堕天地②
恭弥は、頭が8つ尾も8つで白い胴体と真っ赤な目が特徴的な大きい蛇“オロチ”と、ダークブラウンの毛並で左目の傷と背中と翼が特徴的な大きい狼“マルコ”に突っ込んでいった。
「ドケ…ニ、ンゲン…」
恭弥はマルコの言葉を無視して、マルコの左側に回り込む。
「ド、コニ…」
マルコの左目の傷は大きく、完全に目を閉ざしている。今のマルコは左にいる恭弥を視界に捉えられていない。
「【バウンド】」
恭弥はボードを生成し、そのボードを踏み込んで、勢いよくマルコに向かってロケットのように突っ込んでいく。
「【武硬】【魔闘法】」
(本来なら【武硬】でスピードが下がるけど、空中で勢いに乗っている時に使ってすぐ解除すれば、そのデメリットが適応されずにSTRをあげることができる。更に【魔闘法】で相手のVITを無視。そして、今日はエッケ島の洞窟でモンスターを倒しまくって、【A連鎖】で上げられるSTRはもうカンストしてる。つまり、これが俺の最高火力だ!)
◇◇◇
【バウンド】硬質化した物体を弾くボードを生成する
【武硬】体を硬化できる。その間、STRとVITに補正が入るが、AGIが低下する。
【魔闘法】物理攻撃に魔力を纏うことができ、その攻撃にVITを無視できる貫通属性が加わる。MP1消費で1回攻撃可能。
【A連鎖】攻撃を避ける度にSTRが上昇する。攻撃が1度当たるとSTRがリセットされる。
◇◇◇
「いっ…けェェェェェェーーーーー!!!」
智美が叫ぶ。恭弥の突き出した右足がマルコの左腹に直撃した。メキメキと鈍い音がして、マルコは右目を白目にしている。
「グ、ガ…ッ」
マルコはうめくような声をあげ、吹っ飛ばされた。
「マッ…」
マルコが吹っ飛ばされた方向には、並んで立っていたオロチがいた。強大なマルコが吹っ飛ばされると思いもよらなかった様子で、勢いよく吹っ飛んでくるマルコに巻き込まれる。オロチにぶつかってもマルコの勢いは止まらない。そのまま、マルコはオロチと共に吹っ飛んでいく。
__ドガガァァァンンッッ…
そして、マルコとオロチは恭弥たちを囲んで聳え立っている山に直撃する。
__ガラッ…
マルコとオロチがぶつかった衝撃で山が崩れ始めた。そして、マルコとオロチは恭弥に吹っ飛ばされただけでなく、岩の下敷きになった。衝撃が衝撃を呼び、少しの間、山崩れが続いた。崩れ落ちてくる岩に、マルコとオロチは覆い尽くされた。
「これがクロ…」
「そうぞういじょうだね…リヴおにいちゃん」
「つよいのはわかってたけど、これほどとは…」
今のリヴとティアの顔は、戦闘が始まる前の心配そうな顔と打って変わって、驚きと期待に満ちた顔である。
「手を貸してなんて言っときながら、自分一人でやっちゃうんだから…」
「敵いませんね、クロさんには…」
智美とユキとルイは呆れたように、一人猛スピードで突っ込んでいった恭弥を見つめている。
「ティア…あいつら…」
「うん…むかしのあいつらならこんなにやられてなかったはず…かみのざからついほうされてから、ちのうだけじゃなくてちからも うしないつつあるのかも…」
「これなら…クロたちでも…」
__ガラッ…
マルコとオロチの上に積もっている岩が一つ崩れ落ちた。