森のおにぎり屋さん~指定ワードを全部載っけてみたら、こんなんなった②~
【指定ワード】
ブラック企業 / 必殺技 / 忍者 / おにぎり / ドラゴン / 文学少女 / 名探偵 / ボロアパート / 大魔王 / 聖女 / サラリーマン / 幕末 / ブラウン管 / 伝説 / 農民 / おねぇ / 入道雲 / 暇つぶし / 偽物 / 牛乳 / コントロール / 森の /
森のおにぎり屋さん──そこには様々な人々が訪れる。
ボロアパートに住む文学少女や、ブラック企業にお勤めのサラリーマン、推理のできない自称名探偵、幕末の混乱から農民になった武士、忍者だったがきらびやかな服装に憧れ抜け忍となったおねぇ、偽物だと追放された聖女まで。
疲弊しきった人々は、そのおにぎりを食べるとたちどころに快復した。
文学少女は書籍化作家に、サラリーマンは社長に、自称名探偵は難事件を解決、農民は武士だった頃の必殺技に準えた『半月殺法』なる品種の米で大儲け、抜け忍おねぇは二丁目の名物おねぇとなり、聖女は追放した国にざまぁをした後隣国のイケメン王太子に溺愛された。
森のおにぎり屋さん……その正体は地獄の底から現れし大魔王である。
なんと人間をコントロールしようと作られたおにぎりなのだ!
黒い入道雲が森一面を覆うと開店の合図。
──バッサァ!!
大きな羽音と共に、森のおにぎり屋さんは開店する。そこに店舗はなく、古いブラウン管テレビだけがポツンと置かれている。それが目印。
そこに並ぶと、袋に大量に入ったおにぎりを携えた大魔王がドラゴンの背に跨って現れるのだ!
「はぁっはっはっはァッ!! 愚鈍な人間共よ……これでも喰らうが良い!!」
そうは言いつつも、おにぎりを叩きつけるなんて真似はしない……大魔王は紳士なのだ!
「うぉぉ! 力が漲るぜ!!」
次々に人々が快復する中、粛正は行われる──叫び声と共に、一人の男が大魔王の雷撃によって倒れた。
「列を乱す輩は許さぬ……!」
倒されたのは、気の弱そうな老人の前に横入りしようとしたチンピラ……大魔王はマナーに厳しいのだ!
「お釣りは要りません!」
「ぬっ?! そうはいかぬ!!」
万券を差し出した婦人に、しっかりと釣りを返す。受け取らなければ募金箱へ……大魔王は、己が利益の為に働くような、小さな男ではないのだ!単なる暇つぶしだ!
ちなみにおにぎりは、1個100円だ!
あっという間におにぎりはなくなった。
「くそう……買えなかった……」
100円を握りしめる少年に、大魔王は侮蔑を込めた視線で嘲笑う。
「卑しき童よ、貴様にはこれで充分だ!」
足下に投げつけられた一枚の紙。それは──
『次回優先権①(※今月末まで有効)』
少年はそれを握りしめ歓喜に咽び泣いた。
──やがて森のおにぎり屋さんは伝説となった。
風呂上がりに牛乳を飲んでいると、妻に注意された。
「子供の寝かしつけに変な話するのやめなさい」
『必殺技』が入ってなかったんで直しました。