初期設定
傭兵を辞めた伊黒恭弥は、何かやることを探して、最近発売されたVRMMO「アムシュターク」を知る。趣味としてやるのも悪くないと実際に買って、すぐにダイブした。
白い光に包まれ、周りが見えるようになった時には、完全な電脳世界に入っていた。
説明書を読まずにゲームを始めてしまった恭弥だったが、初期設定をやることは理解できた。
「まずは…名前か。そうだな、本名はヤバそうだけど、こういうのを考えるのは苦手なんだよな〜」
恭弥はしばらく悩んだ末に、苗字の伊黒と異名からとって“クロ”と入力し、決定を押した。
次は、キャラクター設定のようである。
「性別は、男性っと。顔はランダムか…まぁ、そういうのはどうでもいいか。身長とか体型は選べるのか…VRがどういう感覚は知らねーけど、やっぱり現実世界と同じの方が動きやすよなー」
自分好みの体を選択して、決定を押すと次の設定画面が映し出された。
次は初期装備を決める必要があるようである。
「大剣に…片手剣…大楯…杖…
うーん…傭兵の時は一応、ナイフと銃を持ってたけど、大抵は素手で戦ったたしな〜武器とかはどうでもいいんだよな…」
そうやって、それぞれの武器の詳細画面を見ていた恭弥は、杖の画面に目を留めた。
「魔法が使える?魔法ってなんか炎とか出すアレだよな…うーん、せっかく仮想空間なんだし、現実世界じゃできないことやった方が楽しいよな!」
普通の人は剣を使う機会なんて現実ではないだろうが、傭兵であった恭弥にとっては普通のことであり、魔法が一番現実離れしていて興味が湧いたのである。
結局、杖で初期魔法属性は火を選択して決定を押した。
「次はステータスポイントか…」
「防御力と体力も攻撃受けなきゃいい話だし、素早さ重点に攻撃力も少しって感じかなぁ」
自分で杖を選択した恭弥は、自分が魔法使いであることを忘れたかのようにステータスポイントを割り振った。
「おっ、これで設定終わりみたいだな。よし!」
決定を押すと
「アムシュタークを始めます。楽しんでプレイをしてください。」
Siriのような声が頭に響き、恭弥の体は光に包まれた。