初めての戦い
元傭兵である伊黒恭弥は、VRMMO「アムシュターク」にログインし、初期設定を完了した。そして、いよいよゲームを始めようとしていた。
光に体が包まれて、次に目を開けた時には、そこは活気あふれる城下町の広場だった。
《ようこそ“アムシュターク”へ》
という声が頭に響くと同時に、目の前に青いパネルのようなものが浮かび上がった。
プレイヤー名:クロ
Lv 1
HP 40/40
MP 30/30
【STR 0〈+10〉】
【VIT 0】
【AGI 0〈+20〉】
【DEX 10】
【INT 15】
装備
頭 【空欄】
体 【空欄】
右手 【初心者の杖】
左手 【空欄】
足 【空欄】
靴 【空欄】
装飾品 【空欄】
【空欄】
【空欄】
スキル ファイヤーボール
正直、ステータスを見ても高いのかよく分からなかったので、実際に戦って確かめようという考えに至った。
とりあえず、恭弥は杖を腰にさして街の外に向かって歩き出した。
南門から街の外に出るとそこには草原が広がっており、少し遠くに森が見える。
(森なら何かと戦えるかな…)
恭弥はそのまま歩いて、いかにも何か出そうな森にやって来た。
「何が出るかな〜」
楽しそうにして、森の中に入っていった。
少し歩くと、草むらからガサッと音がして、尖った角を持った白兎が飛び出して来た。
「おっ、可愛いウサギだ」
その白兎をモンスターと気付いていない恭弥は楽しそうにしていた。
そんな恭弥目掛けて白兎は体当たりをしたきた。
しかし、元傭兵である恭弥の反射神経とAGIの数値的に余裕でかわせるスピードだった。
余裕そうにヒョイっとかわした恭弥は
「こいつが敵なのか??」
と今更気付いたようで、戦闘態勢をとった。
白兎が体当たりをして来たところをかわして拳でカウンターを入れる。これを3回繰り返した辺りで、白兎の上に表示されていたHPバーらしきものがゼロになり、白兎は赤い光の粒子になって消えていった。
「やっぱり、いつも通りには動けないか…」
と改めてゲームであることを実感すると同時に暇潰しに買ったこのゲームにハマりそうな予感がした。
その後も森を歩いたが、白兎ばっか出て来て、それら全部を拳で倒していった。白兎はたまに、アイテム「白兎の毛皮」をドロップした。
そして、ある白兎を倒した時に
《スキル【器用貧乏】を取得しました。》
という音声が頭の中に響いた。
恭弥は早速、スキルを確認してみた。
◇◇◇
スキル【器用貧乏】
このスキルの所有者は、初期装備に関係なく、どんな武器も装備できる。装備した武器の効力を10%下げる。
取得条件
武器を使わずに100匹以上の敵を倒すこと。
◇◇◇
「あっ、俺って魔法使えるんじゃん…まぁ、基本的に戦闘は素手でやるつもりだけど、これじゃあ、初期装備で杖を選んだ意味なくね?」
と不満を漏らしたが、元はと言えば魔法を使えることを忘れていた恭弥のせいである。
100匹も白兎を倒したことでLv 4にアップしていた。
「おー、ステータスに割り振れるポイントが15も増えてる。」
少し悩んだ末に、STRとAGIを割り振った。
太陽が沈みかけ、森の中はほとんど真っ暗になって来たので、街に戻ってログアウトすることにした。