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最強の傭兵〜VRMMOでも世界最強?〜  作者: ハロウィン
第1階層
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第2階層へ②

 アップデートが完了し、第2階層が解放された。恭弥と智美は、第2階層へ行くために通る必要があるダンジョンボスとの戦闘を目前にしていた。

 ボス部屋の扉を開けた先には、恭弥が8つのダンジョンで経験してきたものとは違う空気が流れていた。比喩的なことだけではなく、その空間には黒い瘴気が漂っていた。


「本当に大丈夫?」

 扉を開ける前と違い、焦った表情をしている恭弥に智美は再度確認した。

「…分からん。」

 余裕そうな態度は完全になくなっており、智美の方を見ずに答えた。


 黒い瘴気が薄くなり、奥が見えるようになった。そこにいたのは、大きな骸骨人スケルトンである。ダンジョン[不死者の巣窟]である事は間違いない。ただ、恭弥がレベリングの為に周回した時とは、色も形も全く違う様であった。全身の骨は真っ黒で、お腹辺りに真っ赤な球体の様なものがある。武器はあまり変わっていない様で、大きな盾と剣を一つずつ持っている。


「智美…第1階層のダンジョンボスしか出ないはずだよな?」

「そうだったと思う…あと、クロミね。」

「だよな…クロミ。」


 少し動揺している恭弥を気にかけてくれるわけはなく、黒い骸骨人スケルトンが右手に持った剣を薙ぎ付けてきた。


「くっ…」

 恭弥は少し吹っ飛ばされていた。前に[不死者の巣窟]に挑んだ時は結構余裕を持てていたし、その時よりはレベルが上がっているはずなのに、だ。理由は、2つある。1つは、黒い骸骨人スケルトンが普通の骸骨人スケルトンよりも上位個体である事。もう1つは、黒い瘴気によるステータスダウンである。これらの理由で、動揺で戦闘モードに入っていなかった恭弥は、避け切ることができなかった。それでも、咄嗟にアイテムボックスから黒蛇の短刀を取り出し、うまく力を受け流した事であまりダメージを受けずに済んでいた。


「ちょっとやばいから、もっと後ろに下がってろ!!」

 やっと、戦闘モードに入った恭弥は智美に向かって叫んだ。リアルでもゲームでも、戦う時に恭弥が見せる真剣な顔を初めて見た智美は、素直に隅の方へ走っていった。


 恭弥が体勢を整えた時には、骸骨人スケルトンはもう攻撃の体制に入っていた。恭弥が感じているよりも、ステータスが落ちている様である。骸骨人スケルトンは、恭弥に向かって剣を振り下ろしてきた。


(今だっ!)

 薙ぎ払いと比べて、剣を振り下ろした時の攻撃範囲は狭い。また、巨大な骸骨人スケルトンだと振り下ろした時の腕の下は通常の人にとっては大きな隙間となる。そこを使い、恭弥は一気に骸骨人スケルトンに近づいた。

 地面を蹴り、急所と思われるお腹あたりにある赤い球体に向かって、体当たりする勢いで跳んだ。それに対して、骸骨人スケルトンは左手に持っていた盾をその直線上に構えた。


 空中で勢いがついていた恭弥は、その盾を避けることもできずに正面から真面にぶつかった、様に見えた。恭弥は、盾に足と手をつき、振り払われる前に自ら跳ねて後ろに戻った。そして、遅れながら骸骨人スケルトンが、盾を何か弾き返す様に振り払った。振り払った勢いでスケルトンが、両手を広げた様な状態になったことを、恭弥は見逃さなかった。

 右手に持っていた短刀を逆手持ちに変えて、スキル【投擲】を利用して、赤い球体に向けて力一杯投げつけた。


「グガアァァアァアアァ!!」

 恭弥の狙い通り赤い球体のど真ん中に短刀が刺さり、骸骨人スケルトンは苦痛を訴える様な鳴き声を上げた。

 スケルトンは、肉の付いていない骨だけの膝を地面に付いた。恭弥は、ここぞとばかりに【水刃】で一定の距離を保ちながら、短刀が刺さっている部分に追い打ちをかけた。赤い球体が急所という恭弥の予想は当たっていた様で、スキル【急所突き】の補正効果が入り、グングンと骸骨人スケルトンのHPバーが減り、半分を切った。


 骸骨人スケルトンは立ち上がり、周りに纏わりつく蠅を薙ぎ払う様に盾と剣を無造作に振り回した。念のために、距離を取って攻撃していたことが功を奏して、恭弥はその攻撃に巻き込まれる事はなかったが、【水刃】での追い打ちは途切れてしまった。


 骸骨人スケルトンは、振り回すのをやめると項垂れた様子になった。チャンス、と誰しもが思う様な姿だったが、恭弥は第6感で何かを感じて、攻撃を仕掛けずに骸骨人スケルトンの動きを待った。

 すると、空間全体に散らばっていた黒い瘴気が骸骨人スケルトンの体、特に剣と盾に集まってきた。黒い瘴気が、全て骸骨人スケルトンに纏わりつくと、骸骨人スケルトンは頭を上げた。

「グガアアァァァァァ!!!!」

 苦痛を訴える様な声ではなく、こっからだ、と言わんばかりの雄叫びの様な声を上げた。

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