんにちわ〜」
恭弥は、智美が見たらキッモと言われると予想されるぐらいの笑顔で、無愛想な顔で座っているNPCに近づいていった。
「………」
NPCはチラッと恭弥を見たが、何も喋らない。
「第1階層の教官ですか??」
無視されたことを気にしない様子で、恭弥は聞いた。
「…弟を知ってんのか。」
NPCはやっと重たい口を開いた。
「えっ!?てことは、教官のお兄さんですか?」
「…ああ。」
「じゃあ、大教官ですね!」
「どうとでも呼べ。どうせお前も、すぐに途中で投げ出すだろうしな。」
どこか遠くを見る様な目をする大教官を見て、何故か恭弥はやる気に火がついた。
「見といてください!」
恭弥は再生した右手でグッドポーズを決めて、歯をキラーンとさせながら、大教官に媚を売った。
その日は、10時間もプレイできなそうだったので、ログアウトして次の日からクエストを始めた。
__クエスト初日
「じゃあ、これを使いな。」
恭弥は、大教官に掃除道具一式を渡され、修練場の外に追い出された。
「えっ…」
てっきり修練場を掃除すると思っていた恭弥は、ポカーンと口を開けて呆然と立ち尽くしていた。
(あー、もうやめたい…)
道路や建物の壁を大教官に渡された用具で掃除をし始めて3時間、恭弥はもう飽きていた。2週間で街全体を掃除しきれる見通しがなく、通りすがるプレイヤーは馬鹿にした様な目で見てきて結構な羞恥プレイである。恭弥のやる気に付いた火はもう、赤ちゃんの寝息だけでも消えそうなほどになっていた。
__ポワッ
そんな時、恭弥の脳裏に悲しそうな表情をする大教官の顔がよぎった。
(はっ…!何をやってるんだ、俺は…教官の為にも大教官の為にも俺はやり遂げるんだ!)
そんなくだらない一人芝居で自己完結した恭弥は、再び掃除へのやる気を取り戻した。そうして、クエスト初日、10時間の掃除をやり遂げた。
■進行度0%…




